■ 論文ID: 47 ■ タイトル: SyncBlink: 同期刺激によるナビゲーション方式の提案と評価 ■ 著者: 志摩駿介(神戸大),綾塚祐二(ISID),寺田努(神戸大/JST さきがけ),塚本昌彦(神戸大) ------------------------------------------------------------------ レビューサマリ ------------------------------------------------------------------ 本論文は、ユーザを地理的に誘導するための手段として,環境に埋め込まれた信号とユーザのデバイスからの信号を同期する試みの有効性を認知実験とプロトタイプ環境における実験によって検証したことは、高く評価できる。また、実験によって有効性も示せている。 推薦論文としては、案内システムの定量評価をしっかり行って下さい。 特に、本システムと使った場合と使わなかった場合の差を明らかにする 定量評価実験を求めます。 ------------------------------------------------------------------ reviewer 1 ------------------------------------------------------------------ ■ 総合点: 4 ■ 確信度: 2 ■ 査読コメント: 同期刺激を使い、公共の看板などの点滅と所持しているデバイスの点滅を 同期させることで、公共の看板のどこをみたら良いのかが それぞれ個人毎に提示出来るアイデアは、評価できる。 また、本手法が、正しく動作することも示していることも 評価に値する。 結果から見るに、応用範囲が非常に広いと思われ、 幅広い応用が考えられる。 視覚効果を使わず、振動だけで6パターンぐらいの 刺激動作を作り、いま持っているスマートフォンに 実装するだけで、すでに実用的になると思われる。 例えば、わかりやすい規則を使い、 (i)・・・・ (ii)・・ーー・・ などを 点滅パターンとして決めてしまい、 それをスマートフォンのバイブレータに組み込んでしまえば それだけで、実用システムとして評価に値する。 >筆者らが知る限り,環境側とパーソナルデバイスを連携させた研究は行われていない. 視覚障害者向けの点字ブロックを使った研究が、行われているので この辺りを調べて論文としてまとめていただきたい。 一例 視覚障害者向け対話型情報提供システムの開発 情報処理学会研究報告. ITS, [高度交通システム] 2001(83), 75−82, 2001−09−06 ------------------------------------------------------------------ reviewer 2 ------------------------------------------------------------------ ■ 総合点: 4 ■ 確信度: 2 ■ 査読コメント: ユーザを地理的に誘導するための手段として,環境に埋め込まれた信号とユーザのデバイスからの信号を同期する試みの有効性を認知実験とプロトタイプ環境における実験によって検証しています.丁寧な実験を重ねていると思います.実験結果を踏まえた考察はさらに深化することができると思いますが,興味深い結果を得ていると思います. 4.1 の実験において,各円ごとに一定間隔で明滅するのでしょうか.それともそれぞれランダムなタイミングで明滅するのでしょうか. 表1について − 点滅数はなにを意味しているのでしょうか. − 誤答数は,正解に達するまでの誤答数,つまり誤答数=nの場合,n回の誤答を経て,(n+1)回目にようやく正解したという意味でしょうか? − 被験者7−9は誤答が目立ちますが,他の被験者と比較して彼らが誤答する原因は特定されているのでしょうか. − 被験者9はあまり学習していないように見えます.誤答したことを本人が認知するようなフィードバックは与えているのでしょうか. − 被験者9のように一様に誤答する被験者と特定の刺激に弱い被験者(7, 8)の特性はなんでしょうか. − 被験者8は視覚的刺激の成績はよいものの聴覚刺激が加わると成績が悪化します.一方,被験者7の場合はそのような相乗効果は見受けられません. − 3種類の実験を行った順番はもしかして,視覚のみ,聴覚のみ,視覚+聴覚ではありませんか.視覚刺激を得意とする被験者8は苦手とする聴覚刺激の実験で混乱し,その悪影響が視覚+聴覚に表れていると見做せるかもしれません.もし,やっていなければ実験の順序を被験者ごとに変更すべきです.また,それぞれのセッションのあいだに十分な休憩を与え,セッションを始める前にウォーミングアップをすると結果が変わるかもしれません. いろいろ興味深い事実が見えますので,さらなる調査を期待します.この実験結果から 4.1 の結論を導きだすのは早計だと思います.もう少しがんばって下さい. p.3−R:「図5右のように提示方法を店頭ではなく消灯にした場合」に,ユーザデバイスの起動状況も反転させたのでしょうか? − 表2の数値は平均正答率ですか? − この実験において,触覚と聴覚の方が視覚よりも優位である結果は興味深いと思いました.視覚的なサインとは別のチャネルからの刺激の同期について脳が強く反応するという可能性がありますね.この結果が統計的な偶然の産物であるか否かという点は重要だと思います.もしも,統計的に優位である場合には,認知科学的な成果についても探してみるとよいのではないでしょうか. 「円滑に案内できるかの評価」この実験において, 視覚刺激については,色盲の問題はあるものの,案内板に項目ごとに別の色を割り当て,目的とする色をLEDで発色させる方法の方が同期性よりも直感的かと思いました... ------------------------------------------------------------------ reviewer 3 ------------------------------------------------------------------ ■ 総合点: 4 ■ 確信度: 2 ■ 査読コメント: 従来のナビゲーション手法について,細かく分析した後,著者らは同期刺激をに関して基礎的知見から実験検証を行い,簡易なアプリケーションを提案している.パブリックサインにおける点滅周期と,ユーザへの提示刺激を同期させるというシンプルながら効果的な手法であり,実験結果からもある程度の有用性を認めることができる. 正確性に関して,実際にどの程度パブリックサインと同期できているかを示す必要があります.例えば振動モータであれば,どのようなものを使用したかが不明です.一般的な偏心モータ方式によるものであれば,振動提示までに50ms程度かかります.また,XBeeとの通信とありますが,通信速度によっても数ミリの遅延が生じる可能性があります.まずこれら技術仕様を明確にし,ユーザへの刺激提示実験に関して論じるのが良いです. 著者らの提示実験について,リズム知覚における知見が有用と思います.著者らは実験において,0.1(秒)感覚の提示を行っていますが,これは,楽曲でいうところの600( or 300)bpmであり,このようなテンポは通常の楽曲ではありえないものです.最も早いものであっても300( or 150)bpm程度であり,実験結果もそれにならうように見えます. 記述ミス ・2節2段落8行目:「触感核」