PlaylistPlayer:再生終了時刻と再生方針が指定できる音楽プレイリスト再生インタフェース

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review comment 1
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■ 総合点
4
■ 確信度
2
■ 査読コメント
「再生終了時刻を指定すると、その時刻までに全楽曲が部分再生されてちょうど終了する」というアイディアは大変面白いと思います。
先行研究・技術を利用し、しっかりシステムを作りこまれおり、デモができる状態であることは評価できます。
しかしご提案されているシステムのインタフェースはわかりずらく、設定できるパラメータも多く、著者以外のユーザが実際に"使える"システムなのかは疑問です。
そもそもこれほど多機能である必要があるのか、どれくらいニーズがあるのかは再考察する必要があるように感じます。
■ レビューサマリー
査読者のコメントにできるだけこたえ最終版を投稿していただくことを期待します。



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review comment 2
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■ 総合点
■ 確信度
■ 査読コメント




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review comment 3
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■ 総合点
3
■ 確信度
3
■ 査読コメント
【総評】
 実世界の時間(時刻)と再生時間を関連付けるという着眼点は面白いと感じました。また、多数の論文を引用した上で、信号処理や web マイニングなど様々な手法を組み合わせてひとつのシステムとして実装、デモができるところまで行っていることは評価できると思います。
 一方で、疑問に感じる部分や論旨の展開で気になる部分がいくつかありましたので下記に詳細を記します。

【新規性】
 プレイリストの総再生時間を考慮した研究はないと言及されていますが、
An intelligent music playlist generator based on the time parameter with artificial neural networks, Ning-Han Liu, Expert Systems with Applications
Volume 37, Issue 4, April 2010, Pages 2815–2825 という論文があったり、また、スマホのアプリでも時間指定して再生する MusicTime というアプリケーションが存在します。
 また、サビだけ次々と再生する機能はソニーの音楽プレイヤーにザッピンという機能が入っています。

 信号処理部分に関しても基本的には先行研究のものを利用しているようなので新規性はなく、それを利用したインタフェース構築に新規性があるという認識です。

 ただ、新規性の部分は論文 4.2 節の部分であると明記されており、それだけだと弱いと感じました。

【有用性】
 新規性の部分とも関係しますが、楽曲の部分再生の方法が気になります。プレイリストの実時間よりも再生時間が短い場合には楽曲の一部分を再生しますが、そのときに曲と曲の間がぶつ切りになってしまっていて本当にこの状態のプレイリスト再生を聴きたいと思うだろうかという疑問が残ります。
 例えば、ビートの検出をしているので、それを利用してビートの区切りで次の曲にシームレスに切り替えるとか、クロスフェードをかけるとかの再生の質をどう上げるかに関しての考察があると(未実装だとしても)よいと思います。

 時計として割りきって使うのであればありかもしれませんが、例として出てくるパーティーのユースケースでは秒単位のシビアさは必要ないと思います。それであればできるだけ1曲をまるまる再生して最後の曲(あるいはどれか途中の曲)だけフェードアウトする方がユーザにとっては自然に聴けるのではないでしょうか(例えば前述の MusicTime を使えば本論文の課題をクリアしてしまう)? 

 今後の話になってしまいますが、せっかく動的な再生時間の変更に対応しているので、現在のような絶対時間ありきのインタラクションではなく、ユーザの行動や場の状況に合わせてアダプティブにプレイリストの再生時間が変わるという方向性も検討してみてはいかがでしょうか? かっちり時間が決まっている場合よりも、論文 2.1 節にあるような「眠くなってきたら」や「パーティーが延びたら」のようにもともと時間が決まっていない場面の方が実際には多く、有用性があると思いました。

 Wikipedia の書誌データを利用されているようですが、gracenote developer や The Echo Nest のサービスを利用することで楽曲のジャンルやアーティスト情報などのリッチなメタデータを取得することができます。有用性という意味では Wikipedia よりよいものができると思います。

【正確性】
 客観的な部分に関しては概ね問題無いと思います。

【記述の質】
 課題の提示、それに対するアプローチ、新規性と有用性、実装、(評価)、今後の課題という流れが明確になっていると論旨が伝わりやすいと思います。
 本論文で大事な部分はプレイリストのインタフェースと、予め設定した時間に合わせて(一時停止や楽曲スキップが起こったとしても)動的に対応する部分かと思うのですが、説明が足りないためかよく分からない部分がありました。
 初期状態のプレイリストはいつどのようにして作るのか? 一旦停止するとどのような処理が行われるのか? 1章にある「初めて聴く曲を多く含める」というセレンディピティの演出はどうやって実現しているのか? 類似性はあらかじめ作ったプレイリストの中だけで比較するだけで、手持ちの曲全部を比較しながら編集できるのか? などが知りたいです。
 
【その他】
 誰もが納得するベストなユースケースに絞って、そのユースケースにおけるユーザエクスペリエンスを最高のものにするにはどうしたらよいか? というアプローチで考えてみてもよいのではないでしょうか?
 今の論文は沢山の機能と信号処理が詰まっていてどこがフォーカスポイントなのかが逆にわかりにくくなってしまっている印象を受けました。
 
 例えば、パーティーなら時間が秒単位で決まっている必要はないが要所要所の曲は指定したものを入れて、その間は自動でいい感じに曲を並べ替えて全体の流れを作ってパーティーを盛り上げる。
 例えば、作業用のワークソングを目的とするならば作業の終わりと音楽の終わりを一致させることに集中する。など。

 ところで、Playlist Player という名前はもっとよいものがないでしょうか? 一般的な単語なので(さらに言うと Playlist を Play するのは当たり前ですし)あまり本研究の特徴を表していないように感じました。



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review comment 4
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■ 総合点
4
■ 確信度
3
■ 査読コメント
音楽配信の定額化などにともなって近未来的に音楽鑑賞のスタイルの変化が予想される中、とてもタイムリーな研究テーマであるように感じます。人は限られた時間の中でどのように多くの音樂を聴きたいのか、という哲学的な面を含んだ発展性のある研究テーマでもあり、WISSのような会議で議論するに向いた研究であるように感じます。

ただ論文を読む限り、本研究の最大の課題は「有限時間内に多くの楽曲を適切に少しずつ聴くための部分選曲と入力操作」に尽きるように思います。その課題に対して、なぜそこまで多機能なシステムを作る必要があるのか、というのが私にはよくわかりませんでした。
例えば関係性の強さに応じて曲順を変えるのはそんなに重要なのか、適切な曲順でなければ本研究の課題は満たせないのか、ほとんどそれだけのためにWebマイニングするほどのことなのか、というのが論文中から私には十分伝わってきませんでした。
また同様に、楽曲のありがち度の表示、楽曲間類似度の可視化についても、それをユーザに見せることで音楽鑑賞の何を改善したいのかが十分に議論されておらず、個人的な感想としては何のためにそれを見るのかが不明瞭であるように感じました。

つまり私の感想としては、本研究では単に有限時間内に多くの楽曲を聞くだけでなく、
・曲順に妥当性を持たせること
・曲の特性や類似度をユーザに理解してもらうこと
なども課題に含んでいるにもかかわらず、それらの課題の必要性や方向性が明確になっていないように感じました。
そして私の理解が正しければ、本研究で開発したシステムは、複雑な課題およびかなりの多機能をひとつのシステムに押し込めているような印象が拭えず、本当に使いやすいシステムなのか、やや不安が残りました。
ひょっとしたら私が誤解しているのかもしれませんが、いずれにしても採録された際にはその点を整理した最終原稿を作成されることを期待します。



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review comment 5
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■ 総合点
4
■ 確信度
2
■ 査読コメント
楽曲分析技術を元に動的にプレイリスト内の楽曲の再生部分を再構成するというアイデアは秀逸だと思います。ただ、現状のプロトタイプの画面では操作できる項目が多く、表示内容も過多であるため、どの程度有用性が高いかはこれからの画面設計および操作方法設計にかなり依存するようにも見え、その点が懸念材料もしくは課題であるとも考えられます。
一方で、そもそも楽曲内容を理解しつつ曲全体もしくは楽曲を部分的につなぎあわせて場の雰囲気を作って行く行為は、従来のDJが行っている基本的な活動と言えます。本システムは、本来DJが専門的知識や経験・スキルを元に行っていた行為を半自動的にシステムが支援することで、専門的知識や経験・スキルを持たないユーザでもDJと同様のことができるシステムであるとも考えられます。4章で関連研究と共に、この研究の位置付けについて考察していますが、システムの位置付けという点では、このような従来のDJ活動という観点でも言及しておくほうが、研究の価値をより高められるのではないでしょうか。