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査読者 1

総合点

8

確信度

2

コメント

なりすましに対する耐性,追跡可能性に対する考慮,静的な生体情報のワンタイム化,という3つの要求事項を満たす,微小生体領域を利用した生体認証手法を提案しています.
被験者数が10人と実験規模は小さいですが,提案手法の評価を行っており,有用性を確認しています.
未来ビジョンにも書かれているように,これまでの生体認証全般が抱える課題に対する果敢な挑戦であり,その解決の糸口を示したことは高く評価できます.また,論文もよく書けていると思います.

採録された場合の発表内容に対するリクエストが何点かあります.
・本手法の適用領域に関するさらなる議論.
短期的な利用だけに限定されるのか,それとも適用領域を拡大していけるのか,拡大していけるのであればマークの必要性やマークの消失に対する対策などについて,さらなる議論をしていただきたい.
・本手法を今回のように小規模に実験した場合と,今後大規模に実験した場合の予想される結果の違いについての見解を述べていただきたい.

採録判定時のコメント

皮膚の微小領域(1x1mm)の撮影画像を用いた認証手法には一定の新規性がありますが、WISSのメインスコープである、インタラクティブシステムとしての検討(認証システムとして受け入れ可能なユーザビリティ等)に欠けていると評価され、ショート採録となりました。

レビューサマリ

全体の構成: 本論文は,皮膚の微小領域(1x1mm)のを用いた認証手法を提案しています.一定の新規性があり,実験を行って提案手法の有用性を確認している点は評価できます。 改良のためのコメント等: ・登録時と検証時の位置ズレに対するロバスト性の検証が行われていない(4.1節では「できる限り一致するように撮影した」としてか書かれていない)。少なくとも、位置ズレに対する認識率の変化については検証が必要であろう。 ・「インタラクション」として見た場合には、位置合わせ作業の容易性が非常に重要である。例えば、精密な位置合わせが必要とされる為に、作業に時間がかかるようであれば、システムとしての有用性は低くなる。特に、想定されているようなショートターム型認証システムであれば、試行にかかる時間を短くすることは必須である(=おおまかな位置合わせでも確実に認証できなくてはならない)。 ・全体的に、WISSのメインスコープであるインタラクティブシステムの観点からの検討が十分ではありません。一般的なシステムだけでなく,インタラクティブシステムにおいても認証技術が重要であることは間違いありませんが,それをどのように実装して,ユーザビリティと認証精度や強度を両立していくのかの検討がなされることを強く期待します. なお,WISSの発表の場では,認証技術の説明に終始するのではなく,上記の点についても有意義な議論ができるよう,論点をまとめた上で発表されることを期待しています.

その他コメント

査読者 2

総合点

6

確信度

2

コメント

皮膚表面の微細構造を認証に用いる考え方は新しく、光彩認証や指紋認証に比べ、使用可能部位が膨大である為、複製が難しいというメリットもある。
一方で、現状の論文には課題も残っている。

・「位置合わせ用のマーク」と、実際に使われる撮影領域の関係が不明瞭である(※少なくとも、モノクロでプリントした論文では判読不能)。図などで、「どんな形状のマークか」「マーク周辺のどの部分が撮影されるのか」を明確に示す必要がある。

・登録時と検証時の位置ズレに対するロバスト性の検証が行われていない(4.1節では「できる限り一致するように撮影した」としてか書かれていない)。少なくとも、位置ズレに対する認識率の変化については検証が必要であろう。

・「インタラクション」として見た場合には、位置合わせ作業の容易性が非常に重要である。例えば、精密な位置合わせが必要とされる為に、作業に時間がかかるようであれば、システムとしての有用性は低くなる。特に、想定されているようなショートターム型認証システムであれば、試行にかかる時間を短くすることは必須である(=おおまかな位置合わせでも確実に認証できなくてはならない)。

・「位置合わせマーク」が他人にも見える以上、複製のターゲットとなる危険性は残っている。例えば、マークと撮影位置の関係を登録毎に変える(カメラの角度を撮影日時等のパラメータに従って変化させる)ことで、複製の危険性を下げる工夫も必要であろう。

以上のことから、現状ではショート採録が妥当であると考えられる。ロング採録(=フルペーパ化)には、位置ズレに対するロバスト性の検証に加え、カメラをマークに「適当に」当てても確実に認証可能なシステムの構築が必要であろう。

査読者 3

総合点

5

確信度

2

コメント

肌の一部の凸凹を認証に利用するという手法はアイデアとしては斬新とは思えませんが、実際に実験を行なった点が評価できます。論文に記述されているシステムそのままでは実用的に利用できるとは到底思えませんが、認証インタフェースの試みの紹介という意味では興味深いと思いました。

そもそも「生体認証」という場合、指紋認証や光彩認証のように長期にわたって利用できるものを期待するのが普通だと思います。今回提案されている手法は長期的に利用可能なものとは思えませんので、はじめの方で「イベントその他の入場認証に利用する」のように明言した方がわかりやすいと思いました。

細かいことですが、以下のような点が気になりました。

* 「要求1」と「課題1」は同じものですか?
* 「テンプレート以外の経路での生体情報の漏えい」とはどういうものでしょうか?
* 「生体情報のワンタイム化」とは何でしょう? 
* 「テキスト独立(text independent)型あるいはテキスト指定(text prompted)型の手書き署名認証や音声認証」とはどのようなものでしょうか?
* 「肌理」(きめ)という単語は布や板など皮膚以外のものに対しても使われるものと思いますが、本論文中では皮膚表面という意味で使われています。別のわかりやすい単語は無いでしょうか?
* ご提案の「マイクロ生体認証」の詳細を記述する前に「要求1〜3を満たす」と書いてありますが、これは順番が逆の方が良いのではないでしょうか?
* 「ユーザが身体にマークを保持し続けていることが前提となる」というのは、利用環境にかなり制限があることを意味すると思います。そもそもどういう環境で使うものなのか最初に説明してはどうでしょうか?
*  図1の処理の流れの順番がよくわかりません。順番に対応した番号をつけたらどうでしょう?
* 「マークを印字」という表現に違和感があります。文字を印刷するのが「印字」ですから、印をつけることは別の表現の方が良いのではないでしょうか。

査読者 4

総合点

4

確信度

2

コメント

技術的には画像の二値化,テンプレートマッチングであり,目立った工夫はみられない.肌理を用いた認証手法として一定の新規性は認められる.論文中ではマイクロ生体認証がなりすましに対する高い耐性を有し,実用レベルの認証制度を有するとのべているが,実際の実験ではユーザ被験者数は8名,実験期間は1日と,実用の観点からは疑問が残ります.著者らが述べているように,一部の1x1mmの肌理を利用する限りは偽造コストが高いことは確かに理解できるが,実際に被験者を増やし議論しない限りは本手法が有用であると述べるのは困難です.

また,気になる点として,論文内容はほぼ認証に関わることであり,本会議のInteractive system and software とのズレが気になります.例えば,今回の手法を用いた場合,ユーザへのマーク印字がユーザビリティ上大きな問題になることが容易に想像できますので,それを解決するようなアイデア,実装までを含んでいると良いかと思います.