査読者1

[メタ] 総合的な採録理由

折紙プロダクトの設計・造形を支援するツール(Grasshopperのライブラリ群)と,デザイン事例を紹介している.提案されているツールは大変興味深く,実装の完成度も高い点が高く評価された.一方,長大な内容を圧縮したためか,投稿時の原稿にはシステムの挙動等,不明瞭な記述も散見された. こうした点を踏まえて,採録条件付きのショート採録と判定した.

[メタ] 査読時のレビューサマリ

提案されているツールは興味深く,実装の完成度も高い一方,論文の完成度がyやや低く,新規性や有用性が曖昧になっているため,条件付きショート採録と判定します. メタの以下の2点の指摘に対応してください.(条件として読めるように書いているつもりです) 1.ターゲットユーザの記述が不明瞭 2.システムの設計方針や詳細な動作が不明瞭 ※3.論文自体に不明瞭な記述が散見,は条件とはしませんが,1-2に関連する部分も多いため,可能な範囲で修正してください.また,他のReviewerの指摘は条件とはしませんが,著者判断で修正頂いても構いません. 紙面が不足する場合は,入力フェーズの詳細や制約関数の詳細を原稿から省いてもよいかもしれません.全体的な設計方針や必要性を伝える方がより重要だと思います. (本研究の新規性として重要なアルゴリズム等があるなら是非ご紹介頂きたいのですが,現状の原稿からは判断ができませんでした.)

[メタ] その他コメント

総合点

3: どちらかと言えば不採録

確信度

3: 自身の専門分野とマッチしている

採否理由

概要: 折紙プロダクトの設計・造形を支援するGrasshopper上のライブラリ群,Crane を提案・実装し,ツールを用いて実装した3つのデザイン事例を提示している. 査読コメント: 提案されているツール自体は大変興味深く,しっかり実装が行われているように見えます.また,ツールを一般公開している点も素晴らしいと思います. 一方で,以下のような点から論文としてはやや完成度が低く,新規性や有用性が曖昧な状態になっているため,評価は3としました. 以下,問題点をまとめます.
1. ターゲットユーザの記述が不明瞭
- 提案システムのターゲットユーザ自体は3.2章で記述されているのですが,「計算折り紙の専門家」や「折り紙の知見を応用したいデザイナ・建築家・研究者」とされています.しかし,まず「計算折り紙の専門家」の定義が不明瞭です.著者グループにほぼ限定するものなのか,そうでないならどの程度の専門家が存在しているのかなるべく定量的に記述してください. また,「折り紙の知見を応用したいデザイナ・建築家・研究者」をターゲットユーザと述べられていますが,提案システムはGrasshopperのプラグイン群として実装されており,Grasshopperを使って一からプログラムを書く必要がある(ように見える)ため,デザイナ/建築家の大部分がこの時点で対象外となっているように思えてしまいます.(なお,「3D CADを使えないユーザに対して効果的ではない」と説明されていますが,CADを使えないのとGrasshopperを使えないのでは大きく異なる話だと思います.) さらに,制約の追加などもユーザが手動で行う設計となっている(ように見える)ため,折り紙の知見を十分に事前に持っていない限り利用が困難なシステムとなっています. このような点から,デザイナ等もシステムの対象とするというなら,インタフェース/折り紙の知識に対して,何らかの支援がないと難しいと思いますので,この点について説得力のある説明を追加してください.なお,査読者は少数のグループの創造性や生産性を高めるシステムにも十分意味はあると考えますので,ターゲットユーザを絞って記述してする方向も検討されるとよいと思います.
2. システムの設計方針や詳細な動作が不明瞭 システムの大まかな操作手順自体は「入力→シミュレーション・形状探索→ファブリケーション」として分かりやすく説明されているのですが,それぞれの設計方針や詳細な動作(ユーザ体験)の記述がほとんどないため,果たして効果的な実装がされているのか理解が難しいです.
- 「4 入力フェーズ」では三つの入力方法が説明されていますが,なぜ三つの入力方法が必要なのか,どのように使い分ける想定なのか説明がなく理解が困難です.漠然と作った機能を並べているように見えるため,用途を簡潔に説明してください.
- 「4.1 画像認識」では,紙を撮影してそのまま折パターンを作成できるとありますが,ユーザはまったく修正の必要がないということなのでしょうか?画像認識で確実に認識できるようには思えないのですが,ユーザがどのような手順で認識結果を修正するのか(あるいはしなくてもうまくいく仕掛けがあるのか)説明してください.
- 「3.3.1 椅子? 入力」を見ると,「ユーザはまず,手作業で実際の紙を折ることで大雑把に椅子のような動きをする折紙をデザインしたと仮定する」という記述がありますが,このようなデザイン行為は折り紙の専門家以外でも一般的なのでしょうか?(紙で試作すること自体は一般的だと思いますが,一枚の紙でやるでしょうか?)ターゲットユーザの記述とも関連しますが,建築家やデザイナーがこのような設計手法をとるという知見があるなら記述してください.そうでないなら,ユーザの定義を狭める等の対応をしたほうがよいと思います.
- 「3.3.2 椅子? シミュレーションと形状探索」では,「2D または3Dのモデルの形状をインタラクティブに変更することで形状探索できる」と記載されており,ユーザの体験としてはここが一つの核になるように思えるのですが,ほとんど説明がなく理解が困難です(ビデオで一瞬だけ出てきますが...).十分にシステムの動作が分かるような記述やビデオを追加して頂きたいです. また,この形状探索の部分と先行研究の「FreeformOrigami」との差分もやや曖昧で理解が難しいです.インタラクティブな形状探索自体は既に実装されていて,その機能を再利用しているのだと思われますが,どこまでが本研究のオリジナル部分なのでしょうか?「シミュレーション・形状探索フェーズ」自体が機能としてはFreeformOrigamiと共通であり,だからこそ説明を省いているのでしょうか?(あるいは定義できる「制約」が増えている?)関連研究での記述はやや抽象的であるため,共通部分があるなら,例えば図1にFreeformOrigamiとの共通部分を含めるなどして,本研究のオリジナル部分が明確になるようにしてください.もし共通部分がないならその点が明瞭になるように記述を追加してください. -「5.2Constraint Components」では,14の制約コンポーネントのうち,2種類を取り上げて説明するとされていますが,まずなぜ14のコンポーネントが必要なのか説明がなく理解できません.(細かいことを言うと,「種類」という概念も説明がありません.) また,なぜ今回2種類を取り上げて説明しているのかも説明がなく理解できません.(何らかの重要なコンポーネントなのだろうとは思いますが...) こうした点について制約の全体像が分かるように補足してください. (これは細かい点ですが,制約の追加はインタラクティブに可能なのでしょうか?プレビュー画面が独立しているようですが,制約を定義するたびに再度プレビューを開きなおす形になるのでしょうか?この辺りもインタラクションの記述が不足していてわかりにくいです.) -「5.2.2Developable Constraint」 可展性の制約が満たされなかった場合,システムはどのように挙動するのかが説明がなくわかりません.どのようなフィードバックがあり,ユーザはどのように次の一手を打つのか分かるように説明してください.
3. 論文自体に不明瞭な記述が散見されます.以下箇条書きにします. p1. 「機能性」「可折性」「可製造性」 →これらの用語は折り紙設計の分野で一般的なもののなのか,著者の定義なのか明記してください.前者ならリファレンスも入れてください.特に機能性を「意匠を実現する形状・大きさ・対称性」ものとして説明されていますが,プロダクトデザイン的な視点だと,意匠はデザイナーが,機能はエンジニアが担当する要素とも捉えられるため,少々違和感を感じました. p1.「非専門家には敷居が高い.」「折り紙の非専門家および専門家」 ターゲットユーザの指摘と関係しますが,できるだけ早い段階で「専門家」「非専門家」(「ユーザ」)の定義を明確にしてください.「折り紙の専門家」という定義も不明瞭です(著者グループのような計算折り紙の専門家ということ?) p2. 「なお,Grasshopper はRhinoceros という3D CADの標準機能であり,プロダクトデザイナや建築家に 広く利用されている.」 →Rhinocerosが広く利用されているのは同意できますが,Grasshopperが広く利用されているというのは自明とは思えませんので,この記述を残す場合は事例などを補足してください.(ただ,それでもRhinocerosと同程度利用されているというのは少々無理を感じます) 図2. 椅子の設計に使用したGrasshopper の構造. >図自体の問題ではありませんが,ユーザはこの図のようなGrasshopperプログラムを(ライブラリを組み合わせて)ゼロから作るという実装なのだと思いますが,論文中にそのようなユーザ体験が明記されていないように思います.Grasshopper上で完成したプログラムのパラメーターを調整するというシステムではないのだと理解しましたが,誤解を生みやすい状態なので,本文で記述を明確化してください. 3.3.3「ユーザは可製造性の要求を満たす.」 →「ユーザは可製造性の要求を満たすための処理を記述する.」ということでしょうか? 4.3 「なお,この場合も可展性は保証されないため,Developable Constraitsをつける場合が多い」 →誰の視点の記述なのか理解できませんでした.著者のような計算折り紙の専門家の利用経験を書いているのでしょうか?また,どの場合にどの制約を付けるかをユーザが判断する必要があるのだと思いますが,この点も明確に記述して頂きたいです.(ターゲットユーザの記述に関連しますが...) -5. 「このため制約が不十分な条件でもシステムはロバストに動作する.」 →何をもってロバストなのか理解が困難です.前後の動作も含めて具体的に記述してください.例えば,何らかの解が出せるからロバストに動作するといえるのでしょうか?(制約が確実に反映される補償はできないように思われますが...) -「6.ファブリケーション] ヒンジの強度について全く議論がないのが気になりました.家具スケールのものも想定されている以上,何らかの議論が必要だと思います. -「7.1テーブル」 「ヒンジにはフィンガージョイントを選択し,木材は後述のEMARF [32]により切削した.それぞれのパネルを固定するためにピアノ丁番を使用した.」 →フィンガージョイント自体は直接ヒンジの役目は果たしておらず,別途蝶番を使っているということなのでしょうか?もしそうなら,こうした設計指針については,応用例の一部ではなくファブリケーションの章で説明された方がよいと思います.
- 「7.2 ランプシェード」 どのようなデータが出力されるのかよくわかりませんでした.カッティングプロッタ用に二次元に展開したデータが出力されるということなのでしょうが,図10等で分かるようになっているとよいと思います.
- 7.3マスク 「入力として,まず我々は顔の3D メッシュを用意し」 →どのように用意するのでしょうか?デプスカメラなどで撮影するということでしょうか? また,マスクをどのように制作しているのかも記述がなく理解が困難です.ランプシェードと同様にカッティングプロッタで出力して手織りしているのでしょうか? -デザイン事例全体について テーブルの事例は本提案の特徴を示しており分かりやすいのですが,ランプシェード/マスクについては,長い時間をかけて手織りする意義をどこに見出すのでしょうか?他の方法では造形が困難な美しい形状であるということを主張されているのでしょうか?(マスクについては直接3Dプリントすることもできそうな形状に見えますが,実は異なるのでしょうか?) 現状では漠然と制作例を並べているだけに見えてしまうので,どのような意図でこうした事例を制作したのかを簡潔に説明された方がよいと思います.

この研究をよくするためのコメント


査読者2

総合点

5: 採録

確信度

2: やや専門からは外れる

採否理由

この論文では, 一枚の平面からの折りによって得られる形状を, 「機能性」「可折性 」「可製造性」を満たすようにインタラクティブにデザインするためのフレームワークを提案している. システムの完成度は高く, 論文もよく書けているため採択としてよいと判断する.
・最終的に仕上がってほしい形状のexampleではなく入力の折りをexampleとして与えるのは素人には難しいのではないでしょうか?最初にどう折ればよいのか導入が一番難しいとおもいました. 目標となる形状がまずあって, それを実現するための折り方を教えてくれるほうが便利だとおもいました. 最初に与えられたexampleが可折性を満たさなかった場合にはそれに近い可折性を満たす形状をいくつかシステムが推薦してくれたり, どこを修正すればよいのかを教えてくれるとなお有用だとおもいます.
・図5にあるような制約条件を明示的にユーザが指定するのは素人には少し難しいかとおもいます. 目的とする機能のために必要な制約をいくつか見落としてしまったり, 余計な拘束を入れてしまう可能性もあります. 例えば与えられた形状から求められる機能を機械学習などで推測して, それに必要な拘束をある程度自動で入れてくれると有用だとおもいました.
・内部に切れ込みがあることで実現可能な剛体折り形状もありますが, 本システムではまだ考慮できていないようにみえます. 簡単な拡張で対応できるようになるのでしょうか?

この研究をよくするためのコメント

紙面の都合上仕方ないとはいえ制約を満たすための最適化問題についての記述が大幅に省略されている点が気になります. 従来法の定式化ではどの部分が問題であって本論文でどのように解決したのかが記述されるとよくなるとおもいます.


査読者3

総合点

5: 採録

確信度

1: 専門外である

採否理由

本研究では、折紙を利用したプロダクトの設計プラットフォームであるCraneを提案しています。ユーザの要求する機能性・可折性・可製造性を制約ベースのシステムでインタラクティブに実現できます。システムの各機能を簡潔に示すと共に、有効性を示すデザイン事例としてテーブル・ランプシェード・マスクを紹介しています。 本稿は非常にわかりやすく書かれており、目的および新規性が明らかです。 先行研究について適切に引かれており、本研究との違いがわかりやすかったです。 本システムは既存のアプリケーション「Rhinoceros/Grasshopper」のプラグインとして実装されており、3D CADが利用できるプロダクトデザイナ等であれば利用でき、また紹介されているデザイン事例からも本研究の有用性・正確性が伺えます。 以上を踏まえ、論文のクオリティは申し分なく、WISSで議論する有意義な内容を含んでいると判断し、「5: 採録」としました。

この研究をよくするためのコメント

査読者4

総合点

4: どちらかと言えば採録

確信度

1: 専門外である

採否理由

本論文では,折紙のような平面から折り目や切り込みをいれることで作られるプロダクトを設計するツールを提案しています.著者らのツールでは簡単な折り目による表現だけでなく,任意の面にテセレーション折を適応させることも可能であり,折紙の知識のないユーザでも簡単に折紙プロダクトを作成することが可能となります.本ツールはGrasshopper用のツールとして公開され,利用されていることから,実用性も十分であると推測されます.

この研究をよくするためのコメント

ツールの説明だけでも十分興味深いですが,ソルバーに関する検討や議論があると,より良いと思います.例えば,今まで対応できていなかった「内部頂点を持つ複雑なパターン」に対応できた理由はどの技術に寄るものなのでしょうか. また,折り方の変化によって生じる耐荷重の変化も計算できるのかが気になります.