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査読者 1

総合点

7

確信度

2

採否理由

泡ディスプレイにおける泡生成に電気分解を用いるというアイデアは面白いと思います.

一方,著者らが,「初期プロトタイプ」としているものとの違いはなんでしょうか.ドットの数が増えたことでしょうか?ほとんどの内容がインタラクションの原稿の焼き直しのようになっており,あまり新しい情報を提供できているようには見えませんでした.初期プロトタイプからの差分で勝負するのであれば,技術的に何が異なるのか,また,それが研究において価値を生むのか,といったところの議論をやっていただく必要があるかなと思います.

初期プロトタイプも含めた仕組みの提案ということであれば,より評価は高くなるように思いますが,原稿はそのような位置づけでは書かれていないようです.ただし,WISSのルールとしては,インタラクションのインタラクティブ発表は既発表とみなしませんので,泡ディスプレイの提案自体を含めて考えると,本研究は十分採択されるべき内容であると考えます.

この研究をよくするためのコメント

気になった点は下記の通りです.

- マトリクス回路自体は,一般的なマトリクス制御回路ですので,工夫点だけを述べるなどしてスペースを節約した方が良いのではないでしょうか.

- 液体は飲用できると述べられていますが,炭酸水素ナトリウムとコーヒー,コーンスターチの組合せはいかにも不味そうです(粘り気のある塩味のコーヒー?特に重層の味はすごい不味いですよね).本当に飲用可能という押し方でシステムを説明してよいのでしょうか.応用にあったアンビエントディスプレイとしては面白いと思うのですが,そうするとなぜカップ型にこだわっている(カップ型であることを差分としている)のかがわかりません.

- 表示・非表示の応答時間,という表現がよくわかりませんでした.これは,前者が,非常時状態から表示状態に変わるまでの時間,後者が,表示状態から非表示状態に変わるまでの時間ということであってますでしょうか.泡の明度,というのもよくわかりませんでしたが,これは実験では不透明な液体を使ったということでしょうか?また,表示の性能を考えると,表示されるまで,あるいは非表示になるまでの時間のばらつきが重要になるように思いますが,分散に関しては調査されていないのでしょうか.もし分散が高いとすると,表示を維持したい場合など,維持のための気泡をいつ発生させるかなどが問題になりそうです.

- アンビエントディスプレイやフードプリンティングへの応用が興味深いですが,あくまで泡ディスプレイの研究で副次的にフードプリンティングもできますよ,という話であれば,泡ディスプレイ自体で新規性を主張する必要があると思います.応用がメインなのであれば,それは例えばアンビエントディスプレイやフードプリンティングの既存研究に対して新しいことをやっているのかどうか,という議論が必要になると思います.

採録判定時のコメント

カップ型デバイスの中で,マトリクス状のポイントで電気分解を起こすことで泡ディスプレイとして使うという発想は面白いと思いました.初回判定では,論文として完結した文章とすることを条件とさせて頂きます.

レビューサマリ

カップ型デバイスの中で,マトリクス状のポイントで電気分解を起こすことで泡ディスプレイとして使うという発想は,査読者すべてが共通して面白いと感じています.一方,「飲める」「人体に無害」という表現は危険であり,味の問題や化学物質の残留の問題など,不用意な記述をすべきではないと考えます.

一方,著者らが,「初期プロトタイプ」としているものとの違いが不明瞭です.ほとんどの内容がインタラクションの原稿の焼き直しのようになっており,あまり新しい情報を提供できているようには見えませんでした.初期プロトタイプからの差分で勝負するのであれば,技術的に何が異なるのか,また,それが研究において価値を生むのか,といったところの議論をやっていただく必要があるかなと思います.

初期プロトタイプも含めた仕組みの提案ということであれば,十分採択される内容だと判断されますが,原稿はそのような位置づけでは書かれていないようです.ただし,WISSのルールとしては,インタラクションのインタラクティブ発表は既発表とみなしませんので,泡ディスプレイの提案自体を含めて考えていただくとよさそうです.

したがって,PC委員会での議論の結果,本研究を「条件付き採録」とさせていただき,下記の条件を満たすことを採録の条件とさせて頂きます.

条件: 必要に応じてインタラクションのインタラクティブ発表に相当する内容を加えることで,「本論文のみで」提案から応用まで完結した論文として頂くこと.その際,インタラクションのインタラクティブ発表論文は引用していただくとよいですが,そこからの差分という形ではなく,「本論文は文献[x]に対して加筆・修正を行ったものである」といったように,インタラクティブ発表論文の内容を包含するように書いていただけると良いと思います.例えば(これは従っていただく必要はありませんが),包含するといってもタッパー型→改良でカップ型,という流れではなく,いきなりカップ型のこういうデバイスを提案します,仕組みはこうです,原理はこうです,応用はこうです,とストーリーが流れるように書いていただければいいのかなと思います.

その他コメント

査読者 2

総合点

8

確信度

3

採否理由

本論文はカップに注いだ飲み物上に,電気分解を利用して泡を発生させる泡ディスプレイを提案しています.
泡を用いたディスプレイはこれまでにも提案されてきましたが,カップの中の飲み物上に実現できるという点で新規性もあり,非常に興味深い内容です.
論文中ではデバイスの実装について詳細に述べられており,また安全面についてもよく議論されている点でも高く評価できます.

泡の表示品質を向上させるためにコーンスターチを加えたと述べられていますが,コーンスーチなしの状態とどのような差があるのかが論文中からは読み取れませんでした (応答時間から推測すると,動画のA->Bに切り替わるシーンはコーンスターチなし?).
性能評価では,コーンスターチ無しのほうが応答性に優れていることを示されていますが,泡の品質向上と応答時間を考慮するとどちらが優れているのでしょうか.
また性能評価にて,泡の明度が最大の 80(40)%に達するまでの時間という記載がありますが,これはコーンスターチ有りと無しで違いがあるのでしょうか.

この研究をよくするためのコメント

コーンスターチ有無による品質・明度の違いについて明記

個人的な意見ですが,表示する泡をスマホやPC上で制御できるエディタが欲しいです
また,応用例がどのような場面での活用ができるのかというストーリーがあるとより有用性に説得力が増すと考えられます.
(コーヒーの温度が冷めてきたことを視覚的に表示したり,メッセージを送信しコーヒー上に表示させる,泡吹き消したことを検知したインタラクションなど)

査読者 3

総合点

7

確信度

3

採否理由

飲料の表面にドットマトリクスパターンを泡で表示するカップ型デバイスを提案しています。
電気分解で発生する気体を利用することにより、従来の泡ディスプレイに比べて小型・安価で作成でき、カップ等の日用品に埋め込むことが可能です。飲料水に対し泡で動的に情報提示を行う手法は新しいと思いました。		実装したデバイスを使って、文字やアイコンを視認可能な精度で描画可能であることやその応答速度を確認しており、それらが論文でもわかりやすく記述されています。また、オレンジジュースやカフェオレのような既存の飲料でも表示できることも調査しており、飲める泡ディスプレイとしての可能性も示しています。このように、議論のための十分な知見があるように思いましたので、採録と判断しました。
ただ、「飲める」「人体に無害」という主張について、やや懸念があります。

この研究をよくするためのコメント

息を吹きかけて消してまたすぐに表示できるところが、インタラクションの余地があって面白いと感じました。同じ表示が続くとユーザは飽きてしまったり表現のアラを探しがちになりますので、息を吹きかけることを検出して表示内容の切り替えや表示のON/OFFができると、本手法による泡ならではの体験が作れるのではないかと思いました。

論文中に「塩分を含む飲料は、電気分解を行うと有毒な塩素ガスを発生する」とありますが、牛乳やオレンジジュースにも微量の塩分が含まれるようです(0.05~0.1g/100ml程度)。どの程度の塩分濃度ならば人体に無害か等、指針のようなものがありますと、本提案の適用範囲が広がって良いと思います。また、著者らが安全であると判断した根拠(文献や先行研究、専門家の意見、実験等)の記述を追加されると、より信頼性のある論文になると思います。