■ 論文ID: 36 ■ タイトル: ライフログによる記憶拡張のための探索手法とその実践 ■ 著者: 中村聡史(明治大) ------------------------------------------------------------------ レビューサマリ ------------------------------------------------------------------ 写真によるライフログの活用方法およびその実践から得られた知見、という内容が興味深いという点で全査読者の意見は一致し、評価しています。一方で、その内容ゆえの個人への依存度の高さ(客観性の薄さ)に対する懸念や、技術的貢献が少ないのではないかという指摘が挙げられています。 WISS での議論にはふさわしいと思われ、採録の判定としていますが、今後これをベースにより一般性・客観性の高い議論を深めることが期待されます。 ------------------------------------------------------------------ reviewer 1 ------------------------------------------------------------------ ■ 総合点: 4 ■ 確信度: 3 ■ 査読コメント: 写真によるライフログの探索手法として、人間の記憶、意識特性を 活用したインタラクティブなものを提案しており、興味深い。 事例、考察がすべて非常にパーソナルなものであり、個人の行動 特性(どういうときに写真をとるか、ライフログをどのように 活用したいか、など)への依存度が高いとも感じるが、 WISSでの課題提起として適切と思う。 最近の一般的な行動パターンとしては、ここで撮影したような 写真の中から、一部はソーシャルメディアに投稿することも 広く行われており、今後、それらソーシャルな行動との関連に ついても検討を広げることが可能だろう。 ------------------------------------------------------------------ reviewer 2 ------------------------------------------------------------------ ■ 総合点: 3 ■ 確信度: 2 ■ 査読コメント: 本論文の貢献は,ソーシャルネットワークを利用した人を介した写真の検索機能と受動的閲覧による写真の長期記憶への転写機能にあると判断いたしました.特に後者については,興味深い試みではあるのですが,以下の理由で強く採録を主張するには至りませんでした. まず,検索機能ですが,ソーシャルネットワークにおける人のクラスタリングの結果を利用しているのですが,手法そのものはオーソドックスなもので,ここに技術的貢献はありません.確かに人間の記憶は曖昧なもので,正確な属性一致をベースとしている現在の検索メタファでは対応できないのは,認めるところです.人を介しての検索でクラスタリングを用いるのも妥当なところです.ただ,技術的にはもうひと押し欲しいところです.時間や空間に対してもあいまい検索ができるようにすれば,写真検索の有用な検索手法になるかもしれません. 写真の長期記憶への転写という発想には興味を惹かれました.ただ,なぜ長期記憶化すべきなのかという議論がないために,そもそも必要な機能なのかどうか疑問に思いました.人はせっかく忘れることができる能力を持っているのに,それを無理に妨げることが本当に必要なのかどうかと,長期記憶の容量に限界があるかもしれず,写真を記憶することにより他の必要な記憶が抜け落ちる可能性もあります.写真の中で何か長期記憶化しておくと,人にとって便利なのか,幸せを感じることができるのか,という議論が欲しいところです.そして,それに合わせて長期記憶化するために必要な方法というのも考えることができるでしょう. 著者自身の長期的な運用に基づく,実装とその利用例には説得力があります.その経験を生かし,もうひと押し技術的な工夫,あるいは科学的な知見があると良いと思います. ------------------------------------------------------------------ reviewer 3 ------------------------------------------------------------------ ■ 総合点: 4 ■ 確信度: 3 ■ 査読コメント: 評点の根拠: 内容的にはとても興味深く、ぜひ WISS の場で議論したいものだと思います。しかし、(内容の性質上仕方がない部分も多いとはいえ) 主観的な話に終始し、客観性に欠けるようにも思います。論文らしくない、とも言えます。悩むところではありますが、「ワークショップ」ということで内容の興味深さを優先し、4 と評価しました。 論文改善のためのコメント、疑問: 前項にも書いたように、主観的な話が多く、エピソード紹介的な要素が強いため、論文としてのポイントがどこか、などが解りにくくなっています。そのあたりの整理は可能だと思いますし、改善されることを期待します。 以下、細かい点です。 ・4節の後半の段落、使い方の説明が、どういう場面を想定しているのかがよく判りません。 ・図5 が本文から参照されていないようです。 ・図4や図6 は小さくて内容が判りづらいので、大きくしてください。 ・5節最後の段落、「SSDドライブ」とありますが SSD は Solid State Drive なので「ドライブ」は不要だと思います。