■ 論文ID: 44 ■ タイトル: LumoSpheres: 複数浮遊物体の実時間追跡にもとづく映像投影 ■ 著者: 山口裕明(電通大),小池英樹(電通大) ------------------------------------------------------------------ レビューサマリ ------------------------------------------------------------------ カルマンフィルタを用いた追跡により、玉3個のジャグリング投影が実時間で動作しており、システムの完成度も高いと考えられます。 一方で、「玉12個」への投影は一瞬で終了してしまい、無数の玉を連続かつ選択的に発射&回収する機構の提案と検証が行われておらず、「ボリュームディスプレイ」を標榜するには無理があります。WISSでは「未来ビジョン」として評価し採択としましたが、将来論文化する際には、「水滴ディスプレイ」程度の連続射出&回収システムの実装が望まれます。 デモを強く推奨します(暗い場所が必要?) ------------------------------------------------------------------ reviewer 1 ------------------------------------------------------------------ ■ 総合点: 4 ■ 確信度: 2 ■ 査読コメント: 空中に受かべた玉に映像を投影するシステムを構築した論文と読みました。玉の物理法則に沿った運動に応じて表示する場所を予測して投影することにより適切な画像投影を可能としており、技術的に有用性が高いと感じます。最終的には空中に無数に玉を受かべて投影して空中立体画像を実現する構想を提示しており、将来性が高い論文であると判断しました。 ------------------------------------------------------------------ reviewer 2 ------------------------------------------------------------------ ■ 総合点: 4 ■ 確信度: 1 ■ 査読コメント:  立体ディスプレイを実現する際に空中を浮遊する小粒子に着目し,その粒子 の動体追跡と映像投影という難しい問題に果敢にチャレンジしている点は評価 に値します.本論文はその一歩として,比較的汎用の機器を用いてソフトウェ ア処理(カルマンフィルタ等)を用いたプロトタイプシステム実装と共に実現 可能性を議論しています.WISSの主眼であるインタラクティブ・システム実現 とまではいかないものの,そのポテンシャルは十分に高いと考えます.  残念なのは応用例の議論であり,動体追跡の方に捕らわれてしまったのかジャ グリングが例になっている点です。論文中では立体ディスプレイの実現を目指 しているとのことですので,もし採択されたのなら,ディスプレイ側面の強い 応用の議論をして頂ければと思います. ------------------------------------------------------------------ reviewer 3 ------------------------------------------------------------------ ■ 総合点: 3 ■ 確信度: 2 ■ 査読コメント: 空中に浮かんだ複数の球状物体に対して投影を行うディスプレイには以下のものがあります: BubbleCosmos (Siggraph2006 ETech) http://in5.jp/bc/index.html 上記の例(煙を充填したシャボン玉を使用)と本論文の違いは、投げ上げた球を用いていることと、動きが速い物体(基本的に放物運動)に追従する為に行ったカルマンフィルタによる軌道予測にあると考えられます。 その他の既存研究と比較しても、一定の新規性はあると思われますが、いくつか不明確な点があります。 レイテンシ: 実システムのレイテンシが記載されていません(4.3章に「システム全体の遅延時間を 56ms と設定」との記載がありますが、これは実測値ですか? また遅延時間は一定とみなして良いのでしょうか?(プロジェクタのリフレッシュレートが 60Hz なので、常に3フレームの遅れ?) 軌道予測: 放物線であれば予測は簡単なので追従できると思いますが、衝突などで急に軌道が変わった時には対応できません(ビデオのジャグリングでも手に戻った瞬間は投影が行き過ぎている)。急激な軌道変化への対応方法があれば述べてください。 汎用性: ジャグリング(ボール3個程度)であれば追跡&投影は可能だと思われますが、この構成のまま汎用的な「ボリュームディプレイ」に持っていくには無理があると思われます。ビデオの最後に12個の球に対して投影している例がありますが、一瞬かつ単発動作なので正しく投影されているかすらわからず、これをもって「空中立体ディスプレイ」と称するには無理があります。少なくとも、発泡ビーズ[4]や水滴[5]のように、連続投影ができる必要があるでしょう。その為には、連続的な球の発射&回収装置(非投影部分は球を「抜く」必要があるのでレイヤ全体の一括発射では無く個別制御が必要)が不可欠です。「空中立体ディスプレイ」として想定される構成について述べてください。 他の参考文献: 空中の固定球(アドバルーン)へのプロジェクション: http://www.y2sankei.com/pb.htm 空中に磁力で球を浮かべて投影(球の位置制御が可能): Jinha Lee, Rehmi Post, Hiroshi Ishii, ”ZeroN: Mid−Air Tangible Interaction Enabled by Computer Controlled Magnetic Levitation”, UIST11 その他: デモを推奨します。