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査読者 1

総合点

2

確信度

2

採否理由

システムの作成の報告としてとらえると,有用性,着眼点について興味深い内容であると思います。インタラクティブなシステムの学術的な論文としてみると,貢献については「ある設計のシステムを作成して,使用している」であり,事例報告であると読み取れます。たとえば,自らがSTEM教材を設計・作成している読者を想定してみると,一般に,事例報告だけでは,そこに応用できる知見で,信頼性のある知見で,有用な知見の報告にはならないと考えられます。また,教育の現場で,このシステム(あるいは,その類似のもの)を使おうとするには,使用した効果についての客観的なデータを伴う情報が提示されないと有用な情報とならないと考えられます。

この研究をよくするためのコメント

要件定義のなかで,STEM教材として最重要なものは「論理的な思考能力を養うことができる」だと考えられます。議論を,たとえば,ここに絞ることは有用と思われます。今回の提案で,これを養うために必要な要素がなんであったかなどの観点から分析するようにすれば,研究として有意義なものになる可能性があります。思考能力が養われたということを測定することは困難があるかもしれませんが,迷路のゴール到達可能性の判定の正誤や,判定時間などを使うこともできると思います。また,「ギミック」の全種類が必要なのか,などの分析も,各ギミックが教育上のどの観点から必要と思われたという設計とともに示されれば,STEM教材を作成する上での興味深い情報となると思われます。この分析がなされれば,適切な参考文献とともに,新規性が議論できるようになると思います。

採録判定時のコメント

興味深いシステムであり,論文でどのようなシステムか明確であるため,議論するのが適切と判断しました。ただし,論文の新規性や,有効性を判断する材料が現状の論文にかけているため,ショート採録が相応であると判断しました。ぜひ,デモでも発表して,いただきたいと考えております。査読コメントへの対応を採録条件とはしておりませんが、査読コメントを参考の上、最終原稿をご用意ください

レビューサマリ

新規性について:

迷路のタイプのツールについては新規性があると思えますが,研究上の新規性を正しく判定できません。STEM教育に関する研究は数多くなされていおり、代表的な論文が一つだけ引用さにとどまっています。SIGCSEなどの国際会議で発表されている最先端の研究動向を反映した関連研究の章を構成してほしいとおもいます。また,ビジュアルプログラミング言語の説明で引用すべき文献は数多くあるが、その中でなぜ文献[10]を引用したのか明確でありません。

有効性について:
教育効果についての議論(特にほかのSTEMツールと比較しての議論)が研究としてはまだ初期的なものに留まっています。要件定義のなかで,STEM教材として最重要なものは「論理的な思考能力を養うことができる」だと考えられます。議論を,たとえば,ここに絞ることは有用と思われます。今回の提案で,これを養うために必要な要素がなんであったかなどの観点から分析するようにすれば,研究として有意義なものになるように思います。

その他コメント

システムは興味深いので,その良さを多くのひとに納得してもらうための表現方法を強化していただくことは,とても有用と思います。

査読者 2

総合点

7

確信度

1

採否理由

ブロックパーツを組み合わせることで仕掛けのある転がし迷路を作ることができるシステムについての論文です。著者の説明するように、STEM教育ツールとして同種のものはありませんし、エンターテインメント作品としても新規性があると思われます。実装の完成度も十分高く、実際にSTEMツールとして何度も利用することができていることで有用性も示されています。難点を挙げるとすれば、教育効果についての議論(特にほかのSTEMツールと比較しての議論)が研究としてはまだ初期的なものに留まっている点です。成熟度は高くありませんが、WISSの場で十分時間をかけて議論すべき研究だと考えました。

この研究をよくするためのコメント

少し近いコンセプトの商品として以下のものも引用されるとよいと思います。
MAZE: A DIY VIRTUAL REALITY ADVENTURE
https://www.seedling.com/products/maze-diy-virtual-reality-adventure-game-for-kids-steam-toy

査読者 3

総合点

4

確信度

2

採否理由

# 新規性
本論文は、タンジブルデバイスを用いてインタラクティブな迷路構造をハードウェア的に構成し、オプションとしてソフトウェアによるプログラミングを行えるようにしたものである。こうしたシステムには新規性があるように見える。

ただ、STEM教育に関する研究は数多くなされているが、代表的な論文が一つだけ引用され、他は全てプロダクトであるために、研究上の新規性を正しく判定できない。SIGCSEなどの国際会議で発表されている最先端の研究動向を反映した関連研究の章を構成してほしい。

例えば著者らが挙げているmicro:bitに関してはSIGCSE '17 https://dl.acm.org/citation.cfm?id=3017749 で発表されている。micro:bitの統合開発環境を開発した研究グループはICSE '16でデモ発表 https://ieeexplore.ieee.org/document/7883359/ を行っている。

ビジュアルプログラミング言語の説明で引用すべき文献は数多くあるが、その中でなぜ文献[10]を引用したのか明確でない。せめて Taxonomies of visual programming and program visualization https://doi.org/10.1016/S1045-926X(05)80036-9 のようなサーベイ論文を挙げてほしい。 
同じ章で「オンライン上で簡単に自分のプログラムを共有し, 気に入った他人のプログラムを気軽に改造することも可能である点が大きな特徴である. 」と書いてあるが、これは誤りである。この特徴は、ビジュアルプログラミング言語とは無関係で、多くのWeb-based IDE (WIDE)が備えるものである。

同様の理由で、3.2章の要件定義に説得力がない。著者らは「日本の初等教育におけるプログラミング教育導入の狙いや問題点, ほかの STEM 教材調査の結果から, より幅広いニーズに対応するSTEM教材を開発 するには, 以下の要件定義を満たす必要がある. 」と書いているが、そうした狙いや問題点、調査結果を引用すべきである。(読者はそうした文献を知らないという前提に立つべきであり、そうするとこの要件定義は唐突に感じる。)

# 有用性
しっかり実装されており、有用そうに見える。PCやタブレット端末のない環境下でも教材が利用できるよう配慮されている点もとてもよい。

# 正確性
提案システムを精確に記述している。

テクニカルノーツとしては非常に優れているため、研究論文として見たとき関連「研究」との比較検討が極めて希薄な点が惜しまれる。

# 書き方
読みやすかった。

この研究をよくするためのコメント