■ 論文ID: 22 ■ タイトル: Traxion:仮想力覚提示デバイス ■ 著者: 暦本純一(東大/ソニーCSL) ------------------------------------------------------------------ レビューサマリ ------------------------------------------------------------------ 査読コメントで述べた文献を引用し,それとの差分を強調してください.また本文中でUISTの論文を引用してください. ------------------------------------------------------------------ reviewer 1 ------------------------------------------------------------------ ■ 総合点: 3 ■ 確信度: 3 ■ 査読コメント: 研究の目的や実験結果に関しては特に問題を感じませんでした.しかし本稿で提案されている手法自体は知覚の非線形性を利用した既知の手法です.筆者自身も先行研究をいくつか挙げられ,今回の新規性を「小型化可能であること」「反応速度が速いこと」としていますが,挙げられていない先行研究でかなり小型化が実現している例があります. Nakamura et al., Development of Fingertip Type Non−Grounding Force Feedback Display, World Haptics Conference 2007. こちらでは振動モータ2つを使っている点では引用文献[13]に類似していますが,サイズは10gと今回のものに近くなっています. こうした先行研究があるため,リニアアクチュエータの駆動デューティー比によって疑似力覚を生じることを発見とするのは躊躇されます.ただ実際,上記の研究グループはリニアアクチュエータを使った試行はしていないため,ハードウエア構成自体には新規性はあると考えます. ------------------------------------------------------------------ reviewer 2 ------------------------------------------------------------------ ■ 総合点: 4 ■ 確信度: 3 ■ 査読コメント: 非接地形の力覚提示デバイスとしては同程度(10g)のデバイスが既にあるので、「小型化」に関する新規性主張には難があります: http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2010/pr20100825/pr20100825.html しかしながら、従来のデバイス(回転形及び並進形)がいわば「特注」であったのに対し、本来別の目的(タクタイルフィードバック)で設計&製造された市販のアクチュエータに対して、印可信号の調整のみで同等の効果が得られることを「発見」したことは十分に新しく、特に製造能力を持たない人々にとっては、システム実装のハードルを下げることができます。 その意味で本論文は、「新しい製造手法の発見」と等価であり、十分に採録の価値があると考えられます。 但し、内容から見て、UIST2013 で発表予定の以下の論文との類似性が予想されます(おそらく同一著者らによる研究)。 Jun Rekimoto, Traxion: A Tactile Interaction Device with Virtual Force Sensation WISSでは国際会議との多重投稿は禁止されていないので、違反にはあたりませんが、既に UIST での採録が決定しているので、 CameraReady には Reference として記載してください。 デモを強く推奨します。 ------------------------------------------------------------------ reviewer 3 ------------------------------------------------------------------ ■ 総合点: 4 ■ 確信度: 3 ■ 査読コメント: ○ 評点の根拠 偏心加速度による力感覚提示については,著者が指摘するとおり,偏心クランク機構を用いた手法が知られている.また,やや異なる機構でかつ 軽量な装置として,Nakamuraらのシステム(Development of Fingertip Type Non−Grounding Force Feedback Display, World Haptics Conference 2007.) もあるので,そちらについても参照の上,議論をすることが必要であると認められる. 著者らの提案する装置は従来システムよりも大幅に小型軽量化されている点が特長であるが,サイズ・重量という観点では,Nakamuraらのシステムも同程度のものが実現されている.著者らの提案する装置の特長は,市販の部品について 特段の改造をすること無しに,ソフトウェアだけで偏心加速度を利用できるようにした,という点にあると考えられる. 多くの人に偏心加速度を利用できる手段を提供したという点で,評価できる研究であると認められる. ○ 論文改善のためのコメント、疑問 参考文献[2]のAmemiyaらの研究について,より新しい研究を引用するべきである.例えば日本語であれば 雨宮智浩, 杉山久, ”牽引力錯覚を利用した牽引式羅針盤による視覚障がい者の歩行誘導の評価”, 信学技報, Vol. 109, No. 27, WIT2009−43, pp. 215−220, 沖縄, May 2009. があり,偏心加速度による牽引力提示,さらには方向を変化できる装置について述べている. また,著者は提案システムで力覚を感じる理由としてStevensの冪法則を挙げているが,従来研究では経時マスキング効果が原因の一つとして論じられている(著者参考文献[2]). この点については適切な文献を引用しつつより精密な議論をすることが望ましい. また,以下の点は誤字と思われる P2右カラム中程 修正前 「仮力覚の発生原理についてはStevens の冪法則」 修正候補「仮想力覚の発生原理についてはStevens の冪法則」