査読者1

[メタ] 総合的な採録理由

オンラインでの学会参加のために論文や発表資料を有機的に関連付けることで、リッチなオンライン学会参加体験を実現する研究は、新規性の観点での判断は難しい一方で、有用性は高いと考えられます。投稿段階の論文については、出版に向けて複数の懸念事項があり、これらを解決することを条件としてショート採録とします。

[メタ] 査読時のレビューサマリ

総合点が5, 4, 4, 4ということで、全員が採録寄りの判定です。一方で査読者26が指摘しているように、論文の改訂が必要な状態となっています。また、他の査読者の方もそれぞれ指摘事項がありますので、そちらも修正を検討してください。これらの状況を考慮しまして、本論文は論文の改訂が必要な(つまり条件付採録の)ショート採録と判定します。
採録の条件:
- タイトルが内容を正確に表現していないと考えられますので、タイトルの修正をしてください。
- 各査読者の指摘に適切に対応し、論文を修正してください。

[メタ] その他コメント

・論文テンプレートのヘッダが「WISS2020」となっていますので、今年の最新版のテンプレートを使用してください。

総合点

5: 採録

確信度

2: やや専門からは外れる

採否理由

オンラインでの学会参加のために、論文や発表資料を有機的に関連付けることで、リッチなオンライン学会参加体験を実現する研究は、新規性の観点での判断は難しいが、有用性は高いと思われる。実際に役に立つかという点では、オンライン学会参加時の最も大きな障害は、参加者の周囲の環境であったり、突発的な仕事であったり、または時差などがあると思いますし、それらに対してどのように対応できるのかについて、興味があります。さらに、今回の「オンライン学会参加」というのが「リアルタイム」なのか「録画」なのかについては、立場を明確にするほうが良いと思います。 記述の正確性や質については問題はないと思います。 総じて、本論文は採録が相応しいと思います。一点、お願いがあるとすれば、本システムをWISSで実働させてもらいたいということです。ご検討ください。

この研究をよくするためのコメント

今回、PacificVis 2022のSession 8の資料を使用したとありますが、これらの著作権などはどのようになっていましたでしょうか。研究や論文での使用ですので問題はないのだろうと思いますが、将来的な発展に向けては権利関係についても事前にクリアになっているほうが良いかと思いました。


査読者2

総合点

4: どちらかと言えば採録

確信度

1: 専門外である

採否理由

■新規性 個々の学会発表において提供される、口頭発表動画、および論文を対応付けながら読む作業を支援するためのインタフェースが実装されています。実装に使われている技術は既存のものですが、それらの組み合わせにより、口頭発表動画や論文に示されている研究内容を把握するために特化されたインタフェースは、知る限り無く、そのために新規性はあると考えられます。
■有用性 ビデオを見る限り、現段階でも、口頭発表動画を見つつ論文を読む作業を支援できる有用なシステムが実現されているように見えます。
■正確性 実装されている機能は妥当な方法で実装されていると思われます。
■論文自体の記述の質 論文は、概して分かりすい日本語で書かれていますが、記述の見直しと推敲が必要な状態です(被験者実験のやり直しはなく、記述を改めさえすれば良いと思われます)。論文を読んでいた際に気付いた事を以下に示します。 懸念事項(大きめ) 1. 3.3節「要件分析」を修正する必要があります。まず、「…研究発表の前と際中,その後という3つの時間軸に分けて参加者の行動を想定し要件の分析を行う.」とありますが、対応する分析は記述されていません(なお、研究発表の前、際中、後という3つの時間軸に分けて分析するというアプローチにはとても興味があります)。また、「その際に研究を理解する途中において行うアクティブリーディングに関する O’Hara の4分類 [18] を参考にして…」とありますが、[18]にある4分類とはどのことでしょうか?[18]にある4分類というと、「HOW A TEXT IS READ」という節にある読み方の4分類receptive reading/ reflective reading/skim reading/scanningのことでしょうか。あるいは「SUPPORT ACTIVITIES」にあるunderlining/note-taking/outlining/networkingのことでしょうか?さらに、4分類のうち3つに対応しているとのことですが、対応していないもうひとつは無くて良いのでしょうか。現時点では、無くて良い理由が記述されていないので、[18]に基づいているという主張には説得力を欠き、これにともなって導き出されたR1~R5はアドホックに見えます。 2. タイトルを変える必要もありそうです。まず、本システムは、対面で開催された学会の発表画像を見るのに役立つと考えられます。そう考えると、タイトルにある「オンライン学会参加の支援」が妥当には思われません。オンライン開催された学会から得られるコンテンツを閲覧するのにも使えるというのは確かですが、「オンライン学会参加の支援」というタイトルから期待されるシステムではありません。恐らく、序論のロジックに合わせてタイトルを変えると良いと思われます。 懸念事項(細かめ)
- 記述の順序が入れ替わっている箇所を修正すると良いと思われます。記述の順序が入れ替わっている箇所の例を挙げます。例:3.2節「具体的には論文のメタデータ,論文,発表動画,紹介動画を対象に研究を進める.ここでメタデータは…, 紹介動画….発表動画とは…」
- 4節に「その際に PacificVis 2022 の “Session 8: Text and Mixed Data” の 4 つの論文を参考に要素と対応関係の抽出手法を考案した.」の「参考に」とはどういうことでしょうか?
- 4.2.1節に「このままでは 2 段組の論文に適応できないため,正規表現を用いて文章の順番を調整し,節の表題と図表の注釈,本文を段落ごとに取り出す.」とありますが、文章の順番を調整するという処理はどのような処理でしょうか(なお、注釈とありますが、キャプションであると思われます)。
- 4.2.2節に「…eps を自動調整した.」とありますが、どのように自動調整したのでしょうか?
- 4.2.2節に「キャプションの真上に位置する領域を再配置し,キャプションの対応関係を保持したまま図表を検出した.」とありますが、領域を再配置とはどのような処理でしょうか?
- 表1の「段落の抽出」に適合率が記述されていませんが、何故でしょうか(適合率を求めることは可能に思われるのですが…)。
- 5.1節に「加えて画像処理によって発表動画を 10 秒ごとのフレームに分割し,類似したフレームをまとめることで発表資料を作成する.」とありますが、10秒という長さを採用した理由を記述すると良いと思われます。直感的にはもっと短くすることによって、処理時間は長くなるものの、「発表資料の再構成」の精度は上がるようにも思われます(ただ、アニメーションが使われているページが存在すると精度は下がるのかもしれません)。
- 5.1節に「実際に分割ミスを除いた場合の再現率は表 1 の括弧内に示されており,」とありますが、分割ミスを除いた場合の再現率は表1には記述されていないように思われます。
- 5.2節の「論文の段落と文字起こしの対応」の記述は4.2.2節に似ていますが、別に行ったのでしょうか。あるいは繰り返しでしょうか。また、5.2節では再現率のみを求めていますが適合率を求めた上で議論してはいかがでしょう。
- 6.1節に「5 章の実験を通し性能を測定した.その結果要素抽出タスク 4 つのうち 3 つのタスクで非常に高い精度を確認することができた.」とありますが、非常に高い精度を確認できたタスクとはどれのことでしょうか?自分が表1を見る限り非常に高い精度となっているものは、「節の表題の抽出」と「図表キャプションの抽出」の2つに見えます。
- 6.1節に「加えて実行時間の 50%以上は論文の前処理時間であるため,ユーザーが動画を手に入れる前に論文の前処理を行うことで体感時間を減少させることができる.」とあります。まず前処理とはどの処理でしょうか。また、前処理を行うことによって体感時間を減少させられることには同意しますが、前処理が可能となるためにはシステムがどのような形態で提供されるかに寄りそうです。例えば、システム全体がWebサービスとして提供されるのであれば、図3に示される処理の全てが、Webサービス提供者によって前もって行えそうですが、システム全体が、個人のPCにおいて実行されるアプリケーションとして提供される場合には、状況は異なりそうです。したがって、システムがどうどのような形態で提供されるかも含めて議論すべきように思われます。
- 6.2節に「その事によって学会参加者の行う全てのタスクを支援することが今後の目標である.」とありますが、この「全てのタスク」が何を指すのか定義すべきです(「未来ビジョン」にはそれらしき定義があるので、それを論文本体において説明すれば良さそうです。)。

その他
- 各ページのヘッダに「WISS 2020」とあります。古いテンプレートを使っているのかもしれません。
- 「スライド内の重要箇所を共通するために…」→「…強調…」
- 図4が滲んで見えます。ベクター形式の図を使ってください。
- 「そして稚拙ながらも,提案アルゴリズムの性能の評価を行った」→「…性能の予備調整を行った」はいかがでしょう?
- 「参考文献」において[14]はプレプリントサーバーに掲載されているものを参照してますが、きちんとした会議録や論文誌を参照すべきです。また、[18]の論文題目が「Towards a typology of reading goals rxrc affordances of paper project.」となっていますが、論文題目として妙です(goalsより後の部分)。
■まとめ 多くの記述を改善する必要がありそうですし、個々の要素技術は既存のものですが、全体として全く同じようなものが過去にあったかというとそうでも無い気がします。そのためトータルとしてはややプラス評価としました。
■採録の条件
上記の「懸念事項(大きめ)」の両方を解消する必要があると思われます。

この研究をよくするためのコメント

- アクティブリーディングを支援する試みとして、論文に挙げられているもの以外に以下を思い出したのでお知らせします。
柴田博仁, 高野健太郎. アクティブリーディング中の柔軟なページ操作とコンテンツタッチを支援するタッチ操作体系. 情報処理学会論文誌, Vol. 60, No. 10, pp. 1929-1940, Oct. 2019.


査読者3

総合点

4: どちらかと言えば採録

確信度

2: やや専門からは外れる

採否理由

本研究は、オンライン学会等においてマルチモーダルな複数のコンテンツを参照する必要がある状況をサポートするシステムの提案であると理解しました。 提案システムの設計では、オンライン学会での使用を想定した要件分析を元にユースケースを設定し、6つの構成要素からなるプロトタイプシステムを実装しています。また、それぞれの構成要素の表示内容について、自動で対応関係を抽出する手法を提案しています。自動抽出手法に関してはその精度を評価する定量的実験を実施しており、おおむね良好な精度での抽出ができていることから、提案手法は一定の正確性が確保されているものと考えます。 これらの実装内容は、WISSの場において活発な議論につながるのではないかと感じました。 一方で、提案システムの有用性という観点では、やはりユーザ実験の実施が必要であるように感じました。実際にオンライン学会等を想定した状況下で複数コンテンツの参照をサポートできるのか、大規模なユーザー実験を行わないまでも、実際に触ってみてもらった様子が知りたいとかんじました。 論文の記述の質は全体的に高く、明瞭で分かりやすい内容であると感じました。一方で、以下の点について説明が欲しいと感じました。 ・6つのビュー(図1, 2)を実際に使用する際に想定する環境→全てを表示することを考えると大型ディスプレイでしょうか?それとも適宜表示を切り替えてラップトップPC等でも使用可能でしょうか? 上記の内容を総合的に判断し、「4: どちらかと言えば採録(ショート)」と判定します。

この研究をよくするためのコメント

・実際にシステムを体験してみたいと強く感じました。WISSの一部のセッションなどで実際に使用可能なコンテンツを提供いただけたら議論につながりそうです。 ・実際に学会等に導入する上では、論文のフォーマット側に何か工夫をしたり、発表スライドにも何かしらレギュレーションを入れる(アニメーションの使用ルール等)ことも可能かと感じました。

査読者4

総合点

4: どちらかと言えば採録

確信度

2: やや専門からは外れる

採否理由

著者らは、学会発表における論文および発表映像から、理解の手助けを目的として要点抽出をおこなうシステムの構築に挑戦している。 提案手法では、論文内の類似段落をヒートマップとして表示する機能、図表の参照位置を表示する機能、発表資料に類似した論文の段落へのハイライト機能を提案している。 それぞれの、抽出手法は一般的な手法であるが、システム全体としてのモチベーションには、一定の新規性があると考えられる。

この研究をよくするためのコメント

オンライン学会発表への応用という観点で関連研究を調査されていますが、講義資料と教科書との対応などのような別の応用観点での関連研究について、追加で調査することを検討してください。コンテンツからの要点抽出という観点では、他の手法でも議論されている可能性があります。 3.4のユースケースで述べられていますが、本システムの利用対象者が、後日視聴するケースであれば、当日参加した参加者の反応や、閲覧行動が役立つ可能性が考えられます。