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査読者 1

総合点

7

確信度

3

採否理由

新規性:
先行研究でのレンズ造形手法とは異なる手法が提案されており,新規性がある.

有用性,正確性:
提案手法では,先行研究でのレンズ造形手法における課題が解決されている.
また,提案手法では,凸・凹レンズなどのベーシックなレンズに限らず,レンチキュラーや再帰性反射材など様々な種類の光学素子を作ることも可能であり,有用性がある.
ただし,レンズの直径・厚みごとの焦点距離について理論値と実測値に誤差が出たことや,レンズの黄ばみが発生する点に関しては,レンズの用途によっては致命的な問題になりうる.提案システムはどのようなユーザに使用してもらう想定なのか,どれくらいの精度を目標としているのかを示すべきである.

論文自体の記述の質:
わかりやすく明確に書かれている.

この研究をよくするためのコメント

関連研究に対して本研究がどの点で優れているのかが若干わかりにくい.関連研究における課題や,本研究との差分をより具体的に記載することが望ましい.
採否理由にも記載したが,提案手法はどのようなユーザの支援を目指しているのか,どれくらい高精度なレンズの造形を目標としているのかを示してほしい.

採録判定時のコメント

本研究はUVプリンタによるレンズの造形手法を提案している.一般的に普及しているUVプリンタを用いて,凹・凸レンズやカラーレンズ,再帰性反射材など様々なレンズを造形できることから,個人レベルでのものづくりの可能性が広がりそうである.WISSでは,本手法によって出力したレンズが何にどこまで活用できるのか,応用可能性について議論したい.

レビューサマリ

査読の結果,ショート採録(採録条件あり)と判定します.
本研究は,UVプリンタによって光学レンズを造形する手法を提案しています.本手法を用いて様々な応用例を示している点には一定の新規性が認められますが,造形方法自体については既存のUV硬化樹脂を使う方法との違いが不明瞭です.
また,本研究はインタラクション2019にて,同じタイトルで既に発表されています.インタラクション2019での内容に比べ,本稿では新しい応用例が加わっていますが,これを差分とするならば,本稿で新しく追加された内容に焦点を当てるようなタイトルや原稿に変更するべきです.
本研究の有用性について,提案手法によって様々な種類のレンズを造形できる点は評価される一方で,造形したレンズが何に応用できるのか,どれくらいの精度を目指しているのか等が議論されておらず,有用性が不明瞭です.

採録条件は下記です.
条件1
関連研究と本研究との差異や関連性を明確に記載してください.また,査読者が提示した関連研究も引用し,それらとの関連性も示してください.

条件2
インタラクション2019での論文との差異が明確になるように,論文タイトルを変更してください.

条件3
提案手法で造形したレンズが何に応用できるのかを議論し,記載してください.

その他コメント

査読者 2

総合点

5

確信度

2

採否理由

関連研究の「2.1UV 硬化樹脂を用いたレンズ造形」で触れられているように、
UVプリンタは、「UV硬化樹脂を使ったレンズ造形」と仕組み的には変わらない。
(UVプリンタのインクはUV硬化樹脂の一種だから。)
本質的な新規性は、感じられない。

ただ、本論文に書かれている、印刷データ設計ツールを利用し、レンズを容易に
設計、実装が可能になった点、およびUVプリンタの特性を生かした実装部分は
読者にとって利用価値が高いと考えられる。

この研究をよくするためのコメント

光学造形3Dプリンタを用いクリア素材で造形した場合、
同じようにレンズを作成することが可能である。
https://idarts.co.jp/3dp/luxexcel-iso-standards/
https://formlabs.com/blog/lenses-3D-printed-formlabs/
光学造形プリンタの価格が下がってきている現在は、こちらの手法も考えていく必要が
あると思われる。

査読者 3

総合点

3

確信度

3

採否理由

*新規性
本論文では,UVプリンタを用いてレンズを造形する手法を提案しています.
市販のプリンタを活用してレンズを作成するだけでなく,レンチキュラレンズ,再帰性反射材を含めた様々な応用例を示しており,一定の新規性は認められます.

一方で,関連研究の章で,既存のレンズを造形する手法について説明していますが,提案手法との違いが読み取れませんでした.
Polyjet式の 3Dプリンタでレンズを作成している研究も存在します[1][2].
提案手法が優れている(または異なっている)点を明確にすることで,より論文の立ち位置や貢献がわかりやすくなります.
また, 2.3にてUVプリンタを用いた質感表現についての既存研究を述べていますが,本論文との関連性が不明です.

[1]Marios Papas, Thomas Houit, Derek Nowrouzezahrai, Markus Gross, Wojciech Jarosz. The Magic Lens: Refractive Steganography, ACM Transactions on Graphics (TOG), pp.186:1--186:10, (2012).
DOI: https://dl.acm.org/citation.cfm?id=2366205

[2]Karl Willis, Eric Brockmeyer, Scott Hudson, Ivan Poupyrev. Printed optics: 3D printing of embedded optical elements for interactive devices, Proceedings of the 25th annual ACM Symposium on User Interface Software and Technology (UIST’12), pp.589–598, (2012).
DOI: https://dl.acm.org/citation.cfm?id=2380190

一方で,投稿論文のコンテンツの殆どが,インタラクション2019(デモ)で既に発表されたものと同一です.
論文タイトルもインタラクション2019の原稿と同じであり,全く同一の論文として扱われないためにも最低限変更するべきです. 

UVプリンタの透明インクの屈折率をアクリル等の透明樹脂素材に倣って 1.5 と仮定する,と述べていますが,論文の信頼性を確保するため,アクリル及び透明インクの素材(UVレジン?)についてそれぞれ調査し,明記するべきだと思います.(査読者が調べた限りでは,UVレジンとアクリルの屈折率は共に約 1.5程度なので大きな問題はないかと思われますが一応)

*有用性
提案手法によって様々な種類のレンズを作成し,また実験では焦点距離の実測値と理論値の差を示しています.
しかし,これらの情報から,実際にユーザがレンズとして活用する場合にはどのようなものへの応用ができるのかについての議論がなされておらず,有用性が判断できません.
例えば,冒頭で紹介しているカメラや,他にもVRゴーグル,虫眼鏡などのレンズとして実際に活用可能なのでしょうか.

また,実験のデータからどのような知見が得られたのでしょうか.
例えば厚さが大きい・直径が小さい場合に誤差が大きくなると述べられていますが,これは何が影響した結果と言えるのでしょうか.

この研究をよくするためのコメント

*評価実験について
動画や図を見た限りでは,レンズとして機能していることが読み取れますが,提案手法を用いて作成したレンズがどのくらい信頼ののおけるものなのか定量的に評価してみてはいかがでしょうか.
例えば,市販の製品で扱われるようなレンズを評価するための手法を調査し,同様の実験を行うなどが考えられます.

*論文の構成について
インタラクション2019の原稿と比較しながら読ませていただきましたが,細かい表現の違いはあるものの,同じ内容が書かれている箇所が多く見受けられました (タイトルや章立ても含めて).
WISSでは過去に発表された研究も受け入れておりますが,読者により多くの有益な情報を提供するためにも,なるべくこれまでと違う新しい論文を目指すことをお勧めします.