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査読者 1

総合点

6

確信度

1

採否理由

本論文では、空気圧方式のPouch Motersを液体の熱膨張によって駆動する機構に変更することで、軽量薄型、かつ、強いトルクを実現するLiquid Pouch Motersを提案している。空気圧式に比べ駆動速度は低下するものの、チューブや外部配線を必要としないアクチュエータを実現でき、紙媒体を動かすような様々なインタラクティブなシステムに応用ができる点で有用である。しかし、液体封入式のアクチュエータに関する従来研究はいくつかあり、それらとの差別化要因についての議論が十分ではなく、新規性について本論文から十分に理解することが困難である。

この研究をよくするためのコメント

・参考文献を引用する順番にナンバリングを行っていただければ読者に優しいです。

採録判定時のコメント

本論文では低沸点の液体を用いた軽量薄型、かつ、十分な力を実現するアクチュエータの提案している。応答速度に課題が残るが、体温程度の熱を加えることで可動でき、簡単に量産できる点はインタラクティブコンテンツ制作において有用性が高い。また、様々な作品制作に応用可能であることが実際に示され、技術的な発展性も高い。その一方で、従来の液体封入式のアクチュエータに関する議論が弱く、本論文からは新規性について十分に読み取ることができなかった。以上を踏まえ、関連研究との差分を明確にすることを条件とし、ロング採録が妥当と判断された。

レビューサマリ

査読者からは、本論文について以下の長所と短所が指摘された。

[長所]

-低温で可動させることができ安全、チューブや外部配線を必要としないアクチュエータは有用性が高い。
-ファブリケーションも容易で有用性が高い。
-タッチセンサとアクチュエータの組み合わせは新規性がある。
- 低沸点の液体を用いた液体封入式のアクチュエータは新規性がある。
-論文自体もとても読みやすく構成されている。


[短所]
- 再現性を担保するために、利用している液体やフィルムの入手方法の説明が必要。
-従来の液体封入式アクチュエータとの差異についての議論が弱く、新規性に疑問が残る。
-十分な力を発生できるという特徴を活用したアプリケーション事例がなく、必要性が不明瞭となってしまっている。
-沸点が低いため日常生活でも到達する可能性があり、実用面での課題が残っている。

これらコメントを踏まえ、条件付きロング採録が妥当と判断された。

例えば、以下の「液体封入式のアクチュエータ」や、「熱を使った紙のアクチュエーター」に関連する研究との差異を説明いただきたい。
[1] Acome, E., Mitchell, S. K., Morrissey, T. G., Emmett, M. B., Benjamin,C., King, M., ... & Keplinger, C. (2018). Hydraulically amplifiedself-healing electrostatic actuators with muscle-like performance.Science, 359(6371), 61-65.
[2] Wang, G., Cheng, T., Do, Y., Yang, H., Tao, Y., Gu, J., An, B. and Yao, L. 2018. Printed Paper Actuator: A Low-cost Reversible Actuation and Sensing Method for Shape Changing Interfaces, CHI 2018, ACM.

その他コメント

査読者 2

総合点

8

確信度

3

採否理由

本研究は、密閉されたフィルム内にある液体の気化による体積の膨張によってフィルムを収縮されることで物体の駆動を実現する手法を提案している。本論文では、このアクチュエータの作成方法を紹介し、さらに性能実験、アプリケーションを紹介している。査読者からのコメントを「新規性」「有用性」[再現性]「論文自体記述」の点で以下にまとめる。

[新規性]
液体は、低沸点の液体であるNovec 7000を用いており、それ自体に毒性や可燃性がなく安全と主張している。またフィルムに液体を閉じ込め、それに熱を加えるだけで良いのでファブリケーションも容易である。応答速度に課題が残るが発生させることができる力は十分に大きい。アクチュエータの構成手法としては新規性があり、WISSの聴衆も興味を持つだろう内容となっていて評価したい。

[有用性]
図3Bで量産方法についての記述があるが、この手法において、パウチに入る液体の量はどのように調整されるのだろうか。図や説明からだとその方法が疑問に思った。また提案されている手法でアクチュエータの発生させることができる力は十分にあるものの、提案されているアプリケーションを見ると、力が不要な内容のものが多い。このアクチュエータならではなアプリケーションを見ることができると良い。またこの液体の沸点は低く、その利点を活用しているのが本論文のポイントであるが、一方でその沸点の温度に、日常生活環境でも到達してしまう可能性があり、実用面において課題があると考える。この液体を空輸することは可能なのだろうか。その点で制約があるならば、論文に加えていただきたい。

[再現性]
論文ではパウチの作成方法は詳細に記述されているものの、完成したパウチと熱源の固定はどのように行っているのだろうか、本論文からは読み取ることができなかった。本論文で利用しているフィルムはどこから入手したものか、再現性を担保するためにもそのような情報を掲載されると良い。

[論文自体の記述の質]
「非常に」など学術論文で用いらない記述があり、その点については見直されると良い。

この研究をよくするためのコメント

査読者 3

総合点

8

確信度

1

採否理由

本提案は低沸点の液体を用いたアクチュエータの提案である。体温程度の熱を加えることで可動する。ファブリケーションも簡単で安価であり、34度以上で可動するため、体温程度の熱で可動するため安全性も確保できる。

アクチュエータの仕組み自体、新規性があると考えられる。また、アクチュエータとしての特性も定式化および実験で調査されており、この実験結果は有益であると考える。

論文自体もとても読みやすく構成されている。

アプリケーション事例も本提案アクチュエータを活かしたものになっており、魅力的である。
以上のことから、採録と判断した。

この研究をよくするためのコメント