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査読者 1

総合点

8

確信度

3

コメント

本論文は,全ての壁面に映像投影可能な,いわばプール型のCAVEシステムの開発に関する研究です.

評点の根拠:
技術詳細について丁寧に記述されている点は評価される一方で,「新しいバーチャルリアリティ体験」のもつ意義やインパクトについての議論がやや少なく,この点についてはバランスを欠いた印象になっています.
ただ提案のシステムの新規性は高く,今後の発展が期待される提案であると評価します.


論文改善のためのコメント、疑問:
論文の中で可視光トラッキングについて言及していますが,これが実際に実現されているものなのかどうか,その点が判断しづらくありました.この点について明確な記述があった方がよいと思います.
その他表記に関して,以下の修正が望まれます.
○3ページ目左カラム1行目,行頭スペースが1字多い
○3ページ目右カラム最終段,行頭スペースが1字多い
○6ページ目左カラム,「直線偏光に直行した」→「直線偏光に直交した」

採録判定時のコメント

プール型のCAVEシステムに関する研究です。近年ではCAVEシステムは安価&簡単に作成できるようになっていますが、水中でのプロジェクションや立体視に関しては未知であり、この点について明らかにしている本論文には、大きな価値があると考えます。高い新規性、将来にわたるインパクトを考慮して、ロング採録としました。

レビューサマリ

全体の構成: プール壁面をスクリーンとするいわばプール型CAVE実現に向けて、技術的な困難要因を挙げ、解決可能な手段に着実に絞り込んだ、技術的に堅実な論文であると評価されました。 改良に向けたコメント等: ・構成に対する提案:前半の AquaCAVE の体験について提案と、後半の水に関わるVRの課題への対応、という二つの話に分かれており、やや内容が分裂したような印象があります。例えば、前半の話は背景として語り、既に実績を詰みあげている後半の話に重点を絞るような形にすると、読みやすくなるかと思います。 ・歪曲収差の発生に関して:歪曲収差の理解に必要となる、カメラやプールとの空気層や水との位置関係性がやや不明瞭です。6.1.2にそれらの関係性が記述されていますが、歪曲収差の話が初めて出てくる6.1に書いて頂けると、より理解しやすくなると思われます。 ・人間の視野における歪曲収差に関して:6.1.3 で語られている人間の周辺視野の歪曲収差に関する議論は、やや不正確であると考えられます。眼球の光学系における収差の発生議論と、その認識の部分とを分けて議論する必要があります(人間の視覚認識機能を考慮すれば、仮に光学的に歪みが発生しているとしても、人間がそれを認識できているとは限りません)。 ・水面の映像ぼかしについて:6.2.2 の議論は技術面では面白いですし、興味深い知見が得られていると思います。水泳でも水面を見やすい状況(例えばダイビング)、ほとんど見えない状況(通常のプールでの水泳。あまり水面を下から見る状況にはならないかと)があると思います。そういった点も踏まえて考察して頂けると、より深い議論ができるかと思います。 ・可視光トラッキングについて:実際に実現されているシステムかどうか、判断しづらくありました。この点について明確な記述があった方が良いと思います。 ・その他表記に関して、以下の修正が望まれます:  *3ページ目左カラム1行目:行頭スペースが1字多い  *3ページ目右カラム最終段:行頭スペースが1字多い  *6ページ目左カラム:「直線偏光に直行した」→「直線偏光に直交した」

その他コメント

・推薦について: 本論文の研究としての価値は高いと評価されます.下記の点について修正が行われれば,充分推薦論文に相応しいレベルになると考えます. ・カンマの全角化,誤記・無駄な空白などの修正:カンマが半角のため,やや読みにくくなっています.また段落冒頭に余計な空白が残るなど,体裁面で粗が見られます.改めて全体の推敲をするべきです. ・論文背景(提案や体験),技術的詳細・問題解決を整理すること:レビューサマリ「構成に対する提案」に示したとおりです. ・研究の意義・インパクトに関するより深い議論の追加:技術詳細について丁寧に記述されている点は評価される一方で,「新しいバーチャルリアリティ体験」のもつ意義やインパクトについての議論がやや少なく,この点についてはバランスを欠いた印象になっています.この点について,特にAQUA CAVEそのものの価値や水中プロジェクションについての今度の展望といった観点について,より深い議論があることが望ましいです.

査読者 2

総合点

7

確信度

1

コメント

私の不十分な専門性の範囲からの判断となりますが,水泳体験を対象としたCAVA型VRにおける技術的な困難の要因を挙げ,いくつかの対処手段の候補のなかから有望なものを絞り込んでいる点で新たな知見に富んだ優秀な論文という印象を持ちました.

以下では,(私の理解が不十分なことが原因かと思いますが)理解が十分でない点いついてコメントさせていただきます.

図4右の糸巻き型歪曲収差の例ですが,この写真を撮影したカメラは水で満たされたプールの中に使っているのでしょうか,それともプールの外のプールの壁面から離れた箇所に設置されているのでしょうか.4節冒頭の説明のようにプール面に直接映像が投影されたものを水中のカメラから撮影した場合には,投影面とカメラの間に空気の層がなさそうに思われます.ですので,6.1 に書かれているような「空気の水の屈折率の違い」を原因とする「糸巻き方(ママ)歪曲収差」は発生しないのではないでしょうか.3cmの厚さのガラス面に伴う屈折の影響から目の位置の取得に困難があるかもしれませんが,その場合も歪曲収差は発生しなさそうな気がします.

カメラがプールの外の離れた位置にある場合は確かに歪曲収差が発生しそうですが,その場合,4節冒頭のカメラ位置の説明とずれているような気がします.

あるいは,図5で生じている収差の原因はプールの水とカメラのレンズや防水機能に含まれる空気の層が原因なのでしょうか?あっ,そうなんですね.論文のなかでその点について明確にしていただけると読みやすかったです.と,思ったら 6.1.2 の冒頭に書かれていました.6.1 にこのことを書いていただきたかったです.

6.1.3 で語られている人間の周辺視野の歪曲収差に関する議論は,単に光学的な効果だけでなく,大脳における高次機能の働きが深くかかわるように多います.そもそも人が認知する歪曲収差の度合いを計測することができるのでしょうか.

6.2.2 の議論は技術面では面白いのですし,興味深い知見が得られていると思います.でも,普通の水泳で水面が見えるものでしょうか.

論文全体の印象では,前半の AquaCAVE の体験について提案と後半の水に関わるVRの困難への対応という二つの話にわかれておりやや内容が分裂したような印象を受けました.前半の話は背景として語り,すでに実績を詰みあげている後半の話に重きを置くように要旨を書いて下さると読みやすくなるかと思います.

査読者 3

総合点

9

確信度

1

コメント

今やCAVEは安価に、簡単に作成できるようになっているが水中でのプロジェクションや立体視に関しては未知であり非常に価値ある内容。
オリジナリティの高い内容なので、AQUA CAVEそのものの価値や水中プロジェクションについての今度の展望などに触れられているとなお良い。