査読者1

[メタ] 総合的な採録理由

全ての査読者が新規性/有用性/信頼性共に十分だと判断しており,採録と判断します.CHI2022にも採択されている論文であり,翻訳や文章削減に伴う問題もほぼありません.よく6ページにエッセンスを収めて頂いています. 発表形式は既発表であることからショート発表も検討しましたが,技術的な説明に時間が必要と思われる点や,しっかり議論したいという査読者の意見を踏まえてロング発表としました.

[メタ] 査読時のレビューサマリ

全ての査読者が新規性/有用性/信頼性共に十分だと判断しているため,採録と判断します. CHI2022にも採択されている論文であり,おかしな翻訳や文章削減による論理構造の破綻もありません.よく6ページにエッセンスを収めて頂いていると思います. 発表形式は既発表であることを考慮してショートとするか,電気的な部分等を含めると説明に時間がかかることを考慮してロングとするかを査読者間で議論し,しっかり聞いて議論したいという観点から,ロング発表としました. 最後に,本質的な問題ではありませんが,複数の査読者が論文や発表をよくするためのコメントを記載しておりますので,カメラレディや発表の際の参考にしてください.

[メタ] その他コメント

総合点

5: 採録

確信度

3: 自身の専門分野とマッチしている

採否理由

概要: 人体スケールに適応可能な布型無線給電器,メアンダコイル++を提案している.人体への電磁界浸透を抑制できるコイル構造と液体金属ベースの低損失な導電糸とを用いて,これにより,人体の70%程度を覆う範囲において,人体への安全性を保ちながら最大2.5Wの電力を約40%の給電効率で給電できることを確認した. 査読コメント: CHI2022に採択されている論文であり,おかしな翻訳や文章削減による論理構造の破綻もありませんので,採録として問題ない論文だと思います.よく6ページにエッセンスを収めて頂いていると思います. ただ,ウェアラブル給電技術としては優れている論文だと思いますが,インタラクション的な応用例として効果的な事例はほぼ示されていないので,評価は5とします.(だからこそ,WISSでは是非それを議論して頂ければと思います)

この研究をよくするためのコメント

以下は,主に会議での発表の際に意識して頂けるとよいコメントです.(論文本体の修正は著者のご判断にお任せします.)
- 「eGaIn と呼ばれる液体金属は高い導電性と低毒性を持ち,15.7°C以上の温度で液体状態を保つ」と記述されていますが,15.7度を下回った場合はどのような挙動が起こるのでしょうか?(例えば導電性や柔軟性の変化など)日常生活の中で十分下回る可能性のある条件だと思いますので,補足頂きたいです.
- 分量の関係で削除されたのかもしれませんが,給電に伴うコイルの発熱についても安全性や使い勝手に直結する部分なので,補足頂きたいです.サーモグラフィなどで撮影した画像を載せて頂けるとよいと思います.
- p.5「この位置ずれによる給電効率の低下は,受電コイルをアレイ化することで回避できる.」 受電コイルをアレイ化することで回避するという表現がやや理解が困難でした.コイルを複数水平方向に並べてサイズアップすることでいずれかのコイルの位置が合うようにするということでしょうか? p.5「スマートフォン,ネックファン,スマートウォッチなどへ数Wを給電できる」 前の章で「受電コイルが衣服から5mm以上離れると給電効率が著しく低下する」ことが示されているため,なぜこのようなデバイス群に給電できるのか一読して疑問に思いました.図8をよく見ると察することはできるのですが,特にネックファンやスマートウォッチは実用的にはかなり無理のある実装をされているように思うので,これはあくまで技術的可能性を示す事例であることを補足する等した方がよいかもしれません. p.6「今後メアンダコイル++が,様々なテキスタイル製品に組み込まれることで,日常生活での永続的かつ高機能なウェアラブルコンピューティングを持続できることを期待する.」 とありますが,結局本システムでは人体に装着可能な範囲の重量のバッテリーを前提に動作するのだと思いますので,永続的というのは少々言い過ぎではないでしょうか? 現状どの程度のバッテリーを利用されており,それが十分なのか,あるいはより大きな容量に対応させていくのかといった点も議論頂けるとよいかもしれません.


査読者2

総合点

6: 採録を強く推す

確信度

3: 自身の専門分野とマッチしている

採否理由

新規性、有用性: 本研究は、ウェアラブルコンピュータが抱える小型・軽量化するにあたっての、 バッテリー容量およびその充電という問題に対し、衣服を無線給電路化する手法を提案している。同様の手法に比べて給電範囲の広さやその効率を大幅に改善しており、また安全性についても十分に議論されている。 メアンダコイルに着目した点は独創的であり、その効果についてシミュレーションされており、実物を用いた姿勢ごとの給電効率も評価されている。 また、衣類の実装のためにシリコンチューブに液体金属を注入した導電糸を用いており、その安全性や伸縮性も評価されていることも主張を補強している。 これらのことから、本研究にて得られている知見の学術への貢献性は高いと考えられる。 正確性: 用いられている技術(メアンダコイル)を含む提案手法に対して、正確にその特性について言及、評価されている。 論文自体の記述の質: 十分に分かりやすく書かれている。

この研究をよくするためのコメント

ウェアラブルではなく、環境設置型の電力送信装置に対する本手法の優位性(場所を問わずに用いれる?、安全性が高い?)が言及されると、本研究の立ち位置や使用シーンがなお明確になると考えられる。
細かい指摘:
3.1節「安全性」内、  図8b-c → 図6b-c


査読者3

総合点

6: 採録を強く推す

確信度

1: 専門外である

採否理由

液体金属であるeGainを封入したシリコンチューブで独自形状コイル(メアンダコイル++)を形成、服に搭載し、人体に低影響かつ比較的高効率な給電方法を提案しています。本提案手法は革新的であり、新規性の高さ・有用性の大きさを高く評価します。 液体金属を使用した理由やコイル設計の根拠なども論文中に記載されており、また、論文動画から実際に実装されていることも確認できます。更に、注釈などで補足説明することで専門外の読者に配慮しています。 ただし、いくつか誤字脱字などが見受けられます。3.1章の2段落目1行目や、同じく3.1章の2段落目の「図8b-c」など(こちらは図6ではないでしょうか)。 2.3章において、「衣服着用時に衣類が10%以上引っ張られることはほぼない」と論じていますが、図4は伸び率80%までのグラフとなっています。重要なはずな伸び率0~10%の部分が紙面で確認しづらくなっており、不親切に感じました。 また、3.1章においてメアンダコイル++のSARに対する最大送電電力が52Wなのに対し、最大送電電力を10Wとした詳しい理由が述べられていません。このように記載の不備はいくつかありますが、明らかな新規性と有用性を備えている研究であるため、「6採録を強く推す」が妥当と判断しました。

この研究をよくするためのコメント

査読者4

総合点

6: 採録を強く推す

確信度

2: やや専門からは外れる

採否理由

新規性:ウェアラブル給電に関する新しい手法を提案しており十分と考えます。 有用性:身体深部に強い電磁場を生じることなく比較的大きな給電ができており、また日常用途のための配線の工夫もなされており有用と考えます。 記述の質:ハードウェア的な記載が中心ですが十分記載されていると思います。

この研究をよくするためのコメント

受電コイルの位置によって給電できない問題に対して受電コイルをアレイ化することで解決すると述べていますが、具体的にはどのようにするのでしょうか。またアレイ化した場合、アレイの向きに対しては頑健性はあるのでしょうか。