■ 論文ID: 17 ■ タイトル: 鍵盤上への演奏補助情報投影機能をもつピアノ学習支援システムにおける熟達化プロセスに関する調査 ■ 著者: 竹川佳成(はこだて未来大),椿本弥生(はこだて未来大),田柳恵美子(はこだて未来大),平田圭二(はこだて未来大) ------------------------------------------------------------------ レビューサマリ ------------------------------------------------------------------ 本質的な誤りは指摘されていませんので,特に追加修正事項はありません. ------------------------------------------------------------------ reviewer 1 ------------------------------------------------------------------ ■ 総合点: 3 ■ 確信度: 2 ■ 査読コメント: ■ 論文の概要 本論文では,ピアノ学習支援システムを用いた場合の熟達化プロセスを調査している.8人の被験者にピアノの練習を5日間してもらい,そこでの打鍵や視線の変化を記録・分析している.分析結果から,被験者の学習方略のパターンがあること,学習方略のパターンによってピアノ演奏技術そのものの熟達度が変わること,学習者が必要とする情報が変化していることがわかった. ■ 評点の根拠 熟達化プロセスに関する基礎的な知見を提供する,価値のある論文と思います.しかし「ピアノ学習支援システムを用いた場合の熟達化プロセス」と題するには,学習支援システムの諸機能と熟達化プロセスとの関係についてまだ調査・分析が足りないと感じたため,このような評価としました. ■ 論文改善のためのコメント、疑問 ・実質的に分析対象として扱っていない被験者GとH(本来持っているピアノ演奏技術が他の被験者より高かった2名)は,被験者としてカウントしない方が良いのではないでしょうか.カウントするには,結果の数値を書いたうえで考察より除外する,と,説明した方が良いと思います. ・4.3節の考察で,被験者Bの5日目は「調子が悪かった」と,単なる個人的・偶発的な現象として説明されていますが,これは被験者本人の弁なのでしょうか.スコアが上がっているにもかかわず振る舞いが(ある意味)退化しているのは,熟達化プロセスにとって興味深い現象のように思われます. ・p.6の「周ごとの結果から必要な提示情報は~」の「周ごとの結果」とは何を指すのでしょうか. ------------------------------------------------------------------ reviewer 2 ------------------------------------------------------------------ ■ 総合点: 3 ■ 確信度: 1 ■ 査読コメント: 提案者らが試作したシステムを利用し視線計測で両手との関係から比較的長期間の評価実験を行っている評価論文。 提案システムの話の学習効果がわかりやすく示されたように思います。 できればピアノ学習に留まらず楽器習熟の評価方法の汎用的な議論ができれば、他の研究にも知見を提供できるのではないかと感じました。 ------------------------------------------------------------------ reviewer 3 ------------------------------------------------------------------ ■ 総合点: 4 ■ 確信度: 3 ■ 査読コメント: 鍵盤初学者に向けた,特に著者らのシステムを利用した際のユーザの熟達度に関する調査であり,各実験項目や手順に関し,詳細に説明され,論文の記述の質や正確性に関して一定の基準をみたしていると考えます.これまで楽器経験者が直感的には感じていた事項を,学習方略の違いや視線計測によるユーザ観察等によって明らかにし,関係者にとって非常に有益なデータや知見を含んでいます.インタラクティブシステムとして,際立ったユニークさ(キャッチーな部分)というものはあまり感じられませんが,採録に関しては十分基準を満たしていると判断します. 一方で,技術的に不明な部分やコメントがいくつがありますので,下記に記載します. 1.図5の視線計測結果ですが,左手右手などのユーザが注視した部分をどのような手続きで判定したのでしょうか?おそらく,図6における短形領域と計測座標から算出したものかと思いますが,論文中では不明でした. 2.視線計測に関する考察が今後の研究において,非常に有益な知見を多く含むと感じています. 加藤らによる,簡便な運転シミュレータを用いた運転熟練者と非熟練者の行動差異に関する研究等,自動車運転では,熟練者と初心者ドライバーの視線運動に違いがあることは古くより知られています.視線計測手法や視線データに関してもいくつかの種類が存在するので,それらを踏まえた検討が今後研究の中で利用されると,さらなる発展が見込めると思います. 3.著者らも十分承知とは思いますが,ピアノ学習において,このような学習効率の他,モチベーションも大きな影響を与えてきます.両者は独立事象ではなく,ある程度の相関があると思います.本研究によって明らかになったいくつかのユーザ情報を利用することで,別のエンタテインメントコンピューティングなどの別のアプローチ手法を展開するこも可能と思います.例えば,熟練者の演奏データだけでなく,視線計測データも利用することで,初学者の熟練度を視線データから判定するなど.