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査読者 1

総合点

8

確信度

2

コメント

電極を用いた触覚提示に関して,既存の電気刺激と静電吸着を組み合わせる点に新規性があり,それが家庭用のプリンタで制作可能であるという点で再現性も高いです.
有用性に関しても,耐久性のテストや対策,リミテーション等が明確に述べられており,貴重な資料となり得ます.

気になった点:触覚提示をする上でユーザは常に身体に電極が当たっている状態でなければならないという制約があるため,制作者側はそれを考慮したアプリケーションを考えなければならないという複雑さもあると感じました.
提案手法によってデバイスそのものの制作は容易に行えますが,それを用いたコンテンツの制作は多少難しさがあるのではと思います.
今後,提案手法を用いたアプリケーション開発のケーススタディや,アプリケーションのユーザビリティ評価等も行って欲しいです.

採録判定時のコメント

電気刺激と静電吸着を組み合わせた触覚ディスプレイの提案。個々の手法は既存ではあるが、組み合わせによる新たな表現を可能にした点に新規性が、導電インクによる簡便な製作が可能な点に有用性がある。一方で、触覚提示の知覚度合いや精度が客観的に示されておらず、論文としては問題が残る。以上の理由からショート採録と判断された。

レビューサマリ

既存の触覚提示について調査し,複合的な触覚提示はこれまでに検討されてこなかったとした上で,本研究では電気刺激と静電吸着を組み合わせた複合的な触覚ディスプレイを実装していることから,新規性が認められます.
また,複合的な触覚ディスプレイを,簡易な手法で実現できる点で有用性があります.

触覚提示の知覚度合いや精度については,著者の主観だけでなく客観的に判断できるデータを示していただきたいです.

本研究は複合的な触覚ディスプレイの提案であると読み取れますが,簡単な手法で実現できるという特徴についても言及されていることから,ファブリケーション支援の研究にも読み取れます.査読者らが「ユーザが制作できる」という観点でもコメントをしていることからも,現状の論文には制作支援の文脈も含まれているように読者は解釈します.
本研究が目指している方向性が,新たな触覚提示手法の開拓なのか,ファブリケーション支援なのか,どちらを主としているのかをより明確に記載すること,あるいは両者の位置付けを明確に記載することを勧めます.

その他コメント

査読者 2

総合点

8

確信度

2

コメント

「電気刺激」「静電吸着」を同時に実現できる複合触覚ディスプレイを、導電性インクによってプロトタイピングできる手法を提案した研究である。新規性のある手法の提案、実装、評価、アプリケーション例までが報告されており、完成度の高い研究と考えられる。したがって、ロング採録が妥当である。

「6 議論」で「アプリケーションのプロトタイプ開発や、触覚ディスプレイの性能評価の試行錯誤のために特に有効である」と書いてある部分については論文先頭のほうで明らかにしておいたほうがいいように思う。

査読者 3

総合点

5

確信度

2

コメント

【新規性】
技術的な観点からは,新規性はないといえます.既存手法を紙で再現した内容にとどまります.紙で実現する上で,耐久性に関する簡単な実験はされていますが,議論としてはありきたりな内容です.むしろ新規性自体はファブリケーションの文脈で議論スべきかとおもいましたが,5.2で少し紹介された程度で,十分に新規性を担保しているとは言い難いです.ただし論文中で著者らが述べているように複数提示刺激に関しては,興味深く,是非体験してみたいです.

【有用性】
ハコスコに代表されるように,身近な装置,素材でユーザが作り出せるという意味においては,一定の有用性を認めます.ただしあくまで提示箇所が紙に変わったのみであり,アクチュエーティング回路はそのままであるので,根本的な有用性担保のためには,「紙で実現した」だけでは文脈が成立しないです.

【正確性】
二箇所,触覚提示に関して著者の主観のみで述べられている点が非常に残念です.簡単な実験でもよいので,どの程度の触覚提示があるのかを数値で示す必要があります.論文だけですと,ユーザに情報提示するのに十分な触覚提示強度があるのかが不明です.実験方法等は,RekimotoのTraxionや,指先に加速度センサを載せるだけでもある程度のエビデンスを示すことができるかと思います.