■ 論文ID: 14 ■ タイトル: HirakuReader : 行間を拡張する電子書籍 ■ 著者: 中村将達(神戸大),西田健志(神戸大) ------------------------------------------------------------------ レビューサマリ ------------------------------------------------------------------ 電子書籍の行間ズームによって様々な機能を実現する試みは面白いですし現実的に有用そうです。査読コメントを参照して修正いただけるとありがたいです。 ------------------------------------------------------------------ reviewer 1 ------------------------------------------------------------------ ■ 総合点: 4 ■ 確信度: 3 ■ 査読コメント: タブレット等のタッチ操作可能なデバイス上での電子書籍を読むためのインタフェースの提案です。行間を開いてコメントをする・共有する、情報を調べるなど、斬新な機能が多く、採録がふさわしいと判断します。 一方で、気になる点もいくつかあります。以下はコメントですので、採録された場合や、今後の参考にしてください。 − 現状の実装はそれなりに大きなタブレット(iPad)を使用し、その画面サイズ、解像度に依存した実装になっていると思います。これでは1) 画面サイズ、解像度が違うデバイスを利用する場合に、行間の位置が変わってしまう。特に、小型のデバイス(iPhone等)と同時に利用し、情報を共有するためには工夫が必要そうです。 2) 文字サイズを変更すると、行の長さが変わってしまうため、1)と同様の問題が発生すると考えられます。 また、現状のインタフェースでは行間に注目しているため、例えばある一言に注目し、コメントをする等の需要には応えられていないと思います。 行間を開く・広げるというアイデアはとても面白いと思いますが、それを十分に生かすための技術的課題は多くありそうだと思いました。今後はこのあたりの疑問に答えられるようにしてもらえればと思います。 − 現状のインタフェースでは指を広げた中心をポインタとして扱っていますが、これは少し紛らわしいと思います。特に、3.2の行間を広げて関連情報を検索する機能とポインティングの切り分けがタブレット端末だと良いですが、小型のものであれば少し難しそうです。また、3.3の機能との切り分けの問題もでてきます。このあたりももう一工夫必要そうです。 − 4.3 「実験・評価」 1段落しかない申し訳程度の節は不要です。 − 全体的なコメント 総じて改行が多く、段落が沢山ある印象があります。例えば、3.4は1文しかない段落が5つあります。それぞれ関連する文章だと思いますので、Itemizeするなり「1) なんとか、2) なんとか」等を工夫して段落をまとめてください。これは論文全般に適用してください。 ------------------------------------------------------------------ reviewer 2 ------------------------------------------------------------------ ■ 総合点: 3 ■ 確信度: 2 ■ 査読コメント: [評点の根拠] 行間を利用するというアイデアは面白く,可能性があると感じました.しかし提案している各種機能を見る限り,行間を利用することの必要性や効用があまり見えず,むしろ問題点の方が目立ちます. 例えばアノテーション共有の場合,電子書籍では1行あたりの文字数がユーザによって異なる可能性があるので,行単位でアノテーションをするとアノテーション対象が異なる問題が起きると思われます.図6は1行=1センテンスの例をピックアップしていますが,多くの文章はこれとは異なります.他にも検索の場合,フォーカスの当たっている行以外が遠く離れてしまうため,前後の文脈を意識しながら検索結果を見ることが困難です. 以上の理由から,行間の利用や二本指フォーカスなど興味深いアイデアが実装されたシステムではありますが,総合点は3としました. [論文改善のためのコメント、疑問] ・二本指で挟んだ中間点で範囲指定することで,指定範囲が指で隠れないという特徴は面白いと思いました.しかし容易に範囲指定できるのかは疑問が残ります. ・査読者が電子書籍をスマートフォンやタブレットで読む際には,画面サイズを最大限利用するために余白スペースが極力ないように設定します.そのため,余白スペースがないと行間を指定できないという提案システムの制約は致命的に思えますが,この仕様は妥当なのでしょうか. ・文への下線(マーキング)を共有するシステムに関する研究としては「松岡ら: マーキングを用いたソーシャルタギングの有効性に関する検証, 情報処理学会論文誌 48(12), 3882−3892, 2007」があります.参考されると良いと思います. ・ユーザフィードバックの中で好意的な意見としてまとめられている「書き込み共有の楽しさ」や「検索の便利さ」は提案システムが初めて実現したものではありません.これらが行間の利用によって実現されたことの価値や良し悪しが読み取れるようなコメントはなかったのでしょうか.そのあたりを掘り下げて言及すると,より価値の高い論文になると思われます. ------------------------------------------------------------------ reviewer 3 ------------------------------------------------------------------ ■ 総合点: 4 ■ 確信度: 3 ■ 査読コメント: 普通の電子書籍テキストをズームすると追加情報が出たり情報交換が可能になったりするというのものは大変便利そうです。電子書籍上で情報交換することはKindleでも可能ですし、ズーミング操作がどれほど有効なのかが全く不明なのが残念ですが、実際に運用した実績について報告いただけると良いと思います。