競創による動機づけ:自分撮りによるトランポリン運動の促進システムの事例

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review comment 1
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■ 総合点
4
■ 確信度
3
■ 査読コメント
評点の根拠:
自分撮り機能を付加したトランポリンに跳躍中の体験者の写真を撮影し、それを周囲の傍観者にみせることで体験者の自己表現欲求を刺激し、さらに体験者と傍観者の間での競争的な表現欲求を刺激しあえる状況を作り出すことでトランポリン運動への自発的な参加を促すことを可能にする新しい運動促進システムが提案されています。

また大型ディスプレイ等と組み合わされて実装されたシステムも実際に展示で利用され、その結果からも著者らの提案する競争的創造を起こす一連の機構がよく機能しておりトランポリン運動の参加促進において効果的であることがうかがわれます。

論文改善のためのコメント、疑問:
論文中ではトランポリン前ディスプレイや写真履歴表示用ディスプレイにどのような映像が表示されているかについて具体的な記述がないため、スクリーンショットやシーンの流れの図等があれば分かりやすいと思います。

提案されたコンセプトは、トランポリン以外でのスポーツやエクササイズには応用可能でしょうか。いくつか例を出して頂けるとわかり易いと思います。
■ レビューサマリー
PC委員会で議論の結果、ショートとしての採択と判断しました。

各査読者から、論文の構造・ストーリーや目的設定の不明瞭さに関する指摘、
提案コンセプトならびに提案システムの新規性についての指摘があります。

これらを中心に、より良い論文となるようカメラレディまでに可能な限り修正を行って下さい。

また議論についても、各査読者のコメントをもとに活発な議論になるよう準備をお願い致します。



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review comment 2
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■ 総合点
3
■ 確信度
2
■ 査読コメント
新規性の観点から、エンタテインメント化、競創という概念、またその実装としてのトランポリンでの自撮りも興味深いと思いました。また、実装と運用の結果が、本システムの有効性を示していると思います。デモビデオからは、実装や技術的な正確性も問題ないと感じました。

以下、論文を改善するためのコメントです。

・論文の構造・ストーリーが少し不明瞭と感じました。つまり、従来何が問題(どういう新しい可能性があって)で、それをどう解いたのかの流れが見えにくいと感じます。
「著者らの狙いは達成された」と6章冒頭で記述がありますが、何がどのように達成されたのかが不明瞭です。5章の展示事例と6章の議論において、「エンタテインメント化」「競創」「トランポリン」「自撮り」「人の自己表現欲求」「運動を人へ促す」など、どの結果がどの目的を達成したものなのか(何を確認するために展示して、それが結果どうだったのか)、明確に構造があるとより読みやすいのではと思います。

そういう意味で、トランポリンと自撮りをメインに論文を書いても良いと感じました(コメントであり、採録の条件ではありません)。つまり、トランポリンと自撮りにはどういう良さがあって、本システムが実装されると誰がいつどう嬉しいのか、それが運用によってどのように実証されたのか、という流れです。
その実装や評価の観点において、「エンタテインメント化」「競創」を用いると良いのではと思いました。

現在は、「エンタテインメント化」「競創」「トランポリン」「自撮り」「人の自己表現欲求」「運動を人へ促す」など、目的と問題意識が多種多様で、何を目指しているのか、何ができると嬉しいのかが少しわかりにくいと思いました。

・過去の論文に記述されているのかもしれませんが、「競争」が何を意味するのかが明記されていないと思いました。すなわち、自分自身との競争だけでも良いのか、他人との競争を含むのか、ということです。ここが不明瞭だと、そもそも何を目指していて、どういう結果が出たら目的を達成したのかが分かりづらいと感じます。

以上です。
採択された場合の発表内容、議論内容に関するリクエストは以下のとおりです。

・ゲーミフィケーションの概念を拡張したエンタテインメント化という概念は面白いと思うのですが、そこに競争が入るとゲーミフィケーションとの違いが分かりにくいと感じます。そこを明らかにしていただけますか。
6章からは、「高さなどの定量的な数字」ではなく「良い写真かどうかの定性的な評価」にゲーミフィケーションとの違いがあるように読み取れるのですが、例えば「良い写真かどうか」を自動推定して定量評価されたらどうなるのでしょうか。年齢差や体格による優劣があるかないかは、ゲーミフィケーションであるかどうかと関係があるのかどうかがよく分かりませんでした。

・「競創」という観点に加え、トランポリン、自撮り及び提案システム自体に関する良さや嬉しさなど(誰がどう嬉しいのか)も含めて、会場に十分に伝えていただければと思います。それによって、この研究対象を選んだことの適切性や社会的な重要性を聴衆に伝えることになるのではと思います。



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review comment 3
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■ 総合点
2
■ 確信度
2
■ 査読コメント
 本研究では,既存のものごとに楽しさの要素を付加する「エンタテイメント化」というコンセプトの一環のもと,トランポリン運動の促進システムを提案しています.提案システムを実装し,プロトタイプシステムを利用した実運用を行っています.デモムービーにてたくさんの写真を拝見しましたが,どのユーザもすてきな笑顔をしており,提案システムの楽しさが伝わってきました.

 一方,本研究では「エンタテイメント化」というコンセプトそのものや,その手段として「競争的創造」を提案していると見受けられますが,コンセプトそのものの新規性は感じませんでした.例えば,エンタテイメント化の事例としては,STOMP(http://www.stomponline.com/)のようなほうきやゴミ箱の蓋など身の回りによくある物を楽器と見立て,掃除という行為をエンタテイメント化し演奏するパフォーマンスがありますし,競争的創造の事例としては,ジェットコースターの記念撮影(http://www.spread-grani.com/leisure/roller-coaster/)があり,この手のことは日常レベルでもカメラ1つあればできることなので草の根レベル(http://www.funnypics.jp/archives/51913464.html)でいろいろやられています.また,「競争的創造」の対象を「運動」に絞り込み「参加促進」を狙うということに焦点を絞った場合,類似事例として,スポーツタイムマシン(https://www.youtube.com/watch?v=P5KlRJnz79g)があります.スポーツタイムマシンでは,過去に走った自分・有名人・チーターと競争できるシステムですが,ベビーカーを押しながら走ったり,着ぐるみを着ながら走るなど「独創的に走る」現象やそれを許容することによる参加促進が間接的に生まれており,本研究と関連するかと思いました.スポーツタイムマシンのコンセプトと,本研究のコンセプトは異なるため新規性はあると思ます.

 概要の最初の行において「自発的な参加と継続を促すことを目指した」と記述されていますが,提案するトランポリン運動促進システムは「継続の促し」に成功しているかどうか論文からわかりませんでした.さらに,提案システムは既存技術の組み合わせでできており技術的な新しさは感じません.以上より,新規性および有用性ともに評価が低くなってしまい,総合点も低くなりました.