論文一覧に戻る

査読者 1

総合点

5

確信度

2

コメント

もの探しの支援を目的とし、安価なパッシブタグのみを用い、過去のスキャンの履歴をデータベース化することで、ユーザの手間をできる限り少なくする試みと理解しました。アクティブタグを使った手法や、タグの位置を登録する必要のある手法と比べてコストや手間の面でメリットがあるように見受けられ、一定の新規性があるように思われます。内容自体は比較的シンプルなものであるため、ショート論文が適切であると判断しました。

できれば、アクティブタグや位置登録の必要な手法と比較してのメリットデメリットを実験できればより説得力が増すと思います。おそらくですが、発見時間はこれら従来手法のほうが早いと推測され、それに対してどの程度遅れずに済んでいるか、アクティブタグや登録情報のメンテナンスにどのくらい手間がかかるかなど、議論できるとよいように思います。

本手法ではターゲットへのショーテストパスを計算して最も近いものを提示していますが、パスが計算できるのであればパス上のものの情報をすべて表示したほうが効率は良いように思います。

採録判定時のコメント

安価なパッシブ型RFIDタグのみを用いた、もの探し支援システムの提案です。過去のスキャン履歴をデータベース化することで、ユーザの手間をできる限り少なくする手法は、既存の手法と比べてコストや手間の面でメリットがあるように見受けられ、一定の新規性があると思われます。一方、内容自体は比較的シンプルなものであるため、ショート採録が適切であると判断されました。

レビューサマリ

全体の構成: 本論文は、もの探しの支援を目的とし、パッシブ型のRFIDタグを様々なものに貼付して過去のスキャンの履歴をデータベース化することで、登録などの手間をできるだけ少なくする手法を提案しています。パッシブ型RFIDタグは検出範囲が狭いので、ユーザは複数のタグをディジーチェーン的に辿っていくことで目標物に到達することになります。 評価すべき点: タグ間の相対距離の情報のみから、もの探しの誘導を行うという試みは面白いと思います。特に、各タグの絶対座標を登録しなくて良い点、目標物や参照物体の名称や特徴などを入力しなくても良い点,相対距離の変化のグラフ表示と撮影した写真のみで次の目標タグまでの方向を誘導する点は良いデザインだと思います。相対距離の算出方法は単純ではありますが、シミュレーション実験により概ね直線で近似できることを示した点も評価できます。 改良に向けたコメント等: アクティブRFIDタグを用いた、もの探し支援システムは既に多く市販化されています。これらは電池交換を要する、高価であるなどのデメリットはあるものの、日常的に使う少数のものに貼り付けておくぶんには十分なものとなっています。また、このような市販品の多くは、論文で使われたようなRFIDスキャナを要さず、Bluetoothなどのデバイス内蔵の装置で使えるメリットもあります。 アクティブタグや、既存の位置登録が必要な手法と比較してのメリットやデメリットを明示できれば、より説得力が増すと思います。発見時間はこれら従来手法のほうが早いと推測されますが、それに対してどの程度遅れずに済んでいるか、アクティブタグや登録情報のメンテナンスにどのくらい手間がかかるかなどが、議論できるとよいと思います。 また、システムに紐付けられるタグが多くなり、トレースが極めて難しくなることや、単一の物品のみがスキャン後に移動した場合(=多くの「紛失」で想定されるシナリオ)ではリンクが辿れなくなることも想定されます。従って、小さな空間に数百個単位のRFIDタグがあり、スキャンの頻度もそれほど多くはない中で、有効に機能するアルゴリズムを提案するなどの方向に持っていくことは有意義に思えます。

その他コメント

査読者 2

総合点

4

確信度

2

コメント

パッシブ型のRFIDタグを様々なものに貼付しもの探しの支援を行うシステムの提案です。パッシブ型のRFIDタグはその検出範囲が狭いことから、複数のタグをディジーチェーン的に辿っていくことで目標物に到達することを提案しています。

実装と評価について改善を要すると考えられることから査読者は、この論文をボーダーラインと判定しました。筆者も認識しているように、アクティブRFIDタグをもちいたもの探し支援システムは市販化されています。これらは電池交換を要する、高価であるなどのデメリットはあるものの、日常的に使う幾つかのものに貼り付けておくぶんにはそれでことが足りるように思えます。このような市販品の多くは、論文で使われたようなRFIDスキャナを要さず、Bluetoothなどのデバイス内蔵の装置で使えるメリットもあります。

多くのものにRFIDタグが張り付くような世の中を想定することもできますが、そのような場合は、システムに紐付けられるタグが多くなり、辿っていくことが極めて難しくなることも想定されます。そういう意味では、小さな空間に数百個単位のRFIDタグがある中で、有効に機能するアルゴリズムを提案するなどの方向に持っていくことは有意義に思えます。

評価実験は査読の対象としていませんが、システムを使わない場合と比較するほうが自然に思えました。この場合、被験者については、数回練習タスクを行うことで擬似的にAの近くにBがあるという経験をさせると、より現実的な評価実験となると思いました。

以下は小さなコメントです。
・脚注の8がよくわかりませんでした。
・参考文献の7の姓名がおかしいように見えます。

査読者 3

総合点

8

確信度

2

コメント

タグ間の相対距離の情報のみから,もの探しの誘導を行うという試みは大変面白いと思います.特に,各タグの絶対座標を設定しておかなくて済む点,目標物や参照物体の名称や特徴などを入力しなくても良い点,相対距離の変化のグラフ表示と撮影した写真のみで次の目標タグまでの方向を誘導する点は,非常に良いデザインだと思います.
相対距離を算出する方法や単純なものではありますが,シミュレーション実験により概ね直線で近似できることを示した点も評価できると思います.一部に直線から外れるデータはありますが,ユーザは次の方向だけを決めて探索的に行動しますので,ある程度の誤差があったとしてもシステムの利便性には大きな影響はないと思います.
よって本論文は「採録」が妥当であると思います.
論文の問題点ですが,(1)式の説明において距離が最短になる場合(すなわちタグ1とタグ2が全く同じ絶対座標に置かれている場合)と,RFIDリーダの測定可能範囲以上の距離にタグ1とタグ2が離れて配置されている場合において,値がどのようになるのかについて説明したほうが良いと思います.それは実際のユークリッド距離とは異なるものになると思いますが,それがもたらす問題がありましたら,それに対する考察がある方が良いと思います.
図7ですが,疑似距離が3のところでぶち切れていますが,RFIDリーダの測定可能範囲の限界距離付近にあるタグ同士の距離がどのように算出されるかを知りたく思います.(1)式のS12の測定回数が少なくなるため,不安定になることが想定されます.