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査読者 1

総合点

4

確信度

2

採否理由

東の手法による視線誘導効果を、実物体へのプロジェクションという条件下でも確認するという問題設定は妥当なものと思いますが、実験で顔を固定しているのであれば、つまり parallax による見え方の違いを被験者が確認できない条件で実験するのであれば、それは液晶ディスプレイや印刷物での実験とさほど差がありません。

加えて、実物体表面の模様とプロジェクションされた映像との間に生じるずれについての言及がないのは何故でしょうか。光軸一致型のプロカムシステムといえど、画像を投影すればいくばくかの「ずれ」は不可避と考えられます。あるいは実物体表面の凹凸のためにぼけや歪みが生じるはずです。単純に考えれば、ずれを生じさせない領域では単に白色光が投影され、ずれを生じさせる領域ではずれた映像を投影する、といった形にできたのではないでしょうか。実験が実施されていないのは仕方ないにしても、まったく言及されていないのは議論不足です。

実験結果の分析についてもまだ途上とのことで、ショート採録が妥当と判断します。

この研究をよくするためのコメント

採否理由で述べた点について言及することが望まれます。

立体物への投影が、平面での結果と比べてどのように違いを生むかについて、より深く検討してください。

採録判定時のコメント

選考の結果、本論文は「ショート採録」となりました。査読者からのコメントにその判断根拠および改善点が示されています。

また、デモ展示が期待されています。ぜひ前向きにご検討ください。

レビューサマリ

実物体を対象とした視線誘導のための提案として、新規性が評価されています。まだ中途なものですが、評価実験によりその効果を示しており、有用性についても評価されています。

一方で、提案手法の意義について、主張が明確でないのではないかという指摘が、全員の査読によってそれぞれ異なる視点から、なされています。また評価についてはまだ途上であり、十分ではないとも指摘されています。

ワークショップ論文という性格上、完全性よりはその話題喚起力が評価されています。そのためにも、ぜひデモを見たい、という意見がありました。

その他コメント

特になし

査読者 2

総合点

6

確信度

2

採否理由

本研究では,映像投影に基づいたずらしフィルタによる視線誘導手法を提案しています.従来の視線誘導手法の多くはディスプレイに表示される映像加工によるものでしたが,本手法は実世界における視線誘導を可能にするものであり,実現することで情報探索手法の幅を拡張できると考えます.また,調査を通じ,視線誘導効果がある程度認められること,また現在のリミテーションも明らかにされています.
一方で,視力による効果減衰や映像酔いという課題は,本研究の目的上解決が必須であると考えられますが,本問題を解決するためのアイディアが読み取れません.そのため,本研究は,ショートペーパーとしての採択が妥当であると考えます.

この研究をよくするためのコメント

視力による効果減衰,また映像酔いという課題に対しては,別の実験を行なう必要があると述べられていますが,どのような実験を行ない,ずらしフィルタの適切な値を検証するのかについて,より具体的なアイディアが挙げられていると,ずらしフィルタによって効果的に実世界視線誘導が可能であるかをより強く伝えられると思います.

査読者 3

総合点

6

確信度

3

採否理由

・提案されている内容の新規性(先行研究との差分が十分にあるか)、
新規性はあると思われます.著者らも本文で引用しているように,2次元の画像を加工し,視線誘導を行う研究はありましたが,実世界に拡張した研究はなかったかと思います.
ただ,関連研究では輝度・色相変化,解像度変化(ぼかす)色にじみ,などの手法が提案されている一方で,本研究では「ずらす」という手法をなぜ採用したのか「提案手法」の章で記載があればよりよかったかと思います.おそらくディスプレイではなくプロジェクタで提示する上での制約なのだとは思うのですが.もし採録された場合はプレゼンに盛り込んでください.

・有用性(実際に役に立つか)、正確性(技術的に正しいか)、
Boothらの手法はターゲットを直接拡張する手法で,提案手法はターゲット以外を拡張する手法です.提案手法は,気づかれずに誘導することが利点なのだとは思いますが「なぜ気づかれない方がいいのか」がもう少し書けているとよかったかなと思います.例えば今回の例では「商店での利用」を想定しているとのことでしたが,商品のアピールであれば明確に拡張されていても問題はないと思います(実店舗でのスポット商品用ポップは明示的にアピールしている例ですよね).

明示的に提示する研究との差分について議論があるとよいかと思います.
https://link.springer.com/chapter/10.1007/978-3-540-24646-6_26
https://dl.acm.org/citation.cfm?id=634285
http://daisukeiwai.org/jp/research/IBS.html

また,Boothらの手法と提案手法で,視線誘導の速さや精度,印象にどのような特性があるのか,比較があるとより良かったかと思います.

・論文自体の記述の質(分かりやすく明確に書かれているか)、
問題ありません.

デモで動いているところも実際に見てみたい研究です.

この研究をよくするためのコメント