査読者1

[メタ] 総合的な採録理由

ARを用いてヘアアイロンを用いたヘアアレンジを支援する点に新規性があり、ユーザ実験では手本通りの操作軌道の再現が達成され、一定の成果があった点が評価されました。ただし、髪型の見た目の再現については良い結果ではなく、有用性が限定的であることからショート採録と判定されました。

[メタ] 査読時のレビューサマリ

本論文では、ヘアアイロンの操作軌道をAR表示し手本のヘアアレンジを再現可能にするシステムの提案とユーザ評価についての報告がされています。 本システムはスマートミラー型システムの応用であり、ARを用いてヘアアイロンの操作軌道を提示することでヘアアレンジを支援するという点には新規性があります。 また、実際に美容師のヘアアイロン動作を観察し、それをもとにシステムを設計した点には妥当性があります。 評価実験では、ユーザが手本通りにヘアアイロンの操作軌道を再現できることが実証されましたが、それによって髪型の見た目が手本を再現できたかという点については良い結果ではなく、現時点での有用性はやや限定的です。 ただし、ヘアアイロンの姿勢の再現だけではヘアアレンジの支援として不十分であることが実験によって確認された点や、実験を通して有益な示唆や今後の方向性が示されている点は査読者らによって評価されています。今後のさらなる発展を期待します。 論文の記述に関して一部不明瞭な点があることが査読者から指摘されています。査読者からのコメントをよく確認し、論文への加筆・修正を行った上でカメラレディを提出してください。

[メタ] その他コメント

総合点

3: どちらかと言えば不採録

確信度

2: やや専門からは外れる

採否理由

本論文では、ヘアアイロンの操作軌道をAR表示し手本のヘアアレンジを再現可能にするシステムの提案とユーザ評価について報告されています。 ヘアアイロンを使ったアレンジを支援するという目的自体が新しく、ヘアアイロンならではの操作軌道の提示方法を提案している点に新規性があります。 ただし、評価実験ではヘアアイロンの座標と傾きを手本に近づけるのに有効であることが示された一方で、それによって髪型の再現度は上がっていないことから、提案手法が妥当ではない可能性があると考えます。 提案手法の再検討と評価実験が必要であると考えます。

この研究をよくするためのコメント

論文では、熱を加える時間が手本よりも超過したことや、毛束の位置や毛量の提示がなかったこと等を要因としてあげられていますが、そのほかにも、ヘアアイロンのレバーを挟む位置や向き、髪を巻いている時の顔の向きなども、カラーマーカの色とアイロンの姿勢の合わせやすさに影響するのではないかと考えます。 また、提案システムがAR表示するヘアアイロンの回転や位置が、実際の手本通り正確だと言えるのかどうかも懸念します。手本のヘアアイロンの操作軌道をどのようにシステム上に取り込んだのか、またその正確性についても記載すべきです。


査読者2

総合点

4: どちらかと言えば採録

確信度

2: やや専門からは外れる

採否理由

髪型の手本と対応するヘアアイロンの使い方をARにより指示するシステムを提案した論文である. 実際に美容師のヘアアイロン動作を観察し, 重要と思われる項目を選定し, システム実装に落とし込むプロセスには妥当性があり, ヘアアイロンの回転動作や姿勢を単純化して提示する手法には一定の新規性があると考えられる. 提案システムが髪型の再現に直接はつながらなかったという結果であるが, 実験を通じて有益な示唆や今後の方向性が示されており, 考察や報告内容には有用性がある.記述の質は高く, 正確性は概ね問題ないと判断される.基礎検討としては十分な内容であり, 今後は再現度の詳細な基準などアンケート項目を精査した上での再評価や改善が望まれる.

この研究をよくするためのコメント

5.2節のアンケート調査の実施条件について以下の条件が不明不明なので追記されたい. 回答した4名は前述の実験に参加した4名なのか, 判定に使用した写真は図10の後ろ姿のみなのか, 手本と評価対象の写真をペアで提示し逐次回答したのか, またはすべての写真と手本を同時に閲覧できるようにし回答したのか. 実利用の際は髪質 (太さなど) や毛量の個人差がどの程度仕上がりに影響してくるのか気になった. また, 現在の実装ではヘアアイロンの温度を一定に保っていると思われるが, こうした個人差や操作時間に合わせて動的に温度調整をするような実装ができれば使い勝手が改善されるかもしれないと思った.


査読者3

総合点

4: どちらかと言えば採録

確信度

2: やや専門からは外れる

採否理由

・新規性 ARを用いてヘアアレンジを支援するという研究であり、明確な新規性がある。 ・有用性 小規模な評価実験を行っており、そもそもやりたいことであった「手本通りに操作できるかどうか」という点では一定の成果があったものの、「そもそも出来上がったものが良いか」という点では必ずしもよい結果ではなかった。これらは5.4節によって著者らによってもアドレスされているおり、現時点では有用性はやや限定的であると言える。ただ、将来的にどうすればより良い支援になるかも明記されており、方向性としては有益な研究だと考えられるので、ぜひ継続して研究を推進していただきたい。 ・正確性 使われている技術は妥当なものであり、正確に記載されている。 ・論文自体の記述の質 論文の記述は整理されており、質は問題ない。 以上により、有用性の点で議論はあるものの、どちらかと言えばWISSで議論する価値はあると感じたため「4どちらかといえば採録」が妥当と判断した。

この研究をよくするためのコメント

・図9において、顔とヘアアイロンの位置のズレ、およびヘアアイロンの傾きについて、x,y軸について独立して4つのズレの比較をしているが、ユークリッド距離を用いてx,yのズレを一つの数値で表現することもできるだろうし、何らかの指標を用いれば4つのズレを1つのズレにまとめることも可能であると考えられる。論文中ではとりたてて4つに分解したことで得られる特徴を分析しているようには見えないため、なぜ4つに分けたのかを論じないならば、そのようにズレを統合して分析することも検討されたい。 ・5.2節第一パラグラフの「女性4人」というのは、4.1節で出てきた4人と同一なのか、そしてそうだとすると、自分自身の写真に対して自分で評価しているのかが気になる。プロファイルの詳細を知りたい。

査読者4

総合点

5: 採録

確信度

2: やや専門からは外れる

採否理由

本研究では、スマートミラー型のディスプレイ装置を用いたヘアアイロン操作支援システムが提案され、実験参加者4名による評価実験が行われている。システムの主な設計目標としてユーザがヘアアイロンの三次元的な姿勢を指示通り正しく再現できることを挙げており、比較評価実験によってこの目標が達成できていることを確認している。 著者らが主張する通り、貢献内容として - ヘアアレンジの観察調査をもとにシステム設計指針を提案したこと - 設計指針に則り一つのシステムを設計・実装したこと - 設計目標である操作軌道の再現が達成できていることを実証したこと などが認められる。さらに、スマートミラー型システムの応用コンセプトの一つを実証したことも評価できる。ただし、技術や情報提示手法に関しては大きな新規性は認められない。 本稿で最も興味深いのは、ヘアアイロンの姿勢の再現だけではヘアアレンジの支援として不十分であったと結論付けている点である。机上の空論でなく、実際に実験データに基づいて何が不十分であったかを議論している点に価値がある。 実装したシステムや実験内容だけでなく、今後の課題についても十分WISSで議論する価値のあるものと判断する。したがって採録が妥当だと考える。 その他細かいコメント: - 位置、回転、姿勢という言葉が何を指すのかは自明ではないため、できれば初出の時点で説明があることが望ましい。特に位置 (position) は状態であるのに対し回転 (rotation) は運動を表すことが多く、あまり並列に扱うことは多くないように思われる。また姿勢は回転後の状態を表すのによく用いられる言葉であるので、その点でも初出時に混乱した。 - ユーザの顔位置をもとにガイド提示を移動させるのと同様に、ユーザの顔の大きさをもとにガイド提示を拡大縮小することも可能であると思われるが、なぜそうしなかったのかが気になった。 - 時間を提示する機能があるにも関わらず超過時間が発生してしまっていることについて、何が起きているのかが分かりにくく感じた。時間提示機能が残り時間をカウントし始める前に熱を加えた状態で数十秒かかっているということだと想像した。

この研究をよくするためのコメント

提案システムは日常的に使用し続けることが想定されていると理解したが、その場合はシステムが提示した情報にしたがってヘアアイロンを操作することにもユーザは習熟していくものと思われる。そのような学習効果があったときの有効性も検討されるとなお良い。 採択された場合、WISSでの発表では、ヘアアレンジ支援のために何が不十分であったのか、どのようにしたらそれを達成できるのかに関する議論を詳述して欲しい。