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査読者 1

総合点

5

確信度

3

採否理由

Augmented Realityに関する技術で実世界をプログラミング教育の舞台にする研究は極めて重要であり、実装方針とインタラクション設計には妥当性が認められる。

システム全体としての研究上の貢献がある一方で、個々の要素に関して関連研究との比較が不十分で、新規性を判断することが難しい。

ARとプログラミング教育はどちらもホットトピックなので、システム実装だけでなく、サーベイと研究上の貢献の整理にもっと時間を割いてほしい。

この研究をよくするためのコメント

最近のARに関する関連研究では以下のようなものが挙げられる。

ARcadia: A Rapid Prototyping Platform for Real-time Tangible Interfaces
https://www.microsoft.com/en-us/research/publication/arcadia-a-rapid-prototyping-platform-for-real-time-tangible-interfaces-2/

(プログラミング)教育とARの組み合わせについては以下のような検索ワードで大量に関連研究が出てくる。

https://scholar.google.co.jp/scholar?hl=en&q=cs+education+with+augmented+reality

これらを踏まえた議論をお願いしたい。

採録判定時のコメント

査読者は全員研究のモチベーションと意義について説得的であると好意的に評価しています。
また、実装についても合理的であると判断できます。

一方で、本研究はAugmented Realityとプログラミング教育という、それぞれホットトピックである研究テーマを複合的に扱ったものであり、それぞれの観点で新規性および有用性の評価が必要となります。ところが、どちらの観点でも既存事例との比較検討が乏しく、読者としては、新しいインタラクション設計が入っていそうに見えるが確信が持てない、という非常にもどかしい感想になってしまいます。

上記の理由により、採録条件付きでショート採録が妥当と判断されました。

レビューサマリ

メタコメントにも書いたとおり、モチベーションは明快で、論文のロジックの流れも素直で理解しやすいです。

ただし、論文中に新規性と有用性を判断するための材料が乏しいため、既存事例とどう違うのか、なぜ違う設計が必要なのか、どこが新しいのかを、査読コメントをヒントにして明確に示してください。(採録条件 2. および 3.)

また、プログラム委員会では、論文内容がほぼ一字一句研究会論文と同一であることについて議論がありました。メタレビューに書いたとおり、投稿規定を確認したうえで、必要なアップデートをお願いします。

その他コメント

今後、雑誌論文や国際会議論文としての投稿に際しては、関連研究をよく調べたうえで、本研究固有の貢献を明示することをおすすめします。

査読者 2

総合点

6

確信度

3

採否理由

本提案では机の上でブロックを並べることでプログラミングをして、スマートフォンやタブレットの画面を通じて現実世界に重畳されるという形で実行するプログラミング手法の提案である。

小さい子どもを対象としたプログラミングツールは多く普及しており、また、カードにマーカーをつけておいてARを用いて重畳させるシステムも多く存在している。一方、Scratchをはじめとするブロック型ビジュアルプログラミング言語に代表されるような凹凸のついたカードにARで重畳表現をするものは単純な発想のように思うが、なかったように思う。本提案は、現実世界のカードゲームとARの重畳表現をうまく利用した良い例ともいえる。

一方、実際に子どもに使わせるとなると、年齢にもよるが、幼稚園年長~小学校低学年程度であればひらがな表記にしないと読めないだろうし、小学校高学年になると、こういった物理的なカードよりも、デジタルの中で組み合わせていくタイプのほうがのめり込むのではないか。このような有用性の部分で気になったので、議論があるとより良いと思う。

そういった面では、ユーザスタディが、プログラミングスクールの教員に使用してもらったコメントにとどまっており、実際に使用想定ユーザである、子どもたちに使ってもらっていないのが残念である。ただ、プログラミングスクールの教員であることから実際の子どもたちの使用を想定してコメントをくれているとは判断できる。またデメリットとして挙げられている「カメラを使うことによるプライバシについて」はこのようなARのシステムを使う際には切り離せない課題ではあるものの、個人所有のスマホを使わせないなどの策をとれば問題ないと考える。

4.3の考察に「複数人で話し合いながらプログラミングができる」とあるが、これはとても良いだろう。
一方で、3.3節に児童全員にAndroid OSのスマートフォンやタブレットを配布することを想定しているとあるが、一人ひとりにタブレットを配布するのであれば、ビジュアルプログラミング言語を用いた通常のScratchやScratch Jrといったツールを使っても良いのではないかと思う。なので、一人一台のタブレットを用意できない場において、教育の質が上がるのではないだろうか。

論文自体、丁寧に書かれており、全体的に理解しやすかった。

そのほかのコメントとしては、
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/statistics05a.html
によれば、5月31日に最新のデータが公表されているので可能であれば最新データに更新するのが良いだろう。

この研究をよくするためのコメント

実際に子どもに使ってもらって、色の組み合わせやひらがなの併記などに関する表記の問題、手への持ちやすさなど、も考慮したシステムになるとさらに有用性が高まったシステムになると思います。

査読者 3

総合点

5

確信度

3

採否理由

新規性:
ビジュアルプログラミングにおける表現の自由度と,ロボット制御をする物理プログラミングにおける直感性を組み合わせる手段として,物理的なブロックによるプログラミングとARによる実行結果の確認を取り入れたアイデアは,先行研究との差分があると言える.

有用性,正確性:
ユーザスタディでは,複数の児童が一緒にプログラミングができる点や,教育者が児童のプログラムをすぐに確認できる点などがメリットとして評価されている.この評価からは,マーカブロックとスマートフォンを用いることに有用性があることがわかったが,ARによる実行結果の提示に有用性があるかどうかはわからない.
AR技術を用いることも本研究のメインコントリビューションとなり得るのであれば,その有用性も評価すべきであろう.

論文自体の記述の質:
全体的に読みやすい記述である.
文章中で「図2」と記載すべき箇所が「図3」になっている.

この研究をよくするためのコメント

採否理由にも記載したが,AR技術を用いることの有用性を示していくべきである.Scratchや既存の物理プログラミングと比較し,本システムのユーザビリティ,ユーザの満足度,ユーザが作成したプログラムの質などの調査を行うことを勧める.