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査読者 1

総合点

5

確信度

3

採否理由

印刷された電極パターンによるマルチタッチをタッチパネルに対して可能な電子回路モジュールの提案です。


[Positive]
* 人間の多様なタッチ入力を自動的に画面に対して行うことが可能な電子モジュールのであり、マルチタッチを実現できる点は一定の新規性があると感じます。

[Negative]
* 本研究は、全体的にどういったことを目的として取り組んだものなのか読み取ることが難しいものでした。論文の「はじめに」はマルチタッチの仕方が、詳細に記述されているものの、なぜそれを画面に対して自動的に行うデバイスが必要なのか、このデバイスがどんな問題を解決するのかわかりませんでした。そのため、例えば、4.1 予備実験で「一方で、電極間隔が大きいとデバイスが大きくなるため、タッチインタラクションが高確率で生成される最小の電極間隔が最適である」とった表現がありますが、デバイスを小型化する目的が不明となり、このようなデザインになったのかが理解できませんでした。

* 画面に対して情報入力をすることが可能なデバイスの提案はすでに存在します。これらはCHIやUISTなどのトップレベルでの学会で発表されているものであり、引用できていないのは調査不足に感じます。これらと比較して今回の論文のどの部分に貢献があるのか明確にしていただき、それに従った実験系をデザインすると良かったと思います。
Masa Ogata, Yuta Sugiura, Hirotaka Osawa, and Michita Imai. 2013. FlashTouch: data communication through touchscreens. In Proceedings of the SIGCHI Conference on Human Factors in Computing Systems (CHI '13). ACM, New York, NY, USA, 2321-2324. DOI: https://doi.org/10.1145/2470654.2481320
Neng-Hao Yu, Sung-Sheng Tsai, I-Chun Hsiao, Dian-Je Tsai, Meng-Han Lee, Mike Y. Chen, and Yi-Ping Hung. 2011. Clip-on gadgets: expanding multi-touch interaction area with unpowered tactile controls. In Proceedings of the 24th annual ACM symposium on User interface software and technology (UIST '11). ACM, New York, NY, USA, 367-372. DOI: https://doi.org/10.1145/2047196.2047243

* 全体的に論文の構成や文章での表現がとてもわかりにくいです。今回も投稿動画を確認しなければ、はじめこれが画面入力に対するタッチ入力が可能なデバイスと理解することができませんでした。はじめは、マルチタッチを受け付け可能なセンサデバイスの提案だと思いました。論文にタッチディスプレイとデバイスが同時に掲載している図がないのものその原因と考えられます。

この研究をよくするためのコメント


採録判定時のコメント

印刷された複数の電極パターンとリレーによってそれを切り替えることでマルチタッチをタッチパネルに対して実現可能な可能な電子回路モジュールを提案し、実際に実装を行っています。実験においては、この装置によるタッチ入力の切替時間による成功率の差異、またスクロールの移動量などの実験を行っています。スコアは査読者3名とも「5: ショート採録が妥当」で一致し、プログラム委員会でショートでの採択と決まりました。

レビューサマリ

印刷された複数の電極パターンとリレーによってそれを切り替えることでマルチタッチをタッチパネルに対して実現可能な可能な電子回路モジュールを提案し、実際に実装を行っています。実験においては、この装置によるタッチ入力の切替時間による成功率の差異、またスクロールの移動量などの実験を行っています。スコアは査読者3名とも「5: ショート採録が妥当」で一致し、プログラム委員会でショートでの採択と決まりました。

Positive
- 今回開発されたマルチタッチを実現するデバイス自体には一定の新規性は認められます。

Negative
- 論文の構成や表現で不十分のところが多くありました。イントロダクションも個別のマルチタッチの話が多く研究の目的が汲み取りにくかったです。
- タッチディスプレイに対して自動でタッチ入力をする研究は多く存在しますが、重要な関連研究が引用できていませんでした。
- 応用例が文章での表現だけにとどまっており、実例が欲しかったです。
- 利用したデバイスが1台など、実験の設定が限定的でした。

Overall
- WISSではこのデバイスが生成する多様なインタラクションによってどんな実用性の高いアプリケーションが生まれるか議論できると良いと思います。それまでに1つ以上は筆者らによるそういった事例をプロトタイプすることを期待します。

Post PC meeting
本研究は、プログラム委員会において条件付ショート採択となりました。以下の部分を条件とします。

- 論文の構成や表現で不十分のところが多くありました。イントロダクションも個別のマルチタッチの紹介が大部分を占め、研究の目的が汲み取りにくかったです。研究の目的がストレートに伝わるようなイントロダクションに書き換えてください。
- タッチディスプレイに対して自動でタッチ入力をする研究は多く存在しますが、重要な関連研究が引用できていませんでした。引用するようにしてください。
- (これは対応可能でしたら)応用例が文章での表現だけにとどまっていましたので、実例を示してください。

その他コメント

査読者 2

総合点

5

確信度

2

採否理由

ロボットアームなどを用いたタッチパネルベースのGUIテストの自動化には既存の例が多く存在する(「研究をよくするためのコメント」参照)が、本研究はそれを平らなタッチ面を持つミニマルな新規ハードウェアで行おうというものである。設計過程には妥当性が認められ、具体的な報告内容には有用性もある。

一方で、性能試験の対象がLenovo製のタッチ対応ラップトップ一つだけであり、タッチパネルの製造元やOSによる補正の効果がどれくらい性能に影響を与えるのかといった一般的な性能については未知の点も多い。

以上の理由から、ショート採録が妥当と判断した。

この研究をよくするためのコメント

ハードウェアを用いた自動化の例として以下の研究を引用すべきである。

SikuliBot: automating physical interface using images
https://dl.acm.org/citation.cfm?id=2659110

イントロダクションでは、GUIテスト自動化およびそのソフトウェア的なアプローチについて触れ、なぜハードウェアを用いた自動化が必要なのか議論するべきと考える。

査読者 3

総合点

5

確信度

3

採否理由

タッチパネルへのタッチ入力を擬似的に生成する手法として、生成可能な入力の種類に富むもので、デバイスとして優れている。能力についても測定されており、記載内容自体は、ワークショップ論文としては申し分ない。現時点で有用性・応用範囲については不明だが、ワークショップを通じて議論できればよいだろう。

一方、論文としては構成がわかりにくく、個々の文章も読みにくい箇所が多い。これはカメラレディまでに十分訂正可能な範囲と思われるので、ぜひ修正をしていただきたい。

この研究をよくするためのコメント

・タイトルおよび各所で「タッチインタラクションを生成」とあるが、論文に書かれている範囲内では「マルチタッチ入力の生成」とした方がより正確な表現になるのではないか
・「1. はじめに」で生成可能なタッチ入力について細かく説明しているが、その記述は後ろに回して、ここでは論文の主題、採用した手法、計測結果を含んだ論文全体の概要について整理して書かれたい。この論文で報告されている研究の全体像を読者ははやく把握したい
・「マルチタッチにはマルチタッチ可能なタッチパネルが必要であるが,現在市販のタッチパネルの多くがマルチタッチに対応している」のような、冗長で読みにくい表現が多い
・5.1.2 の結果は、表にまとめた方がよいのではないか。現状の文章は大変読みにくく把握が難しい
・5.2 でピンチイン/アウトなどの入力成功率を、Chrome 上の Javascript プログラムで判定とあるが、マルチタッチ入力からピンチイン/アウトなどのイディオムを認識するのは具体的にどのレイヤで行われたのか、詳細がわからないため、結果の有用性が判断できない。5.1 までで使用していた Google Earth とは異なるものか?
・「6. 応用例」とあるが、実際に試したものでないのであれば「応用例」書かず、「応用案」などと書くべきではないか