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査読者 1

総合点

7

確信度

3

採否理由

・新規性: 
スワイプのタッチ開始位置とタッチ終了位置の両方がターゲット内に収まる場合に,通常のフリック入力とは異なる新規な入力として扱い,タッチ入力語彙を拡張する提案を行っている.

・有用性: 
提案手法は偶然的には発生しにくい動作を取り入れた一方で,従来のフリック入力と大きく異なる操作形態ではなく,シンプルながらも利便性が高いと考えられる.

・正確性・論文自体の記述の質: 
筆者らは提案手法が従来のフリック入力と競合しないことをアイコンサイズのターゲットを対象とした調査により明らかにし,さらにターゲットのサイズによる影響および,ターゲットがベゼルに近接する場合の影響について議論を行っている.
また,論文に不明瞭な点は少なく記述の質は高い.
一方で,筆者らの想定するターゲットはシングルタップも実行可能なコンポーネントであると推察されるが,提案手法とシングルタップとの競合についての議論はなされていない.

この研究をよくするためのコメント

・シングルタップはTouch DownからTouch Upまでに僅かではあるがタッチ座標の差分が発生するため,提案手法とシングルタップとの競合についての議論を加筆することが望ましい.
筆者らの調査結果から提案手法実行時のスワイプ距離は3.5mm程度であり,提案手法とシングルタップがコンフリクトする可能性は低いと考えられるものの,ターゲットサイズが小さい場合や,提案手法実行時にターゲット中心部よりずれた位置からタッチ開始した場合などにはエラー率が高まる可能性がある.

・図2,3,4について,最下段のターゲットのみベゼルとの間隔が異なる理由を記載すべきである.

・「iPhone 6s のホーム画面に表示されるアイコンの サイズ(76.0 mm × 76.0 mm)」
「7.6mm」の間違いではないかと思われる.この箇所以外にもサイズについての記載に同様のミスが散見される.

・提案手法の一回あたりの実行時間を記載することでロングプレスやフォースタッチ等の待機時間を必要とするショートカット入力に対する優位性を示すことができるのではないかと推察される.

・下記条件の入力精度についての検証を今後期待したい.
 ・スワイプ方向の分割数
 ・固定位置のパイメニュー(図6)の条件,タッチ開始位置を中心として展開するパイメニュー(図7)の条件

採録判定時のコメント

スマートフォン等のタッチサーフェスにおいて,スワイプのタッチ開始位置とタッチ終了位置の両方がターゲット内に収まる場合に,通常のフリック入力とは異なる新規な入力として扱い,タッチ入力語彙を拡張する提案を行っている.提案手法は偶然的には発生しにくい動作を取り入れた一方で,従来のフリック入力と大きく異なる操作形態ではなく,シンプルながらも利便性が高いと考えられる.
査読者から指摘のあった,既存のタッチジェスチャと比較した際の有用性及び,提案手法の特徴を活かした応用例について議論したい.

レビューサマリ

いずれの査読者も偶然的には発生しにくい動作による新規な手法を提案した点及び,一部の記述ミスを除けば論文に不明瞭な点は少なく記述の質は高いという点を評価した.

査読者からは下記の指摘がされているものの,いずれもシェファーディングで対応可能だと考えられるため,「8: ロング採録(シェファーディングあり)」と判定した.

シェファーディング対象とする項目は下記3点とする.
1.  シングルタップとの競合可能性について言及
2.  既存のタッチジェスチャと競合しないことのみではなく,そうしたジェスチャと比較した際の提案手法の優位性(有用性)についても追記
3. サイズ表記ミスおよび「1. はじめに」の最終文位置を修正

その他コメント

実験2で右方向の結果のみ両手操作時の成功率が片手時より低くなったという結果について,考察可能な原因等を追記されたい.

査読者 2

総合点

7

確信度

2

採否理由

実験2のスワイプ成功率 片手操作時87.5%、両手操作時96.4%は、ユーザの習熟度に応じて高まると予想されるため、本手法はスマートフォンの操作を拡張する有益な手段であると感じました。
またアプリケーションでも通常2タップは必要な動作が、スワイプのみで実現ができるなどより快適な操作の実現が期待できます。

この研究をよくするためのコメント

「1.はじめに」の部分が途中で切れているので編集が必要です。
本手法で文字入力をした際の操作性(正答率やスピード、疲労度など)の検証を行うと、有用性がより主張できると思いました。

査読者 3

総合点

5

確信度

1

採否理由

実験を通して、ターゲット内スワイプは偶発的に発生しにくいジェスチャである点、ターゲット内スワイプを行った時の成功率を段階的に・定量的に評価した点を高く評価します。

[新規性・有用性]

関連研究としてPalmTouch[7]やTriTap[2]をあげ、「これらの研究においては,タッチを行った部位や手の形状を識別することによって入力語彙の拡張が行われている.一方で,我々はスワイプの終点を利用してフリックとターゲット内スワイプの識別を行うことにより入力語彙の拡張を行う.」と述べていますが、これは単なるジェスチャの違いを述べているに過ぎず、ターゲット内スワイプのジェスチャの優位性がどこにあって、これまで実現が難しかったどういったアプリケーションが可能になるのかがわかりませんでした。そのため、アプリケーション例についても、例えばパイメニューの拡張であれば、PalmTouch[7]の考えを用いて、通常時は図7bの内側の円上のアプリを選択できるようにして、手のひらが画面に触れたときは図7bの外側の円上のアプリを選択できるようにすれば良いのではないかという疑問が残り、提案ジェスチャを活かしたアプリケーションであることの有用性に疑問が残りました。

[正確性・論文の記述の質]

長さの表記について、以下のように複数の箇所で誤りがあるように思います。長さの表記の誤りを除けば、正確性・論文の記述の質は高いと判断しました。
- 4.1節の「アイコンのサイズ(76.0mm✕76.0mm)」
- 4.3節の「スワイプ距離がターゲットの1辺の長さ(76.0mm)以下」
- 5.3節の「スワイプの平均距離は,上方向のスワイプでは37.7mm,下方向では34.4mm,左方向では34.4mm,右方向では33.5mmであった」および「全方向のスワイプの平均距離は35.0mm であり,ターゲットサイズ(76.0 mm)の半分程度の距離であった」
- 7.2節の「推奨最小ターゲットサイズ(56.0mm✕56.0mm)」

[判定]

新規性・有用性の記述が不十分ですが、ターゲット内スワイプのジェスチャの提案自体は新しい点、また実験を通して提案ジェスチャの利用可能性を検証した点を評価し、「5: ショート採録が妥当」と判断しました。

この研究をよくするためのコメント

「採否理由」で述べたように、特に新規性を明確にすることで、論文の説得力が増すと思います。