査読者1

[メタ] 総合的な採録理由

本論文では、複数の圧力センサを配置したスマホリングを用いたスマートフォン背面でのジェスチャ入力手法を提案しています。 提案手法自体の技術的な新規性は低いですが、設計したデバイスに合わせたジェスチャセットを検討し、性能評価により高い認識精度を示していることから有用性が認められます。査読者全員から WISSの登壇発表として採録すべきと判定しました。

[メタ] その他コメント

総合点

5: 採録

確信度

3: 自身の専門分野とマッチしている

採否理由

本論文は、複数の圧力センサを配置したスマホリングを用いたスマートフォン背面でのジェスチャ入力手法を提案したものです。ユーザ定義型ジェスチャのアプローチに基づいた調査を行い、その結果選定した 24種類のジェスチャを、開発したスマホリング型デバイス上で実現しています。また機械学習により、日常動作とジェスチャ入力の識別、および各ジェスチャの識別(被験者内学習)にて 90%以上の精度を実現しており、有用性が認められます。 スマートフォンリングを用いた背面入力自体は既存研究でも検討されており[i](本論文で引用されていない)、アプローチ自体や技術的な新規性は低いです。一方で本論文では、ユーザ定義型ジェスチャのアプローチに基づいた調査を行い、その結果選定したスマホリング上での使用が想定される 24種類のジェスチャを実現している点については既存研究でも行われておらず、価値のある報告となっています。 基本的には採択とするのが妥当であると考えられるが、論文の記述に正確性に欠ける箇所が散見されました。 内容は概ね理解できる、一部情報が抜けている、図が分かりづらいなどの理由から、動画を照らし合わせながらでないと読み取りが困難であるため、論文の修正は必須です。 (詳細は以下に記述)
(i): Amit Yadav, Alexander Keith Eady, Sara Nabil, and Audrey Girouard. 2019. JoyHolder: Tangible Back-of-Device Mobile Interactions. In Proceedings of the 2019 ACM International Conference on Interactive Surfaces and Spaces (ISS '19). Association for Computing Machinery, New York, NY, USA, 343--346. https://doi.org/10.1145/3343055.3360748

この研究をよくするためのコメント

・図2 (a)が中指、(b)が人差し指を通したジェスチャとなっていますが、図中では (a)が人差し指、(b)が中指をリングに通しています。
・図2のジェスチャイラスト右下にある数字が何を示しているのかが分かりづらいので、説明を加筆すべきです。おそらくジェスチャの種類ごとに振られたIDであると理解しているが、(b)の上段左から 2番目、および(b)の中段左から 3番目は同じ 13であるがイラストの内容が異なり、混乱を招く恐れがあります(中段 13(誤)→15(正)?)。
・図2のジェスチャイラストに説明がなく、それぞれがどのような動作であるか論文中からは読み取ることができません。例えば、18、14、23はすべて手に対して右向きの矢印が書かれているだけで違いが分かりません。またジェスチャ23のようにリングに入れた中指ではなく、その上の人差し指を動かすジェスチャについては本文中に触れられておらず、アニメーションになっている動画を見ていない読者には伝わりません。読者が論文だけを読んですべての内容を理解できるようにする必要があります。(なお18と19がどのようなジェスチャであるか、および 18、19の違いは動画を見ても理解できませんでした)。また、ジェスチャイラスト上部のキャプションは、各ジェスチャに割り当てた機能であることを明示するべきです。例えば「左」「右へ移動」といった表記は一見、指を動かす方向にも読み取れてしまいます。
・式 (1)はプログラムの処理として、Xijを上書きしているという理解なのですが、数式として記載するのは不適切かと思われます。
・2.3節「ユーザ定義型ジェスチャはこれまでに、」3.3節「競合したタスクのいずれも使用する場合の限り.」などの誤植があります。
・図1 キャプションが fig.teaserとなっています。
・図4 濃淡画像化の画像が抜けています。
・本文中の句読点が統一されていない箇所があります。
・細かい指摘ですが、図中で使われている画像をすべて Androidのものに統一すべきかと思いました。デバイスを把持している写真以外、すべて(おそらく) iPhone機種の枠に画面内コンテンツをはめ込んでいますが、図1は iOSであったり、図7(d) (bの間違い?)は Android OSであったりと異なるものになっています。


査読者2

総合点

5: 採録

確信度

3: 自身の専門分野とマッチしている

採否理由

スマホ背面でのジェスチャ入力を可能とするスマホリング型のデバイスを提案した論文である. 類似したBack-of-Device Interactionは多数提案されており, 中にはスマホリングのようなフォームファクタの入力機器も発表されている. そのため, 本研究に高い新規性は認められない. 一方で, リング型デバイスに合わせたジェスチャセットを検討し, その性能を検証した点には有用性がある. また, ジェスチャの設計方法や論旨は妥当である. 疑問点や問題点がいくつかあるものの (詳細は以下) , 採択方向で議論すべきと判断した.


査読者3

総合点

5: 採録

確信度

2: やや専門からは外れる

採否理由

スマホリングを使うことで、スマートフォンの安定した把持を実現しつつジェスチャ入力を行い、参加者内学習で高い認識精度を達成しています。著者らが述べる通り、ジェスチャ分類をリモートブレイン型で実現しているため実用に供するには課題がありますが、会議で議論するのに有益な成果であると思います。 人差し指と中指で12種類ずつの24種類を分類していますが、参加者内学習での分類が実用的であるとすれば、いずれか一方の指に限定することが妥当だと思います。分類のラベル数を半分にしたときにどの程度の分類精度になるかは気になりました。 3.3節「可能性がある場合の限り」はtypoだと思いますので、修正してください。 また、「12種類のジェスチャ x 2種類の指の通し方」という表現が4.2節と5.1節にありますが、"x" の表記に揺らぎがあるので統一してください。

この研究をよくするためのコメント

査読者4

総合点

6: 採録を強く推す

確信度

1: 専門外である

採否理由

著者らは、スマートフォンの操作拡張のために、スマホリング型デバイスを開発し、ジェスチャー入力による操作の拡張手法を提案している。 スマホリング型デバイスは新しい手法であること、提案デバイスにおいて定義したジェスチャーの識別精度も高いことを評価実験において示しており、論文としての完成度も高く評価できる。 本論文はWISSでの発表にて、さらなる議論ができる見込みがあると考えられる。

この研究をよくするためのコメント

今後の課題にも記述されていますが、日常使用のような安定環境以外では、ジェスチャーを正確に識別できるのかは疑問に残る部分があります。 また、リング型デバイスであることから優位性のある、ユースケースについても議論の切り口があるとWISSでの議論を呼ぶと考えられます。