査読者1

(Primary)レビューサマリ

評価は 5,5,4,3 となっていて,新規性・有用性は問題なさそうだが提案手法に関する説明が不十分で正確な理解が困難という指摘があった.

この問題は図や説明を改善することで短時間に解消可能とみられることから,条件付き採録と判定した.採録条件は以下の通り:
1. ポインタが視界内でどのように動くのか,ターゲットとの関係がどうなった場合に選択となるのか,明確にすること.
2. 上記に伴って図1も修正すること.

条件2について,文献[7]や[8]の図と動画の説明方法が参考になると思われる.

(Primary)採録時コメント

本論文は両眼立体視を行う環境でオブジェクトを選択する際に,ポインタを片目の視界のみに表示することでオブジェクトの選択時間とエラー率が改善されることを示している.

新規性や有用性が認められ,WISS登壇発表での議論に相応しい研究である.

一方で,論文の記述については一部に不十分な箇所があるため,各査読者からのコメントを確認して反映されたい.

以上の理由から,条件付き採録と判断された.

(Primary)論文誌として必要な改善点

評価実験の妥当性を適切に示すことが重要になるので,各査読者のコメントを踏まえ,記述のブラッシュアップを図ってほしい.

総合点 (1: 強く不採録~6: 強く採録)

5

確信度 (1: 専門外である~3: 自身の専門分野とマッチしている)

1

採否理由

・新規性
片方の視界のみにカーソルを表示する先行研究は挙げられているが、奥行きのある映像を前提とした比較という点で新規性が認められる。

・有用性、正確性
実験の結果から提案手法に一定の有用性があることが認められています。実験協力者がやや少なく、年齢相当に偏りがあることは懸念事項ですが、課題として言及されておりシンポジウムの登壇発表としては許容できると思いました。
今回の実験で用いた映像では、選択すべきオブジェクトの後ろ側が平坦で模様のない壁になっていて、実際のコンテンツよりもオブジェクトとカーソルを視認しやすい状況となっています。このことは提案手法の優位性を覆すものではないと思いますが、今後の課題に含めることもご検討ください。

・記述の質
全体的に分かりやすく書かれていますが、実験結果のグラフ(特に図3から図6)はグラフ内の文字やエラーバーが小さすぎるので、読みやすくなるよう修正が必要と考えます。

4.2節:前方の 0.2 m に位置 に表示 → 前方の 0.2 m 「の」位置 に表示 でしょうか
4.6節:いく つかの参加者は違和感を感じた → 違和感を覚えた でしょうか(直前の段落では「もつ」になっています)

改善コメント

実験協力者の中には機器の使用経験がほとんどない人が含まれていて、このようなタスクそのものへの慣れがどの程度影響したか気になりました。何か知見があれば、発表時にご紹介いただきたいと思います。

査読者2

総合点 (1: 強く不採録~6: 強く採録)

5

確信度 (1: 専門外である~3: 自身の専門分野とマッチしている)

2

採否理由

本研究は、xR環境でポインタを用いたターゲット選択を行う状況で、焦点のあっていない方が両眼視差によって二重に見えてしまう問題に注目しています。この問題に対処するため、片眼にのみポインタを表示させる選択手法を提案しています。表示条件(両眼・利き眼・非利き眼)、奥行き距離、ターゲット幅、ターゲット間距離を要因として、円周上のターゲットを順に選択するタスクで評価を行っており、利き眼にのみポインタを表示することで、選択時間とエラー率が有意に改善し、体験者からも好まれたことを明らかにしました。

論文の記述内容について、いくつか読みづらい箇所がありますが、新規性や有用性は申し分なく、WISSでの議論に相応しい研究であると判断します。よって「5: 採録」と評価します。

・新規性および有用性
片眼にのみポインタを表示させるアイディアは、文献[12]ですでに提案されているものの、ポインタを対象にかざす手法との組み合わせて、現代のHMDを用いて検証した点には一定の新規性があるように思います。実験設計および結果も適切であり、手法の有用性を裏付けています。

・論文自体の記述の質
一部、論文の内容が読み取りづらく、説明が不十分な箇所があります。改善コメントにまとめましたので修正時の参考にしてください。

改善コメント

1 はじめに
「ポインタをオブジェクトにかざす操作」や「奥行きの異なる物体に焦点が合わずに二重に見えてしまう現象」について、初見では著者らの主張を正確に読み取ることができませんでした。文献[8]や文献[7]が、これらを図や動画を用いて非常に上手く説明していますので、参考にされると良いと思います。現在の図1では手法の特徴や強みを十分に説明できておらず、非常にもったいないと思います。

4 参加者実験
・タスク全体の施行回数と実施時間を記載してください。
・タスク自体はISO9241-9に基づいていると思いますので適宜引用してください。
・分散分析の結果(F値)には自由度を省略せずに記載すべきかと思います。
・フィッツの式がID_eとなっていますが、Effective Wなどで補正している場合はその旨を説明してください。
・ターゲット幅と距離は角度で示されていますが、これらは頭の位置や向きに影響されると思われます。実験中の頭の固定方法について説明してください。

図3~図5
横軸のDとWのそれぞれに適切な単位を付与してください。また、これらの間に縦線を引いたり、グラフを離したりすることで、異なる要因についてまとめていることがより明確に伝わると思います。

図8
凡例の1、2、3が順位を表しているのか、点数を表しているのか説明があると親切かと思われます。

ポインティング手法を提案する論文として十分な実験結果を報告していますが、やはり実際のアプリケーションでどのように使用できるかが気になります。また、ポインタのデザインが変わった場合や異なる手法と組み合わせた場合にどうなるかも興味深いです。ぜひWISSで議論させていただければと思います。

査読者3

総合点 (1: 強く不採録~6: 強く採録)

4

確信度 (1: 専門外である~3: 自身の専門分野とマッチしている)

2

採否理由

本論文は、片目のみに表示されるポインタを用いて、遠隔の小さな仮想オブジェクトへのポインティングの効率やユーザーの違和感にどのような影響を与えるかを評価しています。両眼に表示されるポインタとの比較実験もしており、片目のみの表示の有効性を示しています。一方で、この片目はあくまで遠くの小さなオブジェクトの認識に有効であり、ユーザの視力ごと・オブジェクトの大きさ・距離に応じて、適切に、「両眼視」と「片目表示」の切り替えを行わないと、ユーザにとって違和感を感じるVR体験になると感じます。論文自体の記述は問題ないです。

以上から、4: どちらかと言えば採録にしました。

改善コメント

「両眼視」と提案する「片目表示」の切り替えが必要かどうかが気になりました。

査読者4

総合点 (1: 強く不採録~6: 強く採録)

3

確信度 (1: 専門外である~3: 自身の専門分野とマッチしている)

2

採否理由

後半に述べられているユーザスタディは,概ね適切に設計されているように見受けられ,実験結果も興味深いものであると思いました.
しかし,肝心の提案手法について,論文を注意深く読みましたが,その動作を正確に理解することができず,現状の内容では新規性や有用性を正しく判断することが難しいです.本研究は,1章の冒頭にあるように「ポインタをオブジェクトにかざすことにより選択を行う手法」が主題となっていますが,これがどのようなものであるのか,論文を通した説明では理解できませんでした(ここで「かざす」というのは,ユーザから見てターゲットがポインタと重なり合うようにポインタの位置を手で操作することであると査読者は推測しましたが,このことを明確に伝えている文章がありません.また,図1の画像だけでは,ポインタが片目の視界にのみ表示されているという点は伝わりますが,このポインタが視界に固定されているのか,手に連動しているのかわからず,不明確です).このため,ユーザの目,手,バーチャル空間上のターゲット,の3つの位置関係を示す新たな図を作成するなどして,本手法の動作に関して明確に説明する必要があると思います.

改善コメント

特になし