査読者1

(Primary)レビューサマリ

本研究は、VR コントローラにトラックボールを組み込むことで、特に遠距離オブジェクトの回転操作における効率性と直感性を向上させる新しいインタラクション手法を提案しており、プロトタイプの実装から比較実験までを一貫して行い、定量評価と主観評価を組み合わせて検証しています。

VR コントローラにトラックボールを搭載した先行研究は乏しく、また VR における遠距離オブジェクトの回転操作もトラックパッド手法以外の前例が少ない中で、本手法およびトラックパッドとの比較評価実験には高い新規性が認められます。実験結果からは、遠距離タスクにおいてトラックボールが有意に高速であることが示され、有用性について一定の説得力がありますが、主観評価ではトラックパッドとの差が大きくなく、近距離タスクでは従来手法が優れている点も明らかになっており、現段階での応用範囲はやや限定的です。それでも、将来的な応用展開のポテンシャルは高いといえます。全体として論文は構成が良く、図表や評価結果もわかりやすく示されており、新規性と将来展望の両面から高く評価できます。

ただし、採録にあたっては以下で述べるような内容の追記が必要と思われるため、「条件付き採録(シェパーディング)」と判定しました。

以下に採録条件を記述しています。

- 4.4で、選定したタスクについて、その選定理由や一般的な実験タスクかどうかについて記述してください。また Kim らが採用しているものであれば、その旨を明記してください。

(Primary)採録時コメント

VRコントローラにトラックボールを組み込み,特に遠距離オブジェクトの回転操作における効率性と直感性を向上させる新しいインタラクション手法を提案する研究である.プロトタイプ実装と比較実験により定量・主観の両面から有効性を検証している.その結果,パフォーマンスと主観的評価に優れる可能性が示されている.近距離の回転操作では従来手法に劣る可能性も示されているものの,新規性と将来展望の点で高く評価できる.以上の理由から,条件付き採録と判定された.

(Primary)論文誌として必要な改善点

査読コメントで述べられている改善点を参考にしていただくとよいように思います。AR/VRアプリケーションにおける近距離、遠距離タスクの具体例や他の応用例についての追記、4.4 節の表現の修正やN数増加のための追加実験が推奨されます。また、関連研究 https://dl.acm.org/doi/10.1145/3746059.3747735 と比較し、本研究の位置づけを明記することが必要と思われます。

総合点 (1: 強く不採録~6: 強く採録)

4

確信度 (1: 専門外である~3: 自身の専門分野とマッチしている)

2

採否理由

本論文では、VRコントローラに対してトラックボールを組み合わせ、特に遠距離オブジェクトの回転操作における効率性と直感性を向上させる新しいインタラクション手法を提案しています。プロトタイプハードウェアの実装から比較実験までを一貫して行い、定量評価と主観評価を組み合わせて検証しています。

- 新規性について
VRコントローラにトラックボールを搭載した先行研究は乏しく、新規性があるように思われました。また、VRにおける遠距離オブジェクトの回転操作についても引用されているトラックパッド手法[9, 10]の他に前例が少なく、そうしたタスクに対してトラックボールを活用する本手法、あるいはトラックパッドとトラックボールの比較評価実験について新規性があると判断しました。

- 有用性、正確性について
実験では遠距離タスクでトラックボールが有意に高速という結果が示されており、有用性について一定の説得力があります。ただし、主観評価においてはトラックパッドと大きな差は見られず、また、近距離タスクでは従来のコントローラが優れているという結果が示されており、その有用性は限定的でもあります。

- 論文の記述の質について
全体としてよく構成されており、図や評価結果についてもわかりやすく示されているように思いました。

改善コメント

近距離タスクの結果については、アンケートで多くの参加者から指摘される親指の疲労感なども含め、もう少し詳細に議論されるとよいように思いました。また、トラックボールを活かせる他のタスクや用途についても議論を見てみたいように思いました。たとえば視点や身体の回転操作などにはトラックボールがどの程度効果的なのか、など気になりました。

また、直近の国際会議にて近い研究 https://dl.acm.org/doi/10.1145/3746059.3747735 が発表されており、これとの比較の議論も見てみたく思いました。

査読者2

総合点 (1: 強く不採録~6: 強く採録)

5

確信度 (1: 専門外である~3: 自身の専門分野とマッチしている)

1

採否理由

・新規性
オブジェクトの回転操作をトラックボールに割り当てることで、遠距離のオブジェクトの操作に対して有用性が認められた点は新規性が認められる。

・有用性、正確性
近距離ではトラックボールによる間接的な操作が煩わしく感じられる一方、遠距離では有効性が示唆されたことは興味深く、有用な結果が示されています。
一方で、トラックパッド型のコントローラより重量増となっている点が気になりました。近距離と遠距離のどちらの操作が多いかにあわせて、使い分ければ済むのかもしれません。

・記述の質
全体的に分かりやすく書かれています。

改善コメント

VRやARのコンテンツに明るくない聴衆のために、長時間の使用や近距離操作・遠距離操作の切り替えがどの程度発生しそうと考えられるか、簡単に紹介があるとありがたいです。

査読者3

総合点 (1: 強く不採録~6: 強く採録)

3

確信度 (1: 専門外である~3: 自身の専門分野とマッチしている)

2

採否理由

ユーザスタディは丁寧にされていて、評価できるポイントでした。一方で、関連研究と比較して、結局技術的・質的に何が違うかがわかりませんでした。また、提案自体はトラックボールをVRコントローラに装着しただけで、ハード・ソフトいずれの新規性・貢献が不明確のように思えます。論文自体の記述は問題ないです。

改善コメント

採否理由を参考に、改善していただければ幸いです。

今年のUISTに似たような論文がありましたので、こちらもぜひ参考にしてください。
https://drive.google.com/file/d/1kOP7tqQXU0Ox-fexvrlGcJXSJycblD7M/view

査読者4

総合点 (1: 強く不採録~6: 強く採録)

5

確信度 (1: 専門外である~3: 自身の専門分野とマッチしている)

3

採否理由

本研究は,VR コントローラにトラックボールを組み込むことで,特に遠距離オブジェクトの回転操作において高い操作効率を実現できることを示しており,新規性は非常に高いと評価できる。従来のスワイプや手首操作では直感性や疲労に課題があった点を,物理的な球の回転を 3D オブジェクトに 1 対 1 で対応させるというシンプルかつ強力なインタラクション原理で解決している点は,学術的にも実践的にも意義が大きい。

一方で,有用性に関しては近距離タスクでは従来手法に劣るなど限定的な部分も見られ,現段階では応用範囲がやや限られている。しかし,実験結果からは医療現場やドローン・ロボットアーム操作など,遠隔操作が重要となるタスクに強く適用可能であることが示唆されており,将来的な応用展開のポテンシャルは高い。

また,ユーザ実験は 12 名でラテン方格法を用いた順序カウンターバランスを行っているが,統計的な安定性を高めるためには,今後さらに参加者数を積み上げて検証を行うとより説得力が増す。

総じて,本研究は新規性・将来展望の両面から WISS コミュニティに強いインパクトを与える成果であり,採択が妥当と判断する。

改善コメント

新規性が高いので、引き続き関連研究調べはお願いしたいです。タスクの選定について、4.4の冒頭に述べたほうが良いです。一般的な実験タスクなのでしょうか?Kimらが採用しているものであれば、明記しておいてください。細かい点で好みの問題ですが、4.4の書き方が「~された」を「~した」と著者視点で書いたほうが自然かと思います。

6 実験のまとめと考察、において「... 以上の知見に基づき,我々は今後のVR コントローラへのトラックボールの導入を提案する.」としていますが、実験結果は積極的な導入をサポートする理由としては弱いので、「以上の結果がでたものの...」とすると論理的なつながりは担保されます。

結果についてはN数が最低限のため、追加実験をすると変わる可能性もあります。大変だと思いますが、本手法の利点を確認するためにも検討されても良いかと思います。