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査読者 1

総合点

4

確信度

3

コメント

評点の根拠:
 提案手法は、タンジブルである点、余計な電気を使わずにパッシブに構成されている点、安価にインタフェースを制作できるという点において、アイデアの新規性・有用性があると考えられます。作成されたアプリケーションも、本システムの特徴を活かしたものになっています。技術的な記述については概ね正確性を有していると判断します。

コメント:
・人形を使うという工夫は面白いのですが、動画では、人形の顔が手前を向いている状態で、見えている映像が奥に進んでいたので違和感を感じました。直感的には向きが逆のほうが良いように思われるのですが、問題なかったのでしょうか?

・(原理上仕方のないことではありますが、)タブレット画面上にユーザにとってあまり有益でない歪んだ画像が常時見えてしまう点が、インタフェースとして少しマイナスであるように感じました。

採録判定時のコメント

円筒状の鏡によるアナモルフォーズを用いたパノラマビュー表示とそのタンジブルな操作の提案には新規性があると考えられます。また,デバイスをパッシブかつ安価に構成できるという特徴も有しています。被験者は少ないものの、評価実験において既存の手法よりタスク実行速度が短縮傾向にあることが示されており、パノラマビューの新たな表示・操作の1手法として評価できます。一方で、「人形の方向と進行方向が合っていない」という指摘もありますが、4ページ論文としては十分な内容であると判断され、ショート採録となりました。

レビューサマリ

全体の構成: 本論文では,円鏡筒アナモルフォーズを用いたパノラマビュー閲覧の提案と,円鏡筒への加工による操作機構を活かしたGoogleStreetView表示・操作アプリケーションの構築・評価を行っている.タンジブルな円筒によるマップ上の方向転換と,周囲の風景の閲覧が単一デバイスで同時に行える点は新規性があると思われる. 改良に向けたコメント等: 「表示される映像の向きが直感に反するのではないか?」との指摘が共通して提示されている.これまでのパノラマビューは閲覧者を中心としてその周囲に360度ビューが展開されるのが主であるが,提案手法では円筒の表面に360度ビューが展開され,円筒を北側から覗きこんだときに北を見た時の風景が見えるという仕組みになっている. また,円筒に取り付けられた人形は地図上の進行方向を向いているが,円筒に表示される映像は逆方向に進んでいるように見える.これらの点は既存の鑑賞手法と大きく異なるため,被験者の直感に反すると予想され,実験において問題がなかったのか疑問が残る.

その他コメント

査読者 2

総合点

4

確信度

2

コメント

本論文では,円鏡筒アナモルフォーズを用いたパノラマビュー閲覧の提案と,円鏡筒への加工による操作機構を活かしたGoogleStreetView表示・操作アプリケーションの構築・評価を行っている.

評点の根拠:
円鏡筒アナモルフォーズでのパノラマビューの表示は活用手法として興味深く,
少ない被験者ではありますが既存の手法よりタスク実行速度を短縮できる傾向にあるため,パノラマビューの新たな表示・操作の1手法として評価しています.


論文改善のためのコメント、疑問:

・これまでのパノラマビューは閲覧者自身を軸として,周りに360度展開されるような形で表示されることが主ですが,本提案は軸の周りに360度ビューが展開され,その軸の周りを自分が回るor軸を回す形となっています.
また,論文の説明と動画を確認するかぎりでは,人形の向きは地図上の進行方向を向いてますが,円鏡筒の表示は逆方向に進んでいるように見えます.
この2つの点は,既存の鑑賞手法と大きく異なり,被験者のこれまでの認識や直感に反すると予想されるのですが,認識や,認知的負荷の面で問題なかったのでしょうか.

・事前実験・本実験で使用した地点における被験者の習熟度(土地勘があるかないかなど)については記入が必要ではないでしょうか.

・論文の体裁に関してマイナーコメントですが,全体的に段落が長く,改行が不足しているので若干読みにくい傾向にあります.

査読者 3

総合点

4

確信度

3

コメント

■提案されている内容の新規性(先行研究との差分が十分にあるか)
著者らの成果である円鏡筒アナモルフォーズをナビゲーションタスクに適用するという提案です.
タンジブルな円筒によるマップ上の方向転換と,周囲の風景の閲覧が単一デバイスで同時に行える点は新規であると思われます.
■有用性(実際に役に立つか) 現実世界では,自分自身がある方向を向いたときに,自分の目の前にその方向の風景が見え,システム上でもこれが最も直感的だと考えられます.しかし提案手法では,「北側から覗き込んだときに自分から北側の風景が見える」とされており,これは直感とは反対になるのかなと感じました(北側から覗き込む=タブレット上の座標で考えると北から南を見ることに相当するのではないでしょうか). 提案システムでは移動方向を決定するための人形も設置されています.この人形をタブレット上で北に向けることは,進行方向として北に向かって進むという事ですが,進行方向の風景を見るためには人形と向き合う必要があります.今回の評価実験では,比較的シンプルな経路(L字)だったので問題がなかったのかもしれませんが,もう少し複雑な経路だと,移動方向の決定のために人形に注目するフェーズと,風景の確認のために円筒に注目するフェーズが交互に入れ替わり,操作が複雑になってしまうのではないかと危惧します. # 実際に体験してみるとまた印象が異なるかもしれません ■正確性(技術的に正しいか) 特記事項なし ■論文自体の記述の質(分かりやすく明確に書かれているか) 特記事項なし ■論文改善のためのコメント、疑問 ・図4の矢印が細くて見づらい印象です. ・はじめに,に記載されている「2) HMD で表示し,内蔵のモーションセンサにより操作する手法」について,「近年ではスマートフォンを用いた簡易で安価なHMDも普及してきたが,加速度センサやジャイロセンサによる方向認識の精度という点において改善の余地が多くある.」という個所について,少なくとも今回のような地図上の道をたどるというタスクについては,センサの精度はそう問題にはならないと感じました. 例えば「HMDは視界全てを覆ってしまうが,提案手法であれば視点移動が自由であるため,探索しながらメモを取る,などの作業も可能である」といった理由のほうが個人的には妥当かなあと思いました.