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review comment 1
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■ 総合点
3
■ 確信度
2
■ 査読コメント
ポインティングデバイスではなく、画面を動かすというアイディアは面白く、シンプルな方法で良い効果が得られことを被験者実験で示している点で有益な論文と思いました。

しかし、現在引用されている参考文献以外に、タブレット端末の文字列選択に関する先行研究が存在するため、新規性の観点に基づいてこの判定としました。

今回提案された手法は、
画面を動かすという手法には新規性があるのではと思いますが、
文字列選択をしたいという目的に関しては、
タブレット端末において文字列選択をする以下の研究があるのではと思います。

M. Miura and K. Saisho. A Text Selection Technique using Word Snapping. In Proceedings of KES2014, pp. 1644-1651, Sept. 2014.
https://ist.mns.kyutech.ac.jp/miura/papers/kes2014-miura.pdf

三浦, 最所, 清弘:タブレット端末における日本語形態素を考慮した文字列範囲選択手法, Proc. WISS2014
www.wiss.org/WISS2014Proceedings/demo/045.pdf

この研究は日本語を対象としていますが、英語は単語で切り分けられますし、
URLの場合もピリオドなどで切り分けは容易に思います。
異なるのは、
  ・指で見えなくなる点を改善した点、
  ・日本語を形態素以下・英単語を部分的に選択しやすい点、
の2点があるのだと思います。
その場合、
前者によって今回の評価尺度である選択速度にどれくらい差があるのか、
後者はどれだけ実際の運用上に必要になるのか、
が疑問でした。

つまり、同じ問題を解くにあたって、
(特に文字列選択について)
提案手法が従来研究と比較して、どれだけ最適なのかが不明瞭と感じました。

また、
本手法のポイントとなる「画面を動かす」ことにデメリットはないのかが疑問でした。
複数のタブを切り替えながら、コピー&ペーストする場面はよくありそうですが、
タップしてタブを切り替えたりするなど、「タップ操作」が途中で出てくる場面は多そうな気がします。
その一つの解決方法が、例えば、スクロールのための二本指(6章)なのだと思いますが、手法が有効に機能する場面、不利な場面がいつなのかは気になりました。

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その他、評価実験について、コメントです。

比較実験の結果からは、有用性は一部確認できたと思います。
直観的にも有用そうだと思います。

しかし、この実験条件結果(速度が速い)というのが、どういう場面でどう有効なのかが不明瞭と感じました。

まず、
・いつ有効なのか。文章を書いてる時なのか、Webページを閲覧している時なのか。
 この疑問は、言い換えると、上述した「タブの切り替え」など、どういった前提条件があるのかを明記するのはどうか、という提案です。
・12,14,16tそれぞれの文字サイズは、どういう場面で使われているのか。よく選択するであろう文字列とは通常どれくらいサイズなのか。
・文字列選択速度に、特に差が出た12ptという文字サイズがどれくらいのものなのか。かなり小さいのか。
・実験の際は、タブレットを使ったのかスマートフォンを使ったのか。どれくらいの画面サイズなのか。
などが疑問でした。

また、iOSで文字を選択する際に、査読者の場合、
小さくて選択できなかったらピンチ操作で画面を拡大して選択することが多いのですが、
比較実験時、画面の拡大が許されているのかが分かりませんでした。

それと関連して、4.1において「最初の2から4段落を使用する」理由が分からず、また、4.3ではどれくらいの文字数を選択したのか、2行にまたがることがあったのか、などが分かりませんでした。もし2行にまたがる選択があった場合、上記のような拡大では不十分な場合もありそうな気はします。
また、画面の上を選択するのか、下を選択するのかで、提案手法では(指で隠れないように)その逆を一度タップする必要があると理解しています。したがって、本手法が状況によっては認知的な負荷が高くて不利ということはないのか、が疑問でした。
つまり、この実験条件がどういう状況を想定しているのかが不明瞭と思いました。

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以下、その他のコメントです。

・キャレットとは何かを説明していただけませんか。
・「Fat Finger Problem」とは、何かreferenceはないでしょうか。
(上記の論文では以下を引用しているようでした)
K. A. Siek, Y. Rogers, and K. H. Connelly. Fat finger worries: how older and younger users physically interact with PDAs. In INTERACT 2005, pp. 267-280. Springer, 2005.
・2章「一方で文字選択手法としては一工夫が必要である」の「一工夫」とは、具体的に言うと何が不十分なのでしょうか。
・4.1「両言語を鑑みて」とは、具体的に何でしょうか。
・4.1「実験において我々は5 つの文章を用意した.」⇒どういう文なのか。どれくらいの長さでしょうか。何段落?
・"「文字列の部分選択」と「文字列の外側選択」の2 条件を設定する."は、実際の説明と順序が逆と思います。
・4.2.2「現代的なOSに搭載されている賢い選択機能」は不明瞭。何をもって「賢い」としているのでしょうか。それは「賢い」のでしょうか。
・4.3「30 名のボランティアが実験に参加した」⇒被験者?
・表1、ハイライト前後にスペースがあるように見えて不自然と思いました。
・図4,5、縦軸が何か不明です
・図4,5、「*: P < .05, +: p < .10」、pが大文字になっています。
・図4「ここで示した統計的有意差は部分的なもので,全てではない.」は、どう部分的なのでしょうか。
・5.2「誌面の都合上,それぞれのアンケート項目は[4] を参照されたい.」とあるが、「Q5:この操作方法がスマートフォンの操作方法~」など、微妙に異なるように思いますが、省略して問題ないでしょうか。
■ レビューサマリー
査読及びWISSプログラム委員会における議論の結果、採録と判定されました。
より良い論文になるよう、各査読者からの査読コメントに基づき改善いただけますでしょうか。

その他、シンプルな操作であるため、文字列選択以外の波及効果や応用可能性等についても議論があると良いのではと感じました。






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review comment 2
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■ 総合点
4
■ 確信度
2
■ 査読コメント
本論文ではタブレット端末で多く使われているキャレットを指で操作対象に直接移動させるのではなく、
画面をキャレットにあわせるように移動させるという新しいアプローチを採用したインタフェースを提案している。

評価実験からは特にフォントが小さい時にこそ提案手法の有用性が高まることがわかり、
今後、ウォッチ型端末などの小型タッチスクリーンでの操作時に利用するなど応用可能性、汎用性が高く有用な知見と考えられる。
そのため、スマートフォンに標準搭載を目標にする以外に、本手法がどういった可能性があるかについて言及していただきたい。

評価実験について
被験者の利き手や選択する文字のスクリーン内の表示位置(左右上下で4領域など)に関する考察が不十分であるため、詳細について追記を期待する。



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review comment 3
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■ 総合点
3
■ 確信度
3
■ 査読コメント
著者らは指でポインティングするタッチスクリーンインタフェースにおいて、
指が操作位置を隠してしまうという難点を解消するために、
ポイント位置を設定した後に画面全体のほうをドラッグして補正する、
という手法を提案し、実験を行っています。

新規性、実用性ともにある手法だと思いますが、現状での適用範囲は
比較的狭く、まだ今後の展開を含めた価値の評価をしがたい印象を受けます。
それゆえ、総合点は中程度、としました。
本稿では「キャレットの位置の操作」に対象が絞られていますが、
他の日常的な操作と混在した場合にユーザが混乱せずに使用可能か、
なども含め考察していくべきかと思います。

以下のような、記述に不十分な点等ありますので、
採録された場合には修正をしてください。

・2節:「一工夫が必要」とは具体的にどういうことでしょう?
読者が理解できるような記述にしてください。
・4.1節: 「両言語を鑑みて…」のあたりの論理展開が不明です。
提案手法の実験に際して言語選択に強い理由はないと思われ
ますので、省略してもよいのではないでしょうか。
・4.1節: 「最初の 2 から 4段落を使用する」のは何故でしょう?
こちらのほうは理由があれば簡単に触れて下さい。
・図4: 凡例のハッチの区別がつかないので、判るように直して下さい。
・図4, 5: 縦軸の単位が書かれていません。

最後に、誤植です。
・p5左, 8行目: 「交互作業」→「交互作用」
・p6左, 下から5行目: 「操作方法ほうが」→「操作方法のほうが」