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査読者 1

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7

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2

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本論文は仮想現実等を対象として,メニューを一方の手の平の前の空間に表示
し,他方の手で操作する手法を提案しています.さらに本手法を実装して評価
実験を行い,その応用例としてモデリングアプリケーションを示しています.

メニューを一方の手の平の前に表示し,他方の手で操作するという方法で,運
動感覚に基づく使いやすさを実現するという考え方は納得できるものです.研
究の手順も,概ね問題ないと思います.

ただし,論文の主張と合わない部分もあります.1節で,先行研究[6], [7]に
対する本研究の優位性として,多くの項目が表示できることと,視界を覆わな
いことが主張されています.しかし,本論文の実験にこのような観点は含まれ
ていませんし,応用例として示されているモデリングアプリケーションもその
ような利点を示す例にはなっていないと思います.この意味では,4節におけ
る「活用事例」という表現もそぐわないと思います.

特に[6]の手の平の上に表示する手法との比較は,国際会議や論文誌への投稿
の場合には必須になると思います(WISSでは,評価が行われていないことを理
由に減点しないことになっています).本論文が主張する,多くの項目が表示
できるという利点に関しては,手の平に表示する場合でも,メニューが手の平
から多少はみ出たからといって運動感覚による効果を著しく低下させるとは考
えにくいと思います.また,視界を覆わないという利点に関しても,そもそも
メニューによって覆われる部分があるので,([7]の手法で問題になるとして
も)手の平に表示する手法では大きな問題にならないのではないかと思いま
す.この意味では,本論文の主張に従えば,手の平に表示する手法のほうが優
れているという結果が出たとしても不思議ではありません.

3.5節で【設計指針 (1)】などの記述が現れますが,唐突だと思います.「設
計指針」という言葉自体がこれ以前は概要にしか現れていないわけですから,
このように書かれても,すぐには読者は理解できないと思います.丁寧な説明
に修正してください.

文献[7]は出典の書き方が適当でないと思います.Extended Abstractsへの掲
載であることを明示すべきです.

参考文献の形式が統一されていないことも気になりました.最終原稿では修正
してください.

採録判定時のコメント

VR空間等で、メニューを一方の手の平の前の(相対)空間に表示し、他方の手で操作する手法には新規性があり、実装・評価実験もなされている。また、実験結果に基づいたメニュー設計指針の導出・アプリケーション例の実装・コメント収集も行われている。論文の一部に記述内容の不一致が見られる・類似手法との比較が無いなどの問題もあるが、全体的には一本筋の通った研究と見なすことができる。以上の理由から、ロング採録と判断された。

レビューサマリ

十分に高い水準にある研究だと思います.

ただし,「論文の主張と合わない部分もあります」,「図1,3,8が荒く見づら
い」,「利き手は選択操作に使うものという前提があるようだが明記されてい
ない」といった指摘もありました.

論文の改善に役立ててください.

その他コメント

レビューサマリで述べた指摘に加えて,「[6]の手の平の上に表示する手法と
の比較は,国際会議や論文誌への投稿の場合には必須になる」,「似たシステ
ムがあるのであればそれとの比較をするべき」,「てのひらの開閉によるメ
ニュー操作ということ自体が他の手法とどう異なるのか実験や考察をすべ
き」,「左手のてのひらはふだんは常に閉じておかなければならないのでしょ
うか? 疲れる気もしますが大丈夫なのでしょうか?」,「論文の最も弱い部分
はユーザインタフェース提案にある」といった指摘もなされています.

今後の研究に役立ててください.

査読者 2

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査読者 3

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6

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1

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てのひらの開閉によってメニューを出すことはVRメニューを直感的に表示するという意味で良いと思いますが、少し疑問があります。(この分野は素人なので申し訳ないのですが)

* 左手のジェスチャによってメニューを出して右手でメニューを操作するというシステムは他には無かったのでしょうか? 似たシステムがあるのであればそれとの比較をするべきだと思います。

* 提案している縦メニュー/横メニューについて詳細な実験をされていますが、今回実装したシステムについて細かい実験をしてもそれは有用と思えません。実装のよしあしやメニュー構造などによって大きく結果は変わるはずだからです。それよりも、てのひらの開閉によるメニュー操作ということ自体が他の手法とどう異なるのか実験や考察をすべきではないでしょうか。

* 左手のてのひらはふだんは常に閉じておかなければならないのでしょうか? 疲れる気もしますが大丈夫なのでしょうか?

査読者 4

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8

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VR/MR空間上でメニューを表示・選択させるユーザインタフェースの提案および検証を行った研究である。ユーザの片方の手の開閉をトリガにしてその手の隣にメニューを表示し、手に追従して動かす。メニューの選択操作はもう一方の手で行う。ユーザスタディの結果からユーザインタフェース設計上の指針を報告し、アプリケーションを実装してコメントを収集している。

論文は非常によく書けており読みやすい。ユーザインタフェースそのものは驚くようなものではないが既存研究の問題点を解決する実直な提案である。それに対し評価を重ねて実用的な設計指針を導出しており、一本筋の通った研究としてロング採録が妥当であると考える。改善に向けた細かいコメントは以下の通り。

- 図1,3,8が荒く見づらい。
- 利き手は選択操作に使うものという前提があるようだが明記されていない。この前提は妥当に思われるが、早めに明記したほうが親切だと思う。

- 論文の最も弱い部分はユーザインタフェース提案にあるように感じた。提案手法に至るまでに、実装や評価に至らず棄却した手法があるのではないだろうか?あるとすれば、そこに何らかの知見がありそうで、読んでみたい気がする。(評価実験との分量のバランスで掲載が難しいことは分かるが、WISSの聴衆を鑑みるに評価を少し短くしてでも載せる価値はありそう。)
- 例えば、メニューの動きが手に完全に追従する実装となっており、操作にはもう一方の手が必要となっているが、片手だけで操作できるようにならないだろうか?
- 縦メニューにおいて、左右の体幹が回転する方向に手を動かすとメニューが追従するが、上下に手を動かすと選択でき、指の動きで選択を確定できる、など
- 発想としてはCrossing-based interaction (http://www.cs.umd.edu/hcil/crossy/)をVR/MRに実装するとどうなるか?ということである