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査読者 1

総合点

7

確信度

3

コメント

【新規性】
静電容量及び抵抗器と組み合わせることで,インタラクションを実現したことに関し,高い新規性を認めます.従来の動電素材を用いたパターンによる機能選別等とはことなり,着眼点も良いかと思います.

【有用性】
現時点のアプリケーションと記述から,一般アプリケーションとして高い有用性,魅力があるとはいえませんが,かなり具体的に実例を提示した内容から一定の有用性があることが確認できます.

【正確性】
・MultitouchSupport.framework を利用したと記述されていますが,この中のどのパラメータを使用したのでしょうか?原理的には領域を示すsize変数を使用したとおもいますが,論文からは不明でした.

【その他】
・4.2にて,「抵抗率 10^3 Ohm」とありますが,抵抗率の単位は一般的にはOhm・mですので,確認してください.
・図3の縦軸に単位が記述されていませんが,もしsizeプロパティを利用していればこれはタッチ領域になるので,接地面積に関わる単位になることが想定されます.一度表記に関してご検討ください.

採録判定時のコメント

静電容量方式のトラックパッドに、厚みの異なる絶縁体や外部抵抗を組み合わせて電荷移動をコントロールすることで、トラックパッド上でオブジェクトを介したインタラクションを実現した新規性が高く評価された。一方で、グランドの影響や、利用したframeworkに関する詳細情報が不足しているが、論文の価値を大きく損なうものでは無く、ロング採録と判断された。

レビューサマリ

採録条件ではありませんが,下記項目に関して,カメラレディ提出までに可能な範囲で修正を希望します.
各査読者のコメントを引用しているため,それぞれの査読コメントもよく参照しておいてください.

1.グランドの影響について
 動作環境(電源orバッテリ,使用時のユーザ環境(Ex. ユーザの使用時の風景や姿勢等)

2.キャリブレーションに関する説明追記
 センサ値のキャリブレーションをしているのであれば,追記してください.していないのであれば,その理由を含め追記してください.
 
3.MultitouchSupport.frameworkに関する詳細の追記
 利用したframeworkに関して詳細を追記してください.提供元や,具体的にどのようなプロパティ値を利用して実装を行ったか等を追記し,再現性を担保してください.

4.その他(軽微な修正,誤り)
 各査読者の査読コメントを参照し,技術的な誤り等が指摘されている箇所に関しては修正をしてくださ.その他必要に応じて修正対応をしてください.

その他コメント

メタも手元で実際に実験してみましたが,比較的簡単に機能実現することができました.ソフトウェアと3Dプリンタがあると技術再現が可能な内容ですので,必要に応じて情報公開をし,ユーザ,開発コミュニティを形成されるとインパクトが向上すると感じます.

査読者 2

総合点

7

確信度

2

コメント

3.1の実験で0.3mmのオブジェクトを重ねていますが,たとえば,3mmのオブジェクトと0.3mmのオブジェクト10枚では同じなのか,単純に疑問をもちました.また,重ねても同じインピーダンスだとしても,実際にオブジェクトを手で扱い続けると皮脂など様々な物質が表面に付着するかと思います.その場合の評価もあるとより良いと思います.

3.4で紙の厚みの結果を述べていますが,一般的な紙の厚さと比較して議論してもらうと,その結果が有用であるか明確になると思います.査読者が調べた限りでは一般的なコピー用紙は0.1mm程度であり,誤差より大きいので枚数を判断できるのかなと思っています.

2章まで「タッチサーフェス」と言っていたのに,3章以降は「トラックパッド」と呼んでおり,違和感を感じました.同じものなのか,どちらかが包含しているのか明確にしてください.同じであれば語を統一したほうが良いと思います.

応用例を多く提示しており,それらすべてがアイデアだけでなく実装されている点は評価できると思います.

3章において,流出電流(プロパティ値)とありますが,もう少し具体的に説明していただきたいです.トラックパッドからセンシングした値をプログラムで読み出すことができると読み取りましたが確信がもてませんでした.

関連しそうな研究として,導電体と非導電体をつなげてオブジェクトを作成し,それをスワイプすることでオブジェクトの種類を判定するという研究がありますので,引用されるとよいです.
川畑 裕也,志築 文太郎,高橋 伸
"SwipeMarker: 静電容量方式マルチタッチパネルにおけるスワイプ操作を用いたマーカ"
情報処理学会研究報告, Vol.2016-HCI-171, 情報処理学会, 2017年1月, 7 pages.

査読者 3

総合点

9

確信度

3

コメント

非常に興味深い研究であると感じました.
提案手法では,ノートPCのタッチパッドと人体の間にインピーダンスの異なるオブジェクトを介在させ,タッチパッドの流出電流を違いからオブジェクトの認識を行うことができます.
専用デバイスではなくノートPCのタッチパッドを利用できることや,様々なオブジェクトを用いた多彩なインタラクションが実現できることが,提案手法の有用性を高めています.
十分な実験,様々なインタラクション事例の実装が行われており,論文の主張も明確です.
査読者は本論文を高く評価します.

ただし,何点か気になった部分があります.これらの点を検討し,さらに論文の質を高めていくことを期待しています.
・グランドの影響について
 PCとユーザのカップリングがどの程度なのかは精度に影響すると思われます.例えば,PCはACアダプタに接続して実験しているのか,PCからACアダプタを外しバッテリ駆動としても同様に動くのか,ノートPCに(非操作側の手が)触れている時と触れていない場合とで違いがあるのかなどについての記載があると,より理解が深まると考えます.
・キャリブレーションについて
 グランドの影響とも関係しますが,キャリブレーションが必要なのかどうか,必要な場合どのようなキャリブレーションを行うのか明記することが必要です.
・Z5を変化させることについて
 今回の提案手法は,図1のZ1,Z2,Z5のいずれも変化させているように思えます.本文中ではZ5を変化させているとの表記がありますが,むしろZ1やZ2が変化しているのではないでしょうか.はじめて読んだときに若干戸惑いました.単に表現の問題ですが,誤解されないよう書き直してみてはいかがでしょうか.
・紙とABSの比較
 同じ厚みの紙とABSを比較した場合,誘電率の高いABSの方が容量は大きくなり,インピーダンスは下がるのではないでしょうか.論文中ではABSの方がインピーダンスが高くなっているような記載があります.どのような理由が考えられるのでしょうか.また,厚みを96%や97%の精度で推定可能との記載がありますが,その根拠がよく理解できませんでした.
・タイポほか
 2ページ右カラム「トラックパッド:1050mm×750mm」→105mm×75mmではないでしょうか?
 3ページ左カラム「1000mm×714mmに切断」→100mm×71.4mmではないでしょうか?
 4ページ右カラム「ポテンショメーター」→ポテンショメータ