論文一覧に戻る

査読者 1

総合点

9

確信度

3

採否理由

既存の静電容量型タッチサーフェース上にパッシブで簡易なデバイス(センサ)を装着することで,Force-to-Motion型の入力機能を追加する手法を提案しています.
予備実験においてGND接続状態や初期抵抗値によって流出電流がどのように変化するのかを確認した上で,FSRを用いたプロトタイプやアプリケーションを作成しています.

提案手法は著者らの既存研究[1]を発展させたものであり,GND接続方法が異なっており,そのために生じる課題への対処が考慮されていることなど,十分な差分があります.また関連研究と比較しても高い新規性が認められます.
提案手法の有用性や正確性も十分に高く,論文内では必要な内容がわかりやすく正確に書かれており,ロング採録を強く推すと判定しました.

この研究をよくするためのコメント

かなり質の高い論文です.
ただし,何点か気になる記述がありました.修正することでさらに論文品質が高まると考えます.
具体的には,3ページ目の注釈1
「電流値の減少は,感圧センサの抵抗値が変化しているのではなく,OS の内部的な処理による補正を意味する.」
意図は理解できますが,例えば,「電流値の減少は,OS の内部的な処理による補正の結果であり,抵抗値の変化に応じて電流値が実際に減少しているわけではない.」などとした方が理解しやすいと感じました.
4ページで,FSRフィルムを使用した旨が記述されています.FSRは櫛形電極と(ある程度の抵抗値を有する)導体を組み合わせ,圧力に応じて(櫛形電極と導体の接触)抵抗が変化するセンサ(抵抗)であると査読者は理解していました.導体の抵抗そのものが圧力によって変化するタイプもあるようです.今回の使用したFSRフィルムとはどのようなものなのでしょうか?もしFSRフィルムが,単なる導電パッドであるのであれば,その旨を記載してください.またFSRフィルムそれ自体が感圧センサであるようであれば,櫛形電極を自作した理由を書いてください.

関連研究として,
RubberEdge: reducing clutching by combining position and rate control with elastic feedback, UIST '07があります.
5ページの「本論文で提案したOhmic-Sticker のように,パッシブな部品のみで構成され,タッチサーフェス上でForce-to-Motion 入力を実現する機器はこれまで提案されていない.」の記述を再検討してみてください.

採録判定時のコメント

採録判定会議において,本論文のロング採録が決定されました.本論文は新規性,有用性,正確性,そして記述の質の全ての点において高く評価されています.
WISSでの議論を踏まえて,本研究がさらに発展していくことを期待しています.

レビューサマリ

3人の査読者が,新規性,有用性,正確性,そして記述の質の全ての点において本論文を高く評価しており,WISS2018でのロング採録に同意しています.
採録条件は特にありませんが,査読者からのコメントを参考にしながら,論文の完成度をさらに高めていかれることを期待しています.

その他コメント

すでに市販されている,タッチパネル上に後付けで設置する物理的なスイッチやジョイスティックなどとの違いについて論文内で明示されると,提案手法の新規性や有用性がより理解されやすくなると思われます.

査読者 2

総合点

7

確信度

2

採否理由

・提案されている内容の新規性(先行研究との差分が十分にあるか)
タッチパネル上でのジョイスティック入力を可能とするものは製品でいくつかあり,今回のものは筆者らの先行研究[1]を拡張したものです.ただしハードウエア的に人体を介さない回路を実現するという試みを行っており,中程度の新規性が有ると思われます.

・有用性(実際に役に立つか)、正確性(技術的に正しいか)
グラウンドを人体を介さない事によって安定性を高める点やオートキャリブレーションの抑止などの実用上の細部がよく考えられています.

・論文自体の記述の質(分かりやすく明確に書かれているか)
分かりやすく明確です.

この研究をよくするためのコメント

特にありません.

査読者 3

総合点

8

確信度

3

採否理由

著者らの先行研究の仕組みを応用しつつ、技術的に新しい差分を示していることから、新規性が認められることと、提案デバイスの設計に当たっては、設計条件を明らかにしていることから有用性があると考えられます。一方で提案デバイスの操作性に関する評価はされていません。よって、ロング採録に反対しないと判定しました。
・新規性:著者らの先行研究との差分として、本研究では筐体GNDを利用したことにより流出電流値の安定性を高めたことを示しています。また、他の関連研究との差分として、本研究ではパッシブな部品のみで構成されたデバイスによってForce-to-Motion入力を実現することを示していることから、新規性があると思われます。
・有用性、正確性:従来のスティック型デバイスの問題点(慣れが必要、薄型PCへの組み込みが困難)を挙げ、このうち組み込みの問題を解決しており有用性があると考えられます。また、デバイスを設計するにあたり、GND接続手法による影響や、オートキャリブレーションを抑止するための条件を調査し、その結果に基づいて実装を行っている点に正確性が認められます。提案デバイスによる操作性についての評価実験はされていないため、スティック型デバイスの慣れの問題については解決されるかはわからず、操作性に関する有用性は未知です。
・論文自体の記述の質:論文自体の記述の質は高く、図表も適切に用いられています。

この研究をよくするためのコメント

従来のスティック型ポインティングデバイスが「使いにくい」問題点と、組み込みにくいという問題点を挙げておきながら、本論文で解決しているのは後者の問題点のみです。今後、前者の問題点にも対処していくのか、それとも後者の問題解決に特化した研究として進めて行くのかを記述されることが望ましいです。