査読者1

(Primary)レビューサマリ

ペンギンの腹部模様を描くことでペンギンの個体を検索する手法については既発表であるが,水族館の現場での課題・ニーズを丁寧に検討して設計しているシステムであり,アプリケーションの完成度も高い.また,実環境である水族館で実証実験を行っている点,システムの有用性・他施設への導入可能性を議論した点が評価できる.知見が多く,WISSで議論する価値がある研究であると判断した.以上の理由から,採録と判定された.

(Primary)採録時コメント

ペンギンの腹部模様を描くことでペンギンの個体を検索する手法については既発表であるが,水族館の現場での課題・ニーズを丁寧に検討して設計しているシステムであり,アプリケーションの完成度も高い.また,実環境である水族館で実証実験を行っている点,システムの有用性・他施設への導入可能性を議論した点が評価できる.知見が多く,WISSで議論する価値がある研究であると判断した.以上の理由から,採録と判定された.

(Primary)論文誌として必要な改善点

ユーザがどのくらいアプリを使ったのか、使用時間や検索時間などが明記されていると良いと思います。

任意回答形式だったからか使用者数に比べてアンケート回収率が低いのがもったいないです。
271人の利用者数に対して11人の回答では4%なのでアンケートをしっかりとって検討するのが良いのではないでしょうか。

総合点 (1: 強く不採録~6: 強く採録)

4

確信度 (1: 専門外である~3: 自身の専門分野とマッチしている)

3

採否理由

水族館の現場での課題・ニーズを丁寧に検討して設計しているシステムである。

実環境での実証実験およびシステムの有用性・他施設への導入可能性を議論した論文である。
システムの描画インタフェースと検索アルゴリズムはすでに論文誌論文として掲載済みであるが、それを基として今回の実験にあわせた低年齢でもわかりやすいインタフェースへの対応、データセット構築、アルバム機能の導入などの機能も付与されている。

システム利用者からはコミュニケーションが促進されたり、観察が変化するなど有用性を示唆するような行動の変化がみられている。

一方で検索アルゴリズムの向上も課題である。


以上の点からボーダーラインと判断したが、システムがよく作り込まれており、WISSで議論することでよりよいシステムになると判断して「どちらかといえば採録」と判断した。

改善コメント

ユーザがどのくらいアプリを使ったのか、使用時間や検索時間などが明記されていると良いと思います。
任意回答形式だったからか使用者数に比べてアンケート回収率が低いのがもったいないです。
271人の利用者数に対して11人の回答では4%なのでアンケートをしっかりとって検討するのが良いのではないでしょうか。

査読者間での議論の中で、9月のHCI研究会の原稿を少し短くしたもので12月のWISSというのは、ルール違反ではないが、ほぼ同じコミュニティであることを考えるともう少し差分があると良いという意見がありましたのでお伝えさせていただきます。

査読者2

総合点 (1: 強く不採録~6: 強く採録)

5

確信度 (1: 専門外である~3: 自身の専門分野とマッチしている)

2

採否理由

ペンギンの個体に着目した鑑賞を促すため、ペンギンのお腹の模様を描くことでペンギンの個体を検索できるシステムを提案した研究です。水族館での6日間にわたる実証実験の結果を報告しています。

・提案されている内容の新規性、有用性、正確性
ペンギンの腹部模様を描くことでペンギンの個体を検索する手法については既発表ですが、アプリケーションの完成度が高く、水族館で実証実験を行っていることが評価できます。

実験の報告から、ペンギンの個体に着目した鑑賞を促すという観点で本システムが有効であり、やってみたらおもしろいだろうことは認められます。WISSで議論する価値がある研究だと思います。

以上を前提としたうえで、このデザインが正しい道なのかという観点で疑問が残るところもあります。

多くの動物園・水族館で個体に着目した鑑賞を促す掲示などがされるのは、スタッフが個体を識別する必要がある業務を日常的に行っているところから何か工夫をしたいと思ったときに自然に発想されてしまうものに過ぎず、その目線を一般客にも獲得させることが正しい目標である根拠が示されていないように思います。

たとえば、個体ごとの距離感の違い、異なる振る舞いをしている個体の発見、といった群れとして鑑賞するからこその鑑賞体験もあるのではないでしょうか。限られた時間で多くの動物を鑑賞する中で、ペンギンの個体を認識するための時間が増えたからといって、それだけでよい学びにつながったとまでは言えないのではないでしょうか。提案手法が個体に着目させすぎることで、失われる鑑賞体験はないでしょうか。

水族館スタッフと連携して研究をすることにはもちろんとても価値があるのは間違いありません。しかし、水族館スタッフの発想にこちらの発想まで縛られてしまっていることはないでしょうか。

・論文自体の記述の質
論文は全体としてとてもわかりやすく記述されています。

研究全体としての妥当性の観点も含めて、WISSで議論する価値がある研究だと考え、採録を推します。

改善コメント

個体を識別することの一般客にとっての価値を突き詰めると「推し個体」ができること、推し目当てのリピーターになりうることが最有力かと思いました。

その点を踏まえて、本システムを単なる検索システムにとどまらず、推し活支援システムへと発展させていくことで、先述したような鑑賞体験や学びの質・良し悪しの議論から脱却することができるのではないかと思いました。(学びの良し悪しを議論するのはとても大変そうですし…)

査読者3

総合点 (1: 強く不採録~6: 強く採録)

4

確信度 (1: 専門外である~3: 自身の専門分野とマッチしている)

1

採否理由

ペンギンの斑点模様に着目した描画型個体検索システムを筆者らがすでに提案している点で、システムの新規性は弱いと考えられますが、水族館利用者での実証実験を行い提案アプリケーションの有用性を明らかにしている点で、本研究の貢献は十分であると思いました。また、得られた知見を広く発表し、議論することで、著者らが述べているような教育・福祉・エンタテインメントとしての活用性を広げる可能性も高く、採録と判断いたしました。

改善コメント

自由な落書きなど、本来の目的とは異なる利用方法やネガティブな情報からこそシステムの改善案などが見つかると思いました。例えば、落書きをしたユーザはどのような年齢層であったのでしょうか?対象年齢に合わせたシステムの調整は、より広い範囲の年齢層への適用を促すかもしれません。例えば、斑点の一部をあらかじめ示しておくことで、斑点入力数を調整し、難易度を調整することは可能でしょうか?これには、個体ごとの斑点位置の関係性がどれほど重複しているのかなどから検討できると思いますので、論文でも議論しても良いかもしれません。ぜひ、より多くのユーザフィードバックと改良を重ねて広く社会実装されることを期待しております。

査読者4

総合点 (1: 強く不採録~6: 強く採録)

6

確信度 (1: 専門外である~3: 自身の専門分野とマッチしている)

2

採否理由

水族館において、ペンギンの個体をインタラクティブに検索するシステムを提案しています。

有用性:とても高いと感じました。実際の水族館でシステムを試し、データをとっており、有用な知見が数おおく含まれています。
システム設計についても、とてもよく感じています。提案システムは絵を描いて検索していますが、描いた絵をアルバム機能で保管して、家で見られる機能は、設計としてとても良いと思います。ユーザにとってシステムの検索で描いた絵は特別な意味を持つと思います。そこを大切にするシステム設計の丁寧さを感じました。

正確性:筆者は精度に難があるという話を5.5課題でしていますが、実際どのくらいの精度で同定に成功したのか、データを載せた方が良い気がしました。

記述の質:とても高く感じます。

改善コメント

システムはリピーターに受けたとのことですが、新規顧客をどのようにつかむかという点についても掘り進めるといいのではないかなと思います。

また、今はユーザのスマホで検索していますが、展示用のタブレットで使えるようにすれば、文字の小ささやインストールの煩わしさが
減るような気がします。展示方式についても議論がはずみそうです。

アルバム機能では、もともと水族館側が用意していた写真以外に、ユーザが撮った写真や動画は挙げられるのでしょうか?例えば、ユーザの撮った写真に、ユーザの描いた検索絵・ペンギンの名前・トピックみたいなものを吹出しのように重畳表示し、ダウンロードなどできるようにすると、自分だけのペンギン解説画像が作れて楽しい気がします。