QAZキーボード:タッチパネル端末向け縦型QWERTYキーボード

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■ 総合点
3
■ 確信度
3
■ 査読コメント
背景から先行研究調査,論文全体の正確性や記述の質の観点からは特に問題はないと考えます.著者らが示した基礎的知見は有用性もあると認識します.しかしながら新規性に関して幾つか問題点が見受けられます.

今回はユーザの把持に関する基礎的な実験を行っていますが,すでに把持に関しては幾つかの事例(最近はネットニュースでも取り上げられています)がありますので,そちらを参照し,著者らの知見に応用されると良いかもしれません.
http://www.uxmatters.com/mt/archives/2013/02/how-do-users-really-hold-mobile-devices.php
http://www.gizmodo.jp/2014/09/post_15582.html


著者らの実験ではQAZキーボードの各キーが横長であるのに対し,従来のキーボードトップは縦長となっています.面積を均等にしている分,このようなキートップになったと理解しますが,人間の指先形状から,縦長キートップよりも横長のキートップの方が正確にキーを入力できるということはないでしょうか?つまり,本研究は縦型にキーボードを配置し直すことで結果としてエラー率を低減できたことに変わりはありませんが,その主な理由がレイアウトではなく,キートップのサイズ変更に起因している可能性があるように思います.この点について十分な議論をこんご重ねていくようお願い致します.

まずは,Apple iOS Human Interface GuidelinesやMicrosoft,Human Factors & Ergonomics Society. ANSI/HFES 100-2007 Human Factors Engineering of Computer Workstations.等に正確なタッチの為のガイドラインがすでに存在しています.これらと比較し,縦長キートップにした際に,そもそものポインティング精度が向上している可能性がないか確認する必要があります.その可能性が無いことを自明にした上で,本研究成果の新規性が十分に担保されると考えます.
■ レビューサマリー
実験方法について若干の問題点が指摘されていますが,総じてよく記述できている論文であり,大きな問題はないと考えられます.



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■ 総合点
2
■ 確信度
3
■ 査読コメント
QWERTYキーボードを縦型に配置したキーボードについて詳細に評価実験が行われています。しかしながらこうしたモバイル端末用に関するキーボードの研究は数多くなされており、この研究は以下の2点で改善ができると考えられます。
・QWERTYを90度回転して縦型にしているが、そのことによって全く新規の配列に比較し学習コストを下げることを目標にしているように考えられる。しかしその効果は自明でなく、かつ論文中でも評価がなされていない。
・モバイル端末上のUIはいわば「場所の取り合い」のような状況である。確かに一番操作しやすい領域を全て文字入力に割り当てれば入力効率は向上するだろうが、他のUI要素が表示できなくなってしまう。現実に用いられている製品は全てそうしたトレードオフで悩んでいるのだが、そうした要素に関してもわずかに言及があるだけで特に考慮されていない。

つまり本来4章において考慮すべき要素が多いべきなのにもかかわらず、数行で終わってしまいあとはひたすら実験の記述に終始しています。そのため全体として研究の面白さが伝わらない論文になってしまっています。

こうした点を改善されることを要望します。



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■ 総合点
3
■ 確信度
2
■ 査読コメント
片手親指で小型携帯デバイス上において文字入力するために、まず片手親指で操作できる範囲を予備実験により明確にし、その結果として横に90度回転したQWERTYキーボードの画面上での配置方法を提案した研究です。総じて、良く書けている論文であり、実験についても良く検討した結果実施されています。提案手法については従来のQWERTYキーボードよりも入力速度も速かったことも評価できます。このため、採録が妥当かと思いますが、一方で以下の懸念があります。

- 親指「のみ」による入力方法はこれまでに研究がなされてきていませんが、これは親指「のみ」による文字入力が、ある意味現実的ではないということも考えられるのではないかと思います。できれば、親指「のみ」による文字入力の妥当性についても言及して頂きたいです。

- 評価実験において、対照群として一般的なQWERTYキーボードと比較していますが、この際、実験参加者は従来のQWERTYキーボードにおいても親指だけで文字入力することを求められたのでしょうか。この場合においては従来のQWERTYキーボードよりも提案手法が入力速度が速くても当たり前にみえます。これについても明確に示してください。

- また、評価実験においては、まず始めに提案手法を数日間使用し、その後QWERTYキーボードと比較する実験を行っていました。この場合、提案手法には慣れているが、一方でQWERTYキーボードには慣れていない被験者が含まれることになり(具体的には2名がQWERTYキーボードは使っていなかった)、不公平だと思います。

これらの理由を考えると、採録を薦めるという状況ではないため、中間の評価としたいと思います。