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査読者 1

総合点

8

確信度

2

採否理由

おわん型のディスプレイにより、「俯瞰」、「一人称視点」および「(疑似)3人称視点」を実現しており、アイデアそのものに高い新規性がある。
実装方法に関して十分な検討と説明がされており、再現性と記述の質という点で評価できる。
特に図10をもちいた「おわんの強み」は大変わかりやすく提案手法の有用性を説明できている。

この研究をよくするためのコメント

前方と後方、および側面の状況を同時に見る方法としてバックミラー、サイドミラーのように
既に親しんでいるインタフェースを用いる方法も考えられるが、
ドローンやテレプレゼンスロボットの操作だとそちらの方が操作しやすいということも考えられる。
今後、メリット・デメリットを比較したほうがよい。

なぜ「疑似」3人称視点とあえて「疑似」といっているのか?
おそらく映像が前後反転しており実際には後ろから見ている映像になっていないせいだと思われるが、
スペースに余裕があれば説明があってもよいと思う。

=細かい点
・P2の脚注が本文と重なっています。
・P2 「一般的なパノラマ画像などは正距方位図法で表示される」:正距円筒図法では?

採録判定時のコメント

おわん型のディスプレイという、見る角度を変えることにより「俯瞰」・「一人称視点」・「疑似三人称視点」という三つの視点を提供できるディスプレイの提案には明確な新規性がある。動画からも実装もしっかりと行われていることがわかる。
一方で、バックミラーなど通常のディスプレイ中に複数の映像を重畳配置する手法との比較が論じられておらず、
ドローンなどの操縦というアプリケーションにおける提案手法の優位性が明らかではない。
以上の結果から、「周囲の画像を重畳させる手法との比較を論じる(実験までは求めない)」という条件付きで、
「ロング採録」が妥当と判断する。

レビューサマリ

本論文では、 おわん型のディスプレイという、見る角度を変えることにより「俯瞰」・「一人称視点」・「疑似三人称視点」という三つの視点を提供できるディスプレイを提案している。おわん型により内側と外側を同時に覗くことで「擬似三人称視点」での観察を可能にするという着眼点は興味深く、新しい切り口での提案であると考えられる。
実装方法に関して十分な検討と説明がされており、動画からも実装がしっかりとされていることがわかる。

一方で、バックミラーなど通常のディスプレイ中に複数の映像を重畳配置する手法との比較が論じられていない。
とくに今回の事例で用いられているドローンなどの操縦というアプリケーションにおいては、
提案手法の優位性を示すための議論は必要である。
また、映像が不明瞭、視認性が悪く感じられるといったデメリットもあり今後の改善が期待される。

論旨の理解を妨げる程ではないが、文法上の誤りや体裁の不備・不明瞭な表現が複数あり、修正が必要である。

以上の結果から、「周囲の画像を重畳させる手法との比較を論じる(実験までは求めない)」という条件付きで、
「ロング採録」が妥当と判断する。

その他コメント

・他のアプリケーションへの応用可能性についてWISSの場で議論でききるのではないかと感じます。
・デモ発表で、参加者に体験してもらうことでいろいろな議論が生まれるのではないかと思います。

査読者 2

総合点

5

確信度

2

採否理由

おわん型のディスプレイに映像を提示し、内側と外側を同時に覗くことで「擬似三人称視点」での観察を可能にするという着眼点は興味深く、新しい切り口での提案だと感じました。
動画を見ると、実装もしっかりと行われており十分に操作が可能であることが理解できました。
今回の論文では、特性の考察についてまでにとどまっていますが、実際に使用者による比較評価など、今後の研究の可能性があると考えます。

一方で、特に平面ディスプレイの手法との比較にやや疑問が残りました。

平面ディスプレイにおいて、『「後ろで起きていることに気づかない」問題を解決する.』には、周囲の画像を重畳させる手法が容易に思いつきます。
たとえばレースゲームなどでバックミラーを模したエリアに後方映像を重畳する手法(後方だけでなく、側方映像を重畳することも可能)や、下記で提案されているような平面への全周囲俯瞰画像提示手法
http://www.robot.t.u-tokyo.ac.jp/asamalab/publications/files/834.pdf
などがあるかと思いますが、これらの手法ついては述べられていないため、
今回のアプリケーションにおいて、おわん型ディスプレイの優位性があまり分かりませんでした。

また、動画などを見る限りでは、映像の明瞭度は通常の平面ディスプレイより低くなってしまうに感じます。特にドローンの操作などに関しては、通常時は進行方向など注視すべき画面が明瞭に見えるほうが操作性の向上に寄与するのではないかという疑問はあります。

このあたりを、今後の研究で提案されたアプリケーションでの有用性が明らかになるとよいと思います。

この研究をよくするためのコメント

この研究は、実際に体験してみないと価値が分からない部分があるように感じます。
デモ発表で(ドローンは難しいかと思いますが)、参加者に体験してもらうことでいろいろな議論が生まれるのではないかと思います。ぜひご検討ください。

査読者 3

総合点

7

確信度

2

採否理由

<新規性>
本研究では、全天周映像を見るための半球型全周囲ディスプレイの提案を行っている。提案手法は、見る角度を変えることにより「俯瞰」・「一人称視点」・「疑似三人称視点」という三つの視点を提供することが可能である。通常のディスプレイ中に複数のウインドウを配置して上記3映像を同時に提示することは容易であるが、おわん形状を利用することで3視点の切り替えをシームレスに行うことが出来ることから、提案手法は明確な新規性を有すると考えられる。

<有用性・正確性>
本文中では、考え得る他の提示手法との比較から(5章 議論)、提案手法の利点が明瞭に示されている。そしてその利点を生かし、ドローン等を一人称視点で操作する際の課題(後方を確認できない点)を解決出来るという主張は、合理的なものであると考えられる。一方で、おわんのサイズや映像の解像度・輝度、全体のハードウェア構成等についてはまだ改善の余地があるようにも感じられる。例えば、現状ではおわんが比較的小さく視認性が悪いように見受けられ、このようなデメリットが提案手法の利点を上回った場合、既存手法よりも操作性が低下する可能性もあると感じた。ただしこのような懸念があるとしても、提案手法のコンセプト自体の新規性を阻害するものではない。

<論文自体の質>
論旨の理解を妨げる程ではないが、文法上の誤りや体裁の不備・不明瞭な表現が複数あり、修正が必要である。
pp.2 右下の注釈が本文と被っている
pp.4 4章1行目「本研究では,制作したボウルディスプレイを用いてドローンとテレプゼンスロボットの遠隔操縦を行うディスプレイを開発した.」→アプリケーションを開発した、の誤り?
pp.4 4章12行目「全天周カメラを取り付ける取り組む研究もある」
pp.5 5章「おわんの強み」項の最終行が長すぎて理解しづらい
「さらに,(d) のおわん形状で特筆すべき特徴は,ディスプレイ上部からの視点で見下ろすような観測手法では平面ディスプレイで用いられている撮影地点を中心とした全方位の様子を俯瞰的に提示することができ,ディスプレイボウルの特徴として挙げられる「一人称」「擬似三人称」「俯瞰」の 3 種類の見方が可能となる点である.」

pp.5 5章「おわん底部への 2 次元情報表示」項の最終行が長すぎて理解しづらい
「この時,底面部の映像は側面部となめらかにつながっているため,地図情報と全周囲情報の表示比率をユーザが変化させるような表示が可能になると必要に応じた表示情報の切り替えが容易になると考え,例えば,円形の地図画像をおわんの最下点を中心に同心円状に拡大縮小するように半径を変化させる手法などが考えられる」

この研究をよくするためのコメント

提案手法のコンセプトはとても面白く、新規性があると感じた。ただし、おわんのサイズや映像の解像度・輝度、全体のハードウェア構成等についてはまだ改善の余地があるようにも感じられる。例えば、直径をもっと大きくしたり、形状を完全な球状から歪ませることで視認性を向上させることが出来るのでは?実際に提案手法の有用性を示す上では、既存手法や考え得る他の手法(例えば、タブレット中に3つの視点を別ウインドウで表示する等)との比較が必須だと考えられるので、今後の取り組みに期待する。