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査読者 1

総合点

7

確信度

3

コメント

導電性糸の抵抗値変化から指の曲げを計測する点には新規性があると思います.一方で,複数の物体の位置を分類・検出したい場合に,信号の周波数を分けて,受信部で推測するというアプローチは一般的であり,本論文で提案されているような指ごとに周波数を変えるというやり方自体に明確な新規性は見いだせないかと思います.

例えば,HMDの周囲に周波数が異なる磁場を生成するコイルを配置して視点方向を推定するという研究がありますが,似た考え方かと思います.
EyeContact: Scleral Coil Eye Tracking for Virtual Reality
ISWC '16 Proceedings of the 2016 ACM International Symposium on Wearable Computers
Pages 184-191 

4.1の結果について,結果の有効性がよくわかりません.実際には抵抗値から曲げ角度を推定すると思いますが,推定誤差を明示すべきかとおもいます.

また,4.2の接触位置を推定する手法の詳細が不明です.FFTの結果をそのままSVMに入力したのかと思いますが,使用している周波数が4種類なのでしたら,そこだけ見ればよいようにも思います.図5のような予備実験を行っているにもかかわらず,全周波数をSVMに入力しており,設計根拠に疑問をもちました.

1章7行目「際の設置場所」とは何のことかわかりませんでした.タイポでしょうか.

4.1節の「また導電繊維は 0–10◦ 付近にて一度抵抗値が上昇していることが分かる.」とはどこから読み取れるのかわかりませんでした.

採録判定時のコメント

導電性糸のみで構成された一般的な手袋において、指先と指の付け根の間の抵抗値から指の曲げ具合を計測する点には新規性があり、実装手法や実験も明確に記述されている。論文中の表記や提示方法に若干不明瞭な箇所はあるが、論文自体の評価を大きく下げるものではない。以上の理由から、ロング採録と判断された。

レビューサマリ

これまで,データグローブをはじめてとて,指の曲げ角度を検出する様々な方法が提案されてきましたが,手袋表面の導電性繊維同士が接触することで指を曲げるほど抵抗が減るという現象を応用した本手法は高い新規性を有しています.また,特殊な導電性手袋ではなく,装着したままでも静電容量タッチパネルを操作可能な手袋として広く市販されている導電性手袋を用いている点は,有用性の面で優れています.本論文ではさらに,指先に交流電圧を印加することで指同士の接触検出に取り組んでいます.

基本的には現状の論文から大きな修正は不要であると考えていますが,各査読者からのコメントを頂いていますので,可能な限り修正してください.

■提案手法について
・”指を曲げた際に導電性繊維同士が手袋表面にて接触し,短絡することによって”の具体的な状況がよくわかりませんでした.これは導電性手袋の織り方に依存しているのでしょうか?完全に接触している図2(b)であれば理解できますが,そうではない状態で何が起こっているのかをもうすこし丁寧に記述すると,理解が深まると思います.

・使用している周波数が4種類であればその周波数だけを見ればよいように思いますが,FFTの結果の全周波数をSVMに入れている根拠を明確にしてください.

■実験結果について
・2ページ左カラム”電流の経路が腹側に移行する”これは理由ではなく結果ではないでしょうか?

・5ページ左カラム”このことから,(略)認識率を向上させることができると考える”なぜそのように考えられるのかが理解できませんでした.単にSN比を向上させればよいということでしょうか?

■論文中の表記・表現について
・何カ所かタイポがありました(例えば1ページ左カラムの”比べて,際の”)

・4.1節の「また導電繊維は 0–10◦ 付近にて一度抵抗値が上昇していることが分かる.」とはどこから読み取れるのかわかりませんでした.

・図9の散布図は,1点1点が(おそらく)大きすぎるため,散布図として機能していないように見受けられます.

・論文中の図からどれが導電性糸か不明であるため,アノテーションなどをして明確にしてください.

・参考文献[11]は,CHI '12論文の方が適切だと思います.

その他コメント

査読者 2

総合点

8

確信度

3

コメント

本研究は、手形状を計測するグローブの開発である。グローブ型の手形状計測は、過去にも提案されているものの、本研究は導電性糸のみで構成された手袋でそれを実現しているところが新しく、またその結果、柔軟で軽くまた洗濯が可能な装置が構成できており、有用である。特に交流を印加させて、他の指との接触状態の識別にチャレンジしており、実験的にも高い識別率になっているため、評価したい。図2(b)のように指の先端が接触している状態の原理は理解できたが、一方で接触していない中間の曲げ状態の際も抵抗値に変化が起きているため、この理由を考察すべきと考える。また論文中の図からどれが導電性糸か不明である。具体的にアノテーションなどをして明確化すべき。

査読者 3

総合点

9

確信度

3

コメント

本論文では,導電性手袋を用いて指の曲げ角度および指の接触を検出する手法を提案しています.
これまで,データグローブをはじめてとて,指の曲げ角度を検出する様々な方法が提案されてきましたが,手袋表面の導電性繊維同士が接触することで指を曲げるほど抵抗が減るという現象を応用した本手法は高い新規性を有しています.
また,特殊な導電性手袋ではなく,装着したままでも静電容量タッチパネルを操作可能な手袋として広く市販されている導電性手袋を用いている点は,有用性の面で優れています.
本論文ではさらに,指先に交流電圧を印加することで指同士の接触検出に取り組んでいます.
手法や実験内容はわかりやすく記述されており,十分な評価実験も行われていることから,本論文はロング採録とすることが適切であると考えます.

以下は,マイナーなコメントです.論文を改善する際に参考にしてください.
・何カ所かタイポがありました(例えば1ページ左カラムの”比べて,際の”)
・”指を曲げた際に導電性繊維同士が手袋表面にて接触し,短絡することによって”の具体的な状況がよくわかりませんでした.これは導電性手袋の織り方に依存しているのでしょうか?
完全に接触している図2(b)であれば理解できますが,そうではない状態で何が起こっているのかをもうすこし丁寧に記述すると,理解が深まると思います.
・2ページ左カラム”電流の経路が腹側に移行する”これは理由ではなく結果ではないでしょうか?
・図9の散布図は,1点1点が(おそらく)大きすぎるため,散布図として機能していないように見受けられます.
・5ページ左カラム”このことから,(略)認識率を向上させることができると考える”なぜそのように考えられるのかが理解できませんでした.単にSN比を向上させればよいということでしょうか?
・参考文献[11]は,CHI '12論文の方が適切ではないでしょうか?