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査読者 1

総合点

4

確信度

2

コメント

本論文では、訳詞を行うためのユーザーインターフェースにおいて、複数の実装を用意し評価を行った結果の報告がなされています。条件の設定や結果での各モジュールごとの考察などが細かく行われており、そこから得られた知見は、有用であると考えます。

評価では、クリック回数を主に指標にしているように見受けられますが、たとえば、滞在時間(あるアクションから次のアクションまでの時間)など、他の指標も評価の対象となるとよいと思います。

考察に関しては、推測の域を超えていない部分が多いので、今後の継続的な研究に期待します。
たとえば、”作業時間”のうちどのぐらいが、実際の本質的な作業(訳詞)のために使えた時間なのか、作業時間の短縮と作業満足度のうち各ユーザがどちらを志向しているのか(早く終わらせたいのか、満足のいく結果を作りたいのか)、など定性的な評価もより活用すべきと考えます。
それによって、「作業効率を上げるために適したインターフェース」という本提案の方向性が妥当であるか、明らかになると思います。

採録判定時のコメント

外国語の歌詞を日本語の歌詞に訳詞する為の対話型システムの提案。訳詞支援という問題設定のユニークさに加え、訳詞作業の「どの部分を」「どのように」支援するかのトレードオフを、ユーザ評価を通して検証している点が評価された。一方で、(被験者アンケートからもわかるように)発展途上のシステムであることに加え、対象者設定の妥当性・システムの有用性など、いくつか不明確な部分も残されている為、ショート採録と判断された。

レビューサマリ

査読の議論では、翻訳の支援するという問題設定のユニークさや、どこまでのことをどのように支援するかのトレードオフをユーザ評価により検証を行っている点など、一定の評価ができるという意見がありました。

一方で、研究としては下記のような課題があると考えます。

(1)2章で示された4つの課題のうち、具体的に提案インタフェースのどの機能がどの課題を解決しようとしているの対応が不明確である。

(2)非熟練者を対象としたインターフェースの提案であるが、本当にそのようなニーズがあるかどうか、根拠が薄い。

(3)対象者がシステムに求めていること(早く作業を終わらせたいのか、満足のいく結果を作りたいのか、など)が明らかではないため、システムが対象者にとって本当に有用であるかの判断ができない。

今後更なる調査や評価が必要と思いますが、研究としては発展性があり、有意義な議論が行えると判断し、ショート採録としました。

その他コメント

訳詞におけるそれぞれの課題と、実装した機能の対応について整理されると良いと思います。

査読者 2

総合点

6

確信度

2

コメント

外国語の歌詞を日本語の歌詞に訳詞するためのインタラクティブシステムの提案である。
訳詞をする際の課題や現状をきちんと調査されており、それに基づいて
使いやすいシステムを目指して、システム実装を行い、ユーザアンケートもとっている。

なんでもできるようにしてしまうと、すべて手動で行うものと変わりがなく、
また、すべて自動で行うには無理があるため、
そのトレードオフをユーザ実験及びアンケートで解決しようとしている。

アンケート結果からもわかるように、システムとしてはまだ開発途上である点も否めないが、WISSで発表・議論することで、よりよいシステムへと発展する可能性を秘めており、訳詞のためのインタラクティブシステムということで、新規性もあるため、採録と判断した。

査読者 3

総合点

3

確信度

3

コメント

本論文は,外国語の楽曲を邦訳するためのインタフェースを提案しています.提案インタフェースでは,訳詞の候補を提示したり,歌詞を自動的にメロディに対応したりする機能を実現しています.

歌詞の翻訳を支援するという問題はユニークで面白い問題設定と思いました.
その一方で,研究のモチベーション,提案手法の妥当性という点で疑問を持ちました.

1章にて,訳詞の作成は「非熟達者には難しい作業である」と述べていますが,そもそも外国語の楽曲の訳詞を作成する作業は,一部の専門家のみが行うような作業なのか,非熟達者つまり一般的なユーザも行うような作業なのかが分かりませんでした.本論文では非熟達者を対象にインタフェースを設計していますが,本当に非熟達者に対して訳詞を効率よく作成したいというニーズがあるのかを表す客観的なデータを示すことが必要だと思います.

また,提案インタフェースが訳詞作成に関わる問題を本当に解決しているのかが分かりませんでした.著者らは2章で訳詞における課題を4つ挙げており,この整理そのものは分かりやすく,妥当であると思いました.その一方で,ここであげた課題は以降の本文で明示的に触れられることがなく,提案インタフェースのどの機能がどの課題を解決しようとしているのかが分かりませんでした.さらに,査読者にはここで挙げた課題が提案インタフェースによって解決されているとは判断できず,有用性を評価することができませんでした.ここで挙げている課題をどのように解決しているのか,分かりやすく整理して記述されると良いと思います.

以下はその他のコメントです.

インタフェース名: 本文中でA0やB1といったように,インタフェースの各条件が記号で表現されており,非常に読みにくくなっています.記号を割り当てるのではなく,意味のあるラベル名を割り当ててはいかがでしょうか.

参考動画: 動画に説明がなく,ユーザがなぜ歌詞をしたのかが分かりにくくなっています.たとえば,ユーザはどのような考えで「すかぼろーふぇあにいくのかい」から「あのちほうにゆくのかい」に修正したのかといった説明を加えることで,提案インタフェースが訳詞の作成にどのように役立つのかを説明できると思います.