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査読者 1

総合点

6

確信度

3

コメント

着ぐるみ装着時と非装着時のポージングが異なる点を問題点として抽出した点を高く評価したい.提案されたシステム自体はシンプルであり,技術的観点からはさらなる展開を期待したいところであるが,従来存在しないシステムであるため,まずは著者の提案するシステムでユーザへの有効性,妥当性を見ることで十分と言える.一方で検証したポージングの種類が2,3程度であり(論文中ではラベル数が記述されていないようです),ユーザが提案するように,果たして可動域の違いにより演者の注意が必要なポージングがそれ程種類があるのかどうか,いささか疑問がのこる.

導入時の研究動機についてですが,ユーザシナリオに基づいた説明を加えることで説得力がますと思います.近年では地方地区町村がキャラクタを導入していますが,演者を起用することは少なく,多くは役所の人がきぐるみに入ることも多いです.幾つかのきぐるみを導入している市区町村にアンケートをとるのも,良いかもしれません.また,初学者だけでなく,きぐるみにある程度慣れた(プロフェッショナルという言葉が適切かわかりません)ユーザに対してもインタビューをすると良いかと思います.そこからまた新たな知見が見つかるかもしれません.

最近傍法でマッチングを取っていますが,学習データ数,ラベル数などの必要な情報が抜けているようです.追記をお願いします.

採録判定時のコメント

関節可動域や動作制限という、きぐるみ特有の問題を予備調査から洗い出し、実際のシステム開発につなげている点を評価し、ロング採録となりました。一方、現状では技術的な新規性は多くは無く、多彩なきぐるみのパターンや連続動作への対応など、さらなる発展も必要だと考えられます。発表では討論の時間を長めに取り、技術的な課題や今後の方向性について(できれば実物を見ながら)議論ができることを期待します。

レビューサマリ

全体の構成: モーションキャプチャシステムにより予め取得した座標データベースを利用し、きぐるみ装着時における関節可動域の制約を,きぐるみを装着することなく適用し、演者のポージング学習を支援する研究である。 評価すべき点: きぐるみ演者のポージング支援という、ニッチではあるものの切実な問題への着目と、関節可動域や動作制限というきぐるみ特有の問題を予備調査から洗い出し、実際のシステム開発につなげていることを評価したい。現実的な実装方法ながら、多くのきぐるみパターンへの適応可能性も感じられ、今後の発展が期待される研究である. 改良のためのコメントなど: ・具体的なきぐるみの事例が2件のみであり、システムの適用可能範囲の見積もりが難しい。より多くのきぐるみパターンを用いた実験と考察が求められる。 ・現状は静止姿勢のポージングに主眼が置かれており、時間軸を伴ったスムーズな動作への対応ができていない。動作認識による、キャラクター毎の特徴的な「仕草」の支援への展開が望まれる。 ・現状では、技術的な新規性があまり無い。上に述べたように、非ヒトガタを含む多彩なパターンへのフィッティングや、パラパラ漫画では無い連続動作への対応など、技術的にも難しい課題も多く残っていると思われるので挑戦してほしい。

その他コメント

発表の際は大変かと思いますが,是非きぐるみを持参されると,会場が大いに盛り上がると思います.

査読者 2

総合点

8

確信度

2

コメント

着ぐるみを装着しないでも、着ぐるみらしさのポージングを練習するためのシステムで実に面白く、有益なコンセプトであると考える。動作練習は非常に大事な練習の一つであるが、毎回着ぐるみを装着することは難しいため、本システムが手軽に試すことができれば非常に有益であると考える。

プロトタイプシステムでは実際に2種類の着ぐるみを用いての実験しか行っておらず、これだけでどこまで有益かを述べることは難しいかもしれないが、きちんと稼働しており、ユーザが着ぐるみを未装着の状態でもポージングの練習ができたと理解できる。

実際に着ぐるみパフォーマにシステムを使用してもらい、感想や意見を聞く、という項目が今後の課題として述べられているが、システム設計の時点でこの調査は必要ではないのだろうか? 

ユーザがよりポージングを練習しやすくするために、もう一歩踏み込んだ、インテリジェンスシステムになればより良いと思われる。プロの振付師のデータベースを読み込んだり、期待する手足の位置から外れた場合に音でフィードバックをするなど、さらなる発展がいろいろと考えられるだろう。また、「体格的にこの着ぐるみを演じるのは難しい」などといったフィードバックもできるかもしれない。

アプリケーションの利用場面でも述べられているように、着ぐるみを着た際の近場や足元が見えない問題は解決すべき問題の1つであると考えられる。第三者からの目線や、こういった危険予測のための視線などをうまく演者に通知するようなシステムになるとより使いやすくなると考える。

以下、気になる点を挙げておきますので、参考にしていただけますと幸いです。
1)4章システム設計が、4.1節しか出てこず、(4.2, 4.3,…と続くわけではない) 章立ての構成が気になる。
4.1システム構成の前に、「4.1 システム設計要件」として、4.1.1 着ぐるみの可動域の制限を…、4.1.2. 着ぐるみのポージングをリアルタイムで…
とし、4.1 システム構成を、4.2システム構成としてはどうか?

2)6章まとめの、「6」が抜けている。

3)誤植 p.2 右側、「気ぐるみ」→「着ぐるみ」

査読者 3

総合点

7

確信度

2

コメント

 提案手法は、着ぐるみの演者が着ぐるみを装着せずに動作練習できるように設計されたシステムです。ユーザのポーズに合わせて、事前に記録しておいた着ぐるみ装着時のポーズ画像を提示する、というのが基本的なアイデアです。データ作成のフェーズでは、演者が着ぐるみとモーションキャプチャスーツを同時に装着した状態で計測を行うことにより、演者の姿勢と着ぐるみの姿勢の対応関係を記録し、データベース化しています。

 技術的にはそれほど真新しい貢献はありませんが、このような目的のシステムを提案・開発したというところに新規性と社会的な有用性があると考えます。また、着ぐるみ非装着でポージング練習を行うことの難しさを予備調査によって検証したことも評価できます。

 このシステムで提案されている2つの機能がポージング練習の助けとなることはある程度期待できそうですが、説明動画ではカクカクとした動きで提示が行われていたので、「動き」というよりは「静的な姿勢」の確認ツールという印象を受けました。より細かいサンプリングを行うことで解決されるのかもしれませんが、「動作によるキャラクタらしさの表現」を重視するのであれば、連続的かつ細かい動きを提示できることが求められると思います。