論文一覧に戻る

査読者 1

総合点

4

確信度

2

採否理由

本研究で支援する対象や課題を明確に設定し、それに対するアプローチが行われている点は評価できるが、関連研究との差分が明確でないことと、提案システムの設計に関する根拠が曖昧であることから、4:ショート採録に反対しないと判定しました。
・新規性:関連研究は確認されているが、本研究との差分については記述されていないため、新規性が不明瞭です。
・有用性、正確性:評価実験では提案システム(限定機能型デザイン)を使用してスイッチングを行った結果が最もプロのスイッチングに即していることと、提案システム(限定機能型デザイン)が既存手法よりも操作方法が簡単であることが示唆されており、有用性が認められます。ただし、提案システムのデザインに関しては根拠が曖昧な部分が見られます。特に、限定機能型デザインは、多機能型デザインからの改良であると解釈しましたが、これは、事前実験での被験者からの意見に基づいて設計されたのか、著者らの独自の考えに基づいて設計されたのか、何を根拠にして改良を行ったのかがわかりませんでした。
・論文自体の記述の質:図3について、本文中には斜字の箇所があることが記載されているが、図中には斜字は見られませんでした。

この研究をよくするためのコメント

関連研究との差分を明記して本研究の新規性や位置づけを示してほしいです。
提案システムのインタフェースのデザインについて、ボタンの種類や映像の配置がどのように決定されたのか詳しく示されると良いです。

採録判定時のコメント

本研究で支援する対象や課題を明確に設定し、それに基づくシステムの設計がなされ、評価実験からも有用性が示されている点が評価できます。一方で新規性が不明瞭であり、関連研究との関連性や差分を明示する必要があることから、ショート採録(採録条件あり)と判定されました。

レビューサマリ

ポジティブなコメント
・プロのスイッチングの分析に基づいてシステムを開発している点に有用性がある
ネガティブなコメント
・分析の対象と評価実験に用いた学術発表が特定のものに限定されており、一般性や汎用性に疑問が残る
・関連研究と本研究の関連性や差分が明らかにされていない

本研究の有用性については全査読者が評価している一方で、関連研究との関連性や差分は明らかではないことや、新規性よりも実用性が重視され、本研究でやっていることが、世の中でGUIがあるシステムに対して普遍的に行われていることと変わらないことが懸念されます。

よって、以下について対応していただくことを条件に、ショート採録とします。
・本論文で挙げられている関連研究との関連性や差分について加筆してください。
・本論文で挙げられているもの以外に、スイッチングやカメラワークに関連する研究として下記が挙げられます。これらとの関連性・差分についても明示してください。

ダンスの多視点映像スイッチング:
土田 修平,後藤 真孝,深山 覚. 多視点ダンス映像のインタラクティブ編集システム, wiss'17, 2017
http://www.wiss.org/WISS2017Proceedings/oral/08.pdf

ピアノの多視点映像活用:
長谷川麻美, 竹川佳成, 平田圭二, 兼重直文, 多視点演奏映像を活用したピアノ演奏指使い分析ツールの提案, 2017-MUS-116,
No.23, (社) 情報処理学会 音楽情報科学研究会 (August 2017).

松井遼太, 竹川佳成, 平田圭二, 最適な多視点カメラワークを自動生成する遠隔ピアノレッスン支援システムの設計と実装,
2017-MUS-114, No.23, (社) 情報処理学会 音楽情報科学研究会 (February 2017).

その他コメント

査読者 2

総合点

7

確信度

1

採否理由

学術発表にフォーカスして効果的なビデオスイッチングを行うという研究であり、プロによって行われたスイッチングの分析に基づいてシステムを開発し、有用性を評価している。
プロによるスイッチングを詳細に分析してスイッチング条件を明らかにしたこと、実際にシステムを開発し、21名に対して被験者実験を行ったことは高く評価できる。
一方で、分析の対象がIPSJ-ONEの発表に、評価実験がWISS2017の登壇発表の1件
に限定されており、この分析・評価の一般性や汎用性に対しては疑問が残る。
講義映像を対象とした関連研究に言及しているが、プレゼンテーションとしてどのような違いがあるか明らかにされておらず、比較が不十分だと感じた。

この研究をよくするためのコメント

第2章で関連研究について述べているものの、本研究との関連性があまり明らかにされていない。特に講義映像については、スライドや板書が中心でありつつも教員のジェスチャー等も重要であるという点で類似点が多いと思われるが、本研究が想定する学術発表と同じと考えてよいかは疑問がある。聞き手が資料を持って聞くのか、ノート等を取る前提があるのかなど、プレゼンテーションそのものの特性や位置づけをもう少し明らかにして欲しい。
また、ロボットカメラを用いた、スポーツ等のライブ映像に関するビデオスイッチングの研究が行われているようである。
以下のような論文について、関連性や手法の適用の可否が示されるとより有益になると感じた。

Chandra Bhushan Kumar, Anjali Potnis, Shefali Gupta,
"Video conferencing system for distance education",
2015 IEEE UP Section Conference on Electrical Computer and Electronics (UPCON).


@inproceedings{Daemen:2016:SCS:2932206.2933559,
 author = {Daemen, Jeff and Herder, Jens and Koch, Cornelius and Ladwig, Philipp and Wiche, Roman and Wilgen, Kai},
 title = {Semi-Automatic Camera and Switcher Control for Live Broadcast},
 booktitle = {Proceedings of the ACM International Conference on Interactive Experiences for TV and Online Video},
 series = {TVX '16},
 year = {2016},
 isbn = {978-1-4503-4067-0},
 location = {Chicago, Illinois, USA},
 pages = {129--134},
 numpages = {6},
 url = {http://doi.acm.org/10.1145/2932206.2933559},
 doi = {10.1145/2932206.2933559},
 acmid = {2933559},
 publisher = {ACM},
 address = {New York, NY, USA},
 keywords = {actor tracking, automated robotic camera system, automated shot control, film rules, scene analysis, switcher control},
}

査読者 3

総合点

4

確信度

1

採否理由

登壇発表におけるライブ中継の際に、画面を切り替える操作をスムーズに行うためのインタフェース開発について述べられた論文と理解しました。

現状口伝でしか行われていない中継の際のスイッティングについて分析を行い、インタフェースの開発を重ねながら改良を加えたもので地道かつ着実な開発を行っている点が評価に値すると思います。逆に言えば新規性は大きくなく、試作の繰り返しによる製品GUIの改良に止まっているとも言えます。

新規性よりも実用性を重視した研究と考えます。この内容が、WISSの採録として相応かどうかの判断は委員会での審議に委ねたいと思います。

この研究をよくするためのコメント

添付されているビデオが「プロトタイプ1」「プロトタイプ2」となっており、ゆるやかに論文中で記述されている「多機能型デザイン」「機能限定型デザイン」に対応すると想像されます。しかし画面構成は異なっており、このビデオが何を意味するのかは想像するしかありません。論文の内容が堅実なだけにこうした形式の点で抜けがあるのは残念です。