査読者1

[メタ] 総合的な採録理由

いずれの査読者も提案手法に一定の有用性があること,実験結果に対する考察や今後の方向性は妥当かつ有益な示唆を含むことを認めています. 一方で,ジョイスティックを用いたフリック入力自体に新規性は乏しく,提案内容自体は比較的シンプルなものであるためショート採録が適切であると判定しました.

[メタ] 査読時のレビューサマリ

ジョイスティックのフリックと押し込みを用いて, 従来の50音キーボード入力と比較して少ない選択操作によるかな文字入力手法を提案し,評価しています.
投稿時の論文では簡単に触れているのみですが, ジョイスティック環境における提案手法の利点・活用可能なシチュエーションについての詳細な議論があると提案手法の有用性が理解されやすくなるかと思います.

採録条件ではありませんが,下記項目についてカメラレディ提出までに可能な範囲でご対応下さい. (詳細は各査読者からの査読コメントを参照)
- 提案手法の利点・活用可能なシチュエーションについての議論
- 母音・子音同時/母音→子音の順のキー入力順を許容可能か否かの議論
- ジョイスティックの角度の連続値利用の有無
- スティック押し込み操作に起因するエラー率についての記載
- 図2: 画面・スティックの対応する操作順の番号の記載
- 図3: 「a) 前面,b) 表面」 -> 「a) 側部,b) 上部」
- 関連研究の追記

[メタ] その他コメント

総合点

5: ショート採録が妥当

確信度

3: 自身の専門分野とマッチしている

採否理由

デュアルジョイスティックのフリックと押し込み操作を利用したかな文字入力手法を提案・評価した論文です. 筆者らも述べているように, ジョイスティックを利用したフリック入力は既に提案されており, 提案手法はフリック領域の分割数を減らす等の改善を行ったものです.

実験を通じて下記を明らかにしており,結果・考察には有用性があると考えられます.
- 先行研究の手法よりも高速に, かつ一般的な50音キーボード入力と同程度の速度で入力可能であること.
- 日常的なフリック入力の経験有無が提案手法の習熟に与えるポジティブな影響.

一方で, ユーザフィードバックからは提案手法には改善の余地があるように思えます(スティック押し込み操作やレイアウトの調整等).
また, スティック押し込み操作に起因するエラー割合はどの程度だったのか気になりました.
全体として, 論文の記述は分かりやすく明確です.

この研究をよくするためのコメント

- フリック操作の実装について, ジョイスティックの角度の連続値は利用しているのかが気になりました. ジョイスティックの傾斜角度に閾値を設ければ, 押し込み操作時に発生する軽度な傾きによる誤操作を除外できるのではないかと思います.
- 図2: 画面・スティックの対応する操作順の番号を記載すると分かりやすいです.
- 図3: 細かいですが, 「a) 前面,b) 表面」を「a) 側部,b) 上部」としたほうが分かりやすいです.
- 下記の論文は関連が深いので参照して下さい.
中村聡史, 塚本昌彦, 西尾章治郎. ウェアラブルコンピューティングのためのダブルマウスを用いた文字入力方式. 情報処理学会研究報告HCI. 1999 Nov 25


査読者2

総合点

7: ロング採録に反対しない

確信度

2: やや専門からは外れる

採否理由

ジョイスティックでのテキスト入力自体に新規性はないが、広く普及しているフリック入力に準ずる方式を採用することで導入しやすくし、それなりの入力速度を達成できている点は有用性の観点から一定の評価ができる。実験計画および実験結果に対する考察も妥当であり、有益な示唆が得られている。
正確性、論文の質も高いと判断される。

この研究をよくするためのコメント

慣れてくると、子音→母音のタイムラグがなくなり、同時入力に近づいたり、場合によっては母音→子音の順にキー入力が受け付けられることもあるのではないかと思った。そのような入力順に対する許容も検討されるとよいかと思った。


査読者3

総合点

6: ショート採録を強く推す

確信度

3: 自身の専門分野とマッチしている

採否理由

2本のスティックを持つゲームパッド向けの日本語フリック入力手法としてJoyFlickが提案されています.右スティックで子音選択,左スティックで母音選択によりフリック入力を実現します.関連研究同様に,母音入力のニュートラルをもって入力とすることにより,少ない入力数での一文字入力を可能としています.

素直なキー配置で使いやすそうです.
今後のチューニングの方向性も明らかにされており,実用面の効果が高いと考えます.

この研究をよくするためのコメント

ジョイスティックを使う環境は,PCやTVの画面を見る環境が多そうです.この用途ですと,既存機種のソフトウェアキーボード入力に対して提案手法のアドバンテージは,例えばHMDにおけるテキスト入力手段ほどには大きくないようにも見えます.画面を占有する面積が小さい,透過表示でも使える,など,ジョイスティック環境におけるこの方式の利点や,あるいは,この入力手段が活きてくるシチュエーションの提示があると,さらに価値が高まる論文と思います.