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review comment 1
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■ 総合点
2
■ 確信度
1
■ 査読コメント
査読コメント:
本研究では,身体に負担の少ない動作パターンを複数選定し,それらの動作パターンを組み合わせることで,構造物を建設する施工プロセスを生成する手法を提案しています.
作業者の動きを設計段階で活用する事例はありますが,本研究では施工時の作業者の動きを用いる点で異なっています.

施工者の動作パターンに着目した点は,非常に面白いと感じます.
しかし,いくつか疑問点があります.
一つ目は,動作パターンを制限するのは作業負担の軽減を目的としていますが,実際に作業負担が軽減されるのか,もしくは効果を得るためには設計段階に厳しい制約をかけなければならないのか,などについて明らかではありません.
作業がやりやすくなるような自由な姿勢を取れなくなり,同じ動きを繰り返すことで却って作業負担が増すという可能性も考えられます.
また,提案手法により作業内容を標準化できると書かれていますが,作業者間の違いや同一作業者であっても動作パターンのバラツキをどのように吸収するのか不明です.

提案手法が,検証に用いた実験的な建築工法に適用できるのは理解できます.しかし,この工法に工学的な価値があるのかどうかが不明で,アートの一種(新たな表現手法としての価値)であるような印象を受けました.
提案手法を機能させるために,この実験的な建築工法を編み出したように見受けられます.
3種類の円柱モジュールを用意し現場で接続するのが,最小の作業負担で目的の建造物を作る方法のように思います.
この工法における作業負担の軽減の価値や,実験的な工法以外にも適用可能な領域や工法などについて検討が不足しています.

また,図4に示されている3つの動作パターンのうち,中央と右の2つのパターンを用いて作られる構造物は同じになるのではないでしょうか?
今回の例では,開始地点と停止地点のみが重要となることから,いずれの場合もほぼ同じ角度で傾いた円柱となるように思われます.


論文改善のためのコメント、疑問:
一文一文が長めで,読みづらくなっており,ロジックが一貫していないように(読めてしまう)文章や,意味が不明瞭な文章が散見されます.
文章を推敲する必要があります.
また,提案手法の適用領域に関する議論を深めることが特に重要だと考えます.
■ レビューサマリー
提案手法が疲労を軽減させる理由,適用できる領域など不明瞭な部分が多々あり,現状の論文に工学的な価値を認めることができません.
しかし,全ての査読者が提案手法を興味深く感じており,建築(アート)の新たな表現手法として高く評価しています.



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review comment 2
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■ 総合点
4
■ 確信度
3
■ 査読コメント
複雑な形状を持つ建築物を、身体的動作のみで作り上げる。それをARなどで補助する。そのような建築工法の新しい提案である。とても刺激的な内容であり、議論に値する。論文の記述は十分に分かりやすく書かれている。



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■ 総合点
3
■ 確信度
1
■ 査読コメント
本論文は人手作業時の作業者の身体性から設計及び施工を行う手法を提案しています.

評点の根拠:
人間を『可動領域が限定され,かつ疲労する機械』としてとらえそれに最適化させた設計及び施工を検討した点が非常に興味深いと思います.

また,実験的な建築手法であるものの,提案手法によって実際に構築が可能であることまで検証されているため,本提案手法について議論するのに十分な要素が含まれています.ただ,作業者の疲労度などについて被験者の評価・コメントは必要かと思います.

論文改善のためのコメント、疑問:

「建築」という単語が適するのかが気になるところです.
建築という語は,人がその中ないしは付近で各種活動を行っても問題ない規模・強度のものが想像されるように思います.
著者が「建築」のためのシステムを検討していることは理解の上ですが,
本論文の設計・施工や検証を踏まえると,現段階では「大型建造物」ぐらいの表記でもよいように感じられます.

また,本論文が工学的・実用的な建築を対象とするか,パビリオンのようなアート的な建造物を対象とするかによって,必要となる要素が異なるので,どちらを対象としているかは明確にする方がよいかと思います.

ARによる作業指示システムでマーカーを使用していますが,5.3でも述べている通り,物理マーカーであるために遮蔽が問題となっています.
今後改良する予定があれば,特徴点ベースのAR表示も検討してみるとよいと思います
(検討している・または改善があった場合にはその点も記入しておくとよいと思います.


論文の軽微な修正:
2章 関連研究 2行目
 複雑の形状の建築が→複雑な形状の建築が
図4
 ウェブ閲覧の場合は問題ないですが,予稿集はグレースケールのため視認性が著しく落ちる可能性があります.

図9
 詳細を図に書き加えるなどすると親切かと思います.