査読者1

[メタ] 総合的な採録理由

本研究は、ビデオ会議において、顔の部分表示によって顔の開示度をさげつつリアクションを伝達することでコミュニケーションの円滑化を目指した研究である。評価方法等に不適切と思われる点があること、また現状の評価の範囲では既存手法(アバター)に対する優位性が不明瞭である反面、顔の部分表示というアプローチは非常に興味深く活発な議論が期待されることから、ショート採録と判定された。

[メタ] 査読時のレビューサマリ

判定は4,3,4,3であり、どちらかと言えば採録/どちらかと言えば不採録が半々という結果でした。査読者間での議論により、提案手法のユニークさについてはWISSの場において活発な議論が期待される反面、実験方法およびその解釈について複数の不備が見受けられることから、総合的にはショート採録(採録条件あり)と判断しました。採録条件は以下の3点とします。
採録条件
・実験条件数の不整合(4.1, 4.2節では5条件なのに対し、分析時には4条件)について、説明を追記する
・各査読者から指摘がある誤字脱字を修正する
・アバター表示に対する提示手法の位置づけに関する考察を追記する
# 各査読者コメントにて、アバター表示に対する提案手法の優位性が不明瞭であるとの指摘がなされています。各指摘を参照の上、考察を追記してください。

[メタ] その他コメント

先に挙げた採録条件以外にも各査読者から様々な指摘がありますので、参考にしてください。

総合点

4: どちらかと言えば採録

確信度

3: 自身の専門分野とマッチしている

採否理由

本研究は、ビデオ会議において、顔の部分表示によって顔の開示度をさげつつリアクションを伝達することでコミュニケーションの円滑化を目指した研究であると理解しました。 論文中でも示されている通り、ビデオ会議においてはカメラをONにすることの利点がある一方で、ONすることへの心理的ハードルが高いというトレードオフがあり、その両立を目指す方向性は需要があると考えます。 また、顔の部分表示というアプローチは、通常顔全体で複合的に伝達している情報の一部のみを切り出すことで、切り出された部位が伝達する情報を強調する効果があると考えられ、興味深いアプローチであるとも感じました。 一方で、実施された評価の範囲では、総合的に見て提案手法よりもすでに普及しているアバター表示の方が有効であると考えるのが妥当であると考えます(恥ずかしさは口よりも目・アバターで有意に低い、積極性は口よりもアバターで有意に高い、それ以外の項目には有意差無し)。 6.2節ではアバター表示に対する提案システムの優位性が述べられていますが、著者らの予想と一部のアンケート結果のみに基づくものであり、現時点では客観的に優位性が示されたものとは言えないと考えます。 よって、現時点では顔の部分表示という提案の方向性が技術的に正しいのか、また実際に役に立つのかということが判断できません。 また、提案システム自体はSnap社のLens Studioを用いて実装したSnap Cameraのエフェクトという位置づけであり、実装面での貢献も大きくはありません。 論文の記述の質については、背景から提案に至る論理展開は十分な調査に基づいて適切に記述されていると感じました。一方で、実験設定および実験結果については、説明不足で理解が困難な部分があります。 具体的には、4.1, 4.2節では実験条件が5種類と記載がありますが、結果においてはベースラインとしての顔表示と口、目、アバターの計4種類で分析を行っており、本文中からはその理由が読み取れません(図6-9)。 また、分析に当たっては「エフェクトなしの顔表示を基準の3とし5段階のリッカート尺度で回答してもらった」とありますが、この評価方法は妥当性に疑問を持ちました。例えば、匿名性については顔表示以上の評価になることは考えにくく、実質3を上限とする3段階評価になってしまうと考えられます。 上記のように、評価方法に不明瞭な点があり、さらに実験結果より現時点でシステムの正確性、有用性が十分に示されていないと判断します。 一方で、実施した評価の質によらず、提案された顔の部分表示というアプローチは興味深く、WISSの場において有益な議論が生まれることが期待できると感じました。 よって総合的には「4: どちらかと言えば採録(ショート)」と判定しました。 なお採録の場合には以下を条件とします。
・実験条件数の不整合(4.1, 4.2節では5条件なのに対し、分析時には4条件)について、説明を追記する

この研究をよくするためのコメント

顔の部分表示というアプローチは非常に興味深く、面白い効果が得られるように感じました。 一方で、顔の各部位はそれぞれ複合的な役割を持っており、その一部は他の部位で代替できないため(例えば視線による関心表出や話者交代の調整など)、目的によっては表示をどこか一か所に限定するのではなく目+口のように組み合わせたほうが良い場合もある気がします。


査読者2

総合点

3: どちらかと言えば不採録

確信度

2: やや専門からは外れる

採否理由

ビデオ会議において、表情によるリアクションを顔の特定部位やアバターを通じて返すことで、顔全体を露出せずリッチな対話を実現しようとする研究です。参加時の状況によりカメラをオンにしづらいこともありますし、どの部位のアクションが感情伝達に有効かを検証する有益な取り組みだと思いますが、以下の点が気になりました。 ・目表示を用いた場合に抵抗感が減少する傾向が見られた、と結論づけていますが、アバター表示と比べて大きな差異はないように見えます。特に平均発言回数では、有意差はありませんが目は低い数値になっています。目表示の方が話しやすいという意見が何件あったのか示されていませんが、やや無理のある結論ではないかと感じてしまいました。
・オンライン授業への適用を取り上げていますが、受講者数によっては全員のリアクションの様子を見ることは難しくなります。顔の特定部位やアバターの表情の変化を直接提示するよりは、表情の変化を識別して記号的に提示する方が有益と考えられますので、提案手法の適用は困難ではないでしょうか。 また、以下はtypoでしょうか。ご確認ください。 2章「いずれかの資質をを一つもつだけでも顔に含まれると」 4.1節「エフェクトなしを除いた口表示」 5.3節「口以外の部分をどれだけ動かしてもバレない」が重複しています。

この研究をよくするためのコメント


査読者3

総合点

4: どちらかと言えば採録

確信度

2: やや専門からは外れる

採否理由

オンライン会議で顔の部分表示をすることで,会議参加者にどのような心理的影響を与えるかを調査した研究である. これまでに,ぼかしやエッジ表現などのフィルタ処理を用いたシステムは提案されているが*,顔の部分的な抽出を用いたシステムはシンプルながらも新規な提案であるといえる. 調査結果は,被験者の属性に多様性がないため (全員顔見知り同士のグループのみが対象) ,限定的な知見と考えられるが,口・目の条件についての主観評価の差異などは,今後のシステム構築の方針を検討する上で有用と考えられる. 記述は概ね正確である. *https://doi.org/10.1007/978-3-031-06417-3_11 http://id.nii.ac.jp/1001/00036781/

この研究をよくするためのコメント

参加者のフィードバックでも挙げられているが,参加者同士の関係性により適用するフィルタの影響が変わると予想される.例えば,初対面同士であればアバター条件と目/口だけの条件は,同程度に抵抗感や匿名性に影響するのではないかと考えられる.参加者の関係性とフィルタの影響について考察があると良いと思った. セクション5のアンケート結果が読み取りにくい.最初に図を見た時に, 5条件をテストしたはずなのになぜ3条件の結果しかないのか混乱した.エフェクトなしの顔表示が「基準の3」であることとを5.1の冒頭で記載したほうが分かりやすい.また,アバターについては2条件をまとめて一回のアンケート回答としたと思われるが,これについて追記すべきである. セクション4.1の条件の記載順と図の掲載順を揃えたほうが分かりやすい.
脱字: 1ページ目左下「20 50 代」

査読者4

総合点

3: どちらかと言えば不採録

確信度

1: 専門外である

採否理由

本論文は、オンラインミーティングにおいて恥ずかしさを取り除くために、顔全体を表示するのではなく顔の一部を表示する手法を提案しています。 顔の一部、目だけ、口だけ、を表示する手法は斬新であり、一定の新規性は認められます。 ただし、有用性が少ないように感じました。例えばアバター表示に対して提案手法が優れている点を読み取れませんでした。6.2章において提案手法がアバター表示より「参加者当人と話している感覚を得やすいのではないか」と述べていますが、根拠が示されていないため、図7などをくるめて議論してほしかったです。発言の回数についても各条件下で有意な差はなく、コミュニケーションの質の向上につながっているかは疑問が残ります。 他にも、誤字脱字などが認められます。例えば5.1章において「目表示とアバター表示」に有意差があると記述されていますが、「口表示とアバター表示」の間違いではないでしょうか。

この研究をよくするためのコメント

せっかく2章で人種による目、口情報の扱い方の違いについて論じているのですから、実験に参加した人の人種についても記述すると、この論文の立ち位置が更に明確になる気がしました。