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査読者 1

総合点

5

確信度

2

採否理由

トラックパッドとタッチペンを用いたいけばな練習支援システムを提案しています.トラックパッドを剣山にタッチペンを花軸に見立て,ディスプレイ内に3次元の花材をリアルタイムにいけることで,いけばなの練習を支援しています.

動画を拝見しましたが着実に実装されている印象をうけました.また,初心者・指導者・経験者を対象としてユーザスタディを実施し,提案システムの有用性を検証している点も評価できます.ぜひともデモを体験したいと思いました.

いけばなには,不要な葉・枝・花を切断したり,葉を破いたり・裂いたり・切ったり,立体を表現するために花軸を曲げたり・折ったりなどさまざまな表現技法があります.また,剣山に花材を刺すときも狙った通りに固定できるわけではなく,花や葉の重みで花材が倒れてくる場合もあります.

提案システムはいけばなにおいても基本的な操作(花材の選択・花軸の切断・花材の挿し直し)しか提供できていません.ユーザスタディを実施していますが,提案システムの使用感のみ調査しており,提案システムが練習支援として十分に機能するのかわかりませんでした.例えば,一般的な方法(リアルな花材を使っていけばなする場合)との比較評価実験を実施し,実験で設定したタスクを効率的に実施できるかなどの評価指標で,提案システムの利点欠点を明らかにできれば,提案システムの有用性や信頼性が高まると思います.

この研究をよくするためのコメント


採録判定時のコメント

トラックパッドとタッチペンを用いたいけばな練習支援システムを提案しています.システムの完成度の高さ,および,ユーザスタディによるシステムの有効性の検証に関して特に高く評価しました.トラックパッドとタッチペンというシンプルなインタフェースの組み合わせでどこまでいけばなの複雑な技法を再現できるのか,学習の効率がどれだけ向上するのかについて議論できればと考えています.

レビューサマリ

トラックパッドとタッチペンを用いたいけばな練習支援システムを提案しています.

全査読者は,システムの完成度の高さ,および,ユーザスタディによるシステムの有効性の検証に関して高く評価しています.一方,提案システムでサポートできていない生け花の技法に関する議論,関連研究引用不足に関する問題があがりました.

以上より,ショート採録が妥当と判断しました.

特にクリティカルな問題点はないため,条件付採録・シェファーディングを前提とした採録ではありませんが,査読コメントを反映して最終原稿を仕上げていただきますと幸いです.また,全査読者が指摘しているように,より突っ込んだ評価実験が実施されると当日の議論が盛り上がると思います.この点についても検討していただきますと幸いです.

その他コメント

査読者 2

総合点

5

確信度

2

採否理由

提案システムは3次元CG空間内でいけばなの練習をするシステムである。
トラックパッドとタッチペンを剣山と花軸に見立てて捜査することで実際のいけばなと近いインタフェースで練習をすることができるものである。

システムの完成度も高く、実際に、提案システムを用いて、初心者、いけばな教室に通う経験者、指導者にそれぞれユーザスタディおよび体験の評価を行っており、本システムの有用性を示すこともできている。

一方、関連研究に関する調査不足が挙げられます。

まず、両手インタフェースに関する研究が不足しています。
Mockup builder: direct 3D modeling on and above the surface in a continuous interaction space (Graphics Interface 2012)
https://dl.acm.org/citation.cfm?id=2305305
では、両手インタフェースを用いて、3次元形状をモデリングしていくものです。

Ken Hinckley, Koji Yatani, Michel Pahud, Nicole Coddington, Jenny Rodenhouse, Andy Wilson, Hrvoje Benko, Bill Buxton:
Pen + touch = new tools. UIST 2010: 27-36
こちらは両手インタフェースの中でも、ペンとタッチの組み合わせの研究です。


また、生け花を3次元空間上にデザインしていく研究には、以下があります。
こちらも関連研究として引用すべきと思います。
Takashi Ijiri, Shigeru Owada, and Takeo Igarashi: Seamless Integration of Initial Sketching and Subsequent Detail Editing in Flower Modeling. Computer Graphics Forum, 25, 3, 617-624. (In Proc. of Eurographics 2006), 2006.
http://takashiijiri.com/ProjSketchPlant/index.html

一方、上記の井尻らのシステムは、スケッチインタフェースを用いて、3次元空間上に生け花をデザインしていくシステムであり、著者の提案するシステムのように実際の生け花のインタフェースに似せたデバイスを用いて、3次元空間上にデザインしていくものは、より初心者がとっつきやすく、実際の生け花の腕も上がると考えるため、有益であると思います。
実際に、経験者や指導者でユーザスタディを行い、意見をいただいていることも評価できます。

生け花に関するこれまでのデバイスを用いた研究では触覚フィードバックはあるものの、提示された画面が2次元であったり、著者自身の過去の研究でもいけばなを対象に研究されているが、そちらも2次元情報での提示となっており、3次元空間内でデバイスを用いていけばなを取り組むという観点は新しいと考える。

論文自体の構成も文章もとても読みやすく、採録に値すると考える。

この研究をよくするためのコメント

初心者のユーザが提案システムで練習をすることで、いけばなの腕が上がることが示せるか。経験者が提案システムを使うことで経験を上げていけるか。といった、もともとの現実世界でのいけばなの腕→提案システムでの練習→その後の現実世界でのいけばなの腕が上がる、といった流れが示せるとより効果的ではないかと思うので、今後の参考にしていただければと思います。

最終原稿を作成するにあたって:
・第1章 最後から6行目。「いけばなように」→「いけばなのように」
・p.3 花の挿入と挿し直し の最後 「類似した動作にであるため」→「類似した動作であるため」

査読者 3

総合点

6

確信度

3

採否理由

システムとして目立った新規性感じられないが、適度に操作を簡略化しターゲットとなる世代に合わせたという点ではよく出来ている。より、着目すべきはこれを使用した際にいけなばの習熟プロセスや速度がどう変化するか、離脱率が増減するか、もしくはいけばなというジャンルのターゲットするか否かという点であり、そこに言及があればロング採録もあり得たと考える。

この研究をよくするためのコメント

細かい事だが、動画中の実行画面の反射が強く何をしているのか見にくいの画残念。画面は別に出すか、光源などを考えて配置した方が良い。また、実際のいけばなの指導や習熟のプロセスについて言及があるとシステムの有用性がより深く議論できるので、一般に知られていない分野を扱う際には留意して欲しい。