査読者1

[メタ] 総合的な採録理由

本論文は,能動的音響計測をスタイラスに適用し,スタイラスの把持状態を識別する手法を提案しています.把持状態認識結果に応じてタブレットの機能(鉛筆,筆,消しゴムなど)を切り替えることを狙っています.能動的音響計測を用いて物体の種類や形状,把持状態を認識する研究はこれまでにもありますが,スタイラスに適用し,スタイラスを3Dプリントして充填率を変えるという着眼点には一定の新規性があると判断しました.また,評価実験からも実用的な精度が得られ,深い考察もなされていると判断しました.

[メタ] 査読時のレビューサマリ

本論文は,能動的音響計測をスタイラスに適用し,スタイラスの把持状態を識別する手法を提案しています.把持状態認識結果に応じてタブレットの機能(鉛筆,筆,消しゴムなど)を切り替えることを狙っています. 能動的音響計測をスタイラスに適用し,スタイラスを3Dプリントして充填率を変えるという着眼点には一定の新規性があると判断しました.また,評価実験からも実用的な精度が得られ,深い考察もなされていると判断しました. 一方で以下の点が指摘されていますので,カメラレディや発表時には明確にしていただくことを期待します.(採録の条件ではありません) ・市販のスタイラスではなく,3Dプリントする意義について明確に,可能であれば性能比較をして示す必要があります. ・実装したスタイラスには上下からケーブルが出ていますので,なぜこのようなデザインにしたのかなど,率直に疑問に思う点ですので,説明が必要です. ・評価実験では実際に描いていないように読み取れましたが,書いている最中に誤認識することはないのか(そもそも認識しないのか)等,実際に利用時のシステムの振る舞いと,把持して書いていないときの実験だけで十分なのか書いてるときの評価も必要なのか,を明らかにする必要があります. ・握り方とタブレットの振る舞いの関連付けについての妥当性について詳しく説明が必要だと思います. このほかにもコメントを頂いていますので各査読者の査読結果をご確認ください.

[メタ] その他コメント

総合点

3: どちらかと言えば不採録

確信度

3: 自身の専門分野とマッチしている

採否理由

能動的音響認識でスタイラスの把持状態を認識し,把持状態に応じて描画ツールを切り替える手法を提案している.能動的音響認識による状態や物体の認識手法はこれまでに数多く提案されているが,本研究もその一つという位置づけであり,一定の新規性はあると思うが,まったく新しいというところまでではない. 認識した結果の利用も本研究の提案に含まれているが,そもそも把持状態と描画ツールの組み合わせが開発者の都合で成されることで,操作性が低下するのではないかという有用性の疑問がある.具体的には,1本掛けで鉛筆,2本掛けで筆とあるが,実際に鉛筆を1本掛け,筆を2本掛けで持つわけではないので,筆で書きたいからわざわざ2本掛けで持たないといけないのはユーザからすると理解できないのではないか. 実験方式について,被験者はスタイラスを持っただけで,実際には描いていないため,描くときにペン先がタッチパネルに触れたり,力が入って指とスタイラスの接触面積(接触状態)が変化すると得られる信号も異なるではないかと考えるので,実際に描いたときのデータで評価すべきである.この点について,5.1節で充填率が低い(やわらかい)素材の方が認識精度が良いという結果だが,やわらかいと力を入れることによる変化も大きくなるため,必ずしもそう言えるのか疑問である.

この研究をよくするためのコメント


査読者2

総合点

4: どちらかと言えば採録

確信度

3: 自身の専門分野とマッチしている

採否理由

本研究はアクティブ音響センシング技術を用いることで,3Dプリンタにより作成したスタイラスの把持状態を推測する手法を提案しています.全体的に読みやすく,論文としての質は高いです. 一方で,関連研究の比較に関する主張が弱く,インタラクション的な新規性・有用性は判断できませんでした.また 2.2節にて記載されている「既存のスタイラスのフォームファクタ」が何を意味するのかが分かりませんでした.「既存手法では,センサを決められた場所へ取り付ける必要か゛あり,既存のスタイラスのフォームファクタを維持することか゛難しい」と主張されていますが,提案手法でも同様にスタイラス上下に有線のケーブルを接続する必要があります.こうした有線ケーブルはユーザビリティにも大きな影響を与えることが予想されます.関連研究[14]のようにユーザが腕輪型の EMGセンサを装着し,スタイラス事態にセンサ等を必要としない手法との比較は本文中ではされておらず,どのような優位性があるのかが分かりませんでした.

この研究をよくするためのコメント

2.2節では主にアクティブスタイラスを用いた手法との比較を行っていますが,追加のセンサ類を使用せずにパッシブスタイラスに対して機能を割り当てる手法*1も既に提案されています. 提案手法でも対象としている,静電容量方式のタッチディスプレイ上で使用可能なパッシブタイプのスタイラスを用いた手法との比較も追記すべきかと思われます. *1 Kaori Ikematsu and Itiro Siio. 2018. Ohmic-Touch: Extending Touch Interaction by Indirect Touch through Resistive Objects. In Proceedings of the 2018 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems (CHI '18). Association for Computing Machinery, New York, NY, USA, Paper 521, 1?8. DOI:https://doi.org/10.1145/3173574.3174095


査読者3

総合点

4: どちらかと言えば採録

確信度

3: 自身の専門分野とマッチしている

採否理由

能動的音響計測と機械学習により,3Dプリントしたスタイラスペンの把持状態を識別する方法を提案・評価した論文です. 物体の把持状態や触れ方を識別する例はTouch & Activate [15]で報告されており, 本論文の新規性はスタイラスペンの持ち方・インタラクションにフォーカスした点にあると考えられます. スタイラスの内部構造が把持状態の識別精度に影響することは理解できますが, ここからペンを3Dプリントするという導入部の論旨展開が理解できず, 手法の妥当性に疑問が残りました.市販スタイラスペンに能動的音響計測を適用した場合,把持状態の識別は困難なのでしょうか. 充填率の影響について, 評価結果に対する考察は妥当であり,有益な示唆・実用的な識別精度が得られています. ユーザの識別実験については被験者数が少ない (n=4) ため,提案手法によるユーザ識別の可能性を示唆するにとどまっています. 全体として,論文の正確性・記述の質は高いといえます.

この研究をよくするためのコメント

以下は論文中の気になった点です.これらの観点から考察や補足があればより充実した論文になると思われます. - 市販のパッシブなスタイラスペンに能動的音響計測を適用した場合,把持状態の識別は可能なのか, ペンの3Dプリントの必要性について.一定以上の体積や特定の内部構造が必須であるなら, その内容を3Dプリントの話の前に説明すると分かりやすいかと思います. - ペンの充填率以外に,太さ等の形状や, 筆記動作時のペンと手の接触状態が変化しうる要素 (把持力や筆圧など) は識別精度に影響するかについて. - アプリケーションで使用されている把持状態は6姿勢中3種類のみですが,残り3種類の状態はどういったインタラクションに活用可能なのかについて. - 筆者らの主張では「スタイラスのフォームファクタを維 持したままスタイラスの把持状態の識別を行う」とありますが,前後にケーブルが取り付けられたペンは既存のスタイラスのフォームファクタを維持していると言えるのでしょうか. パッシブなスタイラスペンで複数の機能を提供する例が以下の論文で報告されています. 必要に応じ参照してください. - Itsy-Bits: Fabrication and Recognition of 3D-Printed Tangibles with Small Footprints on Capacitive Touchscreens (CHI'21) - Ohmic-Touch: Extending Touch Interaction by Indirect Touch through Resistive Objects (CHI'18)

査読者4

総合点

4: どちらかと言えば採録

確信度

2: やや専門からは外れる

採否理由

スタイラスに音響振動子とマイクを取り付け、チャープ信号を与えた際の周波数特性から、把持状態を推定する研究です。 スタイラスの充填率(3Dプリンタで作成しているので、積層の際の充填率を指す)によって把持状態の推定精度が変化すること、および個人間の認証にも利用できることを示しています。 研究としては非常に素直な内容で、一般的な有用性のある内容だと思いました。一方でスマートフォンの把持状態などを推定する研究は非常に多いことから、スタイラスに特化したというところで新規性をどの程度と考えるかは少し迷う内容です。 ハードウエア構成のところで一点疑問があります。センシングする信号は18kHzから22kHzまでの信号であるのに対して、サンプリング周波数は48kHzとしています。このときエリアシングを防ぐためには少なくとも24kHzのローパスフィルタをかける必要がありますが、これはセンシングする周波数帯域にかなり近く、一般的にはかなり難しいのではないかと思います。適切なローパスフィルタをかけているか、またサンプリング周波数はこの倍程度にしたほうが良いのではないか、という点について記述していただくのが良いと思います。

この研究をよくするためのコメント