査読者1

(Primary)レビューサマリ

本論文の評価は各査読者の総合点が(4, 5, 4, 3)であり,やや採択よりの意見が多かった一方で,システムの中核の機能で査読者の皆様からも新規性があるという意見が多かった段階的学習支援の部分の記述内容が不足しているという意見もありました.加えて,提案システムは段階的学習支援機能があることなどからも初級・中級者向けだと思われるものの,評価に上級者データも含まれているため,システムの支援対象者が不明瞭になっています.システムの新規な点や対象を明確にするためにも,この2点については修正が必要だと思われます.

以上より,査読者の意見を総合して「4: 条件付き採録(シェパーディング)」と判定します.
採録条件として,
(1) 段階的学習の議論を深める.例えば,類似度算出に用いた指標の妥当性,類似度マップの各点のうちどの点をいくつ経由して選んでいくのがよさそうかについての考察を追記する,等.
(2) 上級者データを除いた結果にする.上級者データに関しては必要があれば展望に記載する.
の2点の修正対応をしてください.

下記に各査読者のポジティブなコメントとネガティブなコメントをまとめています.

ポジティブなコメント
- 類似度マップによる段階的学習支援は新規で,発展性がある(RevID: 75)
- スマートフォン 1 台で撮影可能,類似度マップによる段階的学習支援が新規である(RevID: 74)
- 可視化機能の実装水準が高く,自己評価を支援する上で必要な機能が適切にそろっている(RevID: 75)
- 減点箇所を採点規則に基づいて言語フィードバックする仕組みは直感的で有用である(RevID: 74)
- ユーザスタディの結果からシステムの有用性が確認できる(RevID: 74)
- FIG 採点規則に基づく減点リスクの可視化や LLM によるフィードバックを組み合わせる独自性がある(RevID: 139)
- RTMPose を用いた姿勢推定や関節角度の定量化,減点リスク評価など技術的に妥当(RevID: 139)
- 図表などの記述も整理されており,全体的にわかりやすい(RevID: 139)
- 体操学習に LLM を取り入れる点は新規性があり,複雑な身体運動学習の支援として有効である(RevID: 140)

ネガティブなコメント
- 類似度マップに関して,類似度算出方法や UI,使用時の目標点選択についての議論が浅い(RevID: 75)
- 段階的支援や類似度マップの工夫の詳細が明示されていない(RevID: 140)
- コーチングにおける重要事項(練習課題の設定や改善ポイントの決定)をシステムがどう処理しているのかが不明確(RevID: 140)
- 評価がアンケートにとどまり,客観的な上達度を示せていない(RevID: 75, 139, 140)
- 使用シーン(解析に要する時間やリアルタイム性)が不明確(RevID: 74, 139)
- ユーザスタディが 5 名と小規模であり,より多様な参加者や大規模な検証が必要(RevID: 139)
- システムは初中級者向けと考えられるが,上級者データを含めた議論は不整合で,解釈を困難にしている(RevID: 140)
- LLM フィードバックの具体的効果(有用・不適切なフィードバックの例)が不明であり,詳細分析が不足している(RevID: 140)

(Primary)採録時コメント

本論文は,器械体操の床種目における後方伸身宙返りを対象に,段階的学習支援と言語フィードバックを統合した練習支援システムを提案しており,類似度マップによる段階的学習支援機能に関する新規性,システムの実装の質も高いという点が評価された.一方で,システムの中核の機能で新規性があるという意見が多かった段階的学習支援の部分の記述不足と,提案システムの支援対象者が不明瞭である点が指摘された.以上の理由から,条件付き採録と判断された.

(Primary)論文誌として必要な改善点

各査読者のコメントを参考に,評価実験を追加し,表現の修正をご検討ください.

総合点 (1: 強く不採録~6: 強く採録)

4

確信度 (1: 専門外である~3: 自身の専門分野とマッチしている)

3

採否理由

本論文は,器械体操の床種目における後方伸身宙返りを対象に,段階的学習支援と言語フィードバックを統合した練習支援システムを提案している.本研究では,学習者のレベルに応じた中間目標を可視化し,学習経路の提示を支援する枠組みを器械体操に適用して提案・実装した点が新規である.
システムとしての基本機能(可視化機能)の実装水準は高い.角度グラフ,連続写真,減点リスクアニメーションはいずれも新規性が高いとは言い難いが,自己評価を支援する上で必要な機能が適切にそろっており妥当性の高い実装と思われる.これに加えて,段階的学習支援と LLM による言語フィードバック機能を備えている点は新しい.
類似度マップを用いた学習は非常に興味深いが,類似度をどのように算出すべきか,類似度マップの部分はどのような UI が望ましいか,さらにマップ使用時にどの点を目標とすべきかについては議論の余地があり,今後の発展性を感じさせる.
以上の理由から,類似度マップの部分に関する議論が深いとさらに良かったと思われるが,新規性があると考えられるため「4: どちらかと言えば採録」と判断した.

改善コメント

評価はアンケートにとどまっているが,今後評価実験を行う際には,参加者がどの点を目標として選ぶのか,また実際に上達する程度が客観的にどのように示されるかを評価できると,より説得力が増すと考える.
「プレリミナリースタディ」と記載されているが,システムとしての有効性や機能を検証しているのであれば,たとえ人数が少なくても「予備実験」ではなく「評価実験」と表現する方が適切に思われる.また,カタカナ表記にこだわらず「予備実験」と記載する方が一般的である.さらに,「ミンマックス正規化」も「最大最小正規化」と記載する方が一般的であると思われる.
図2のUIの文字が読めないが,このシステムにおいてLLMを使った文字の出力も重要な点であるため,文字が読めるように図を修正したほうが良い(例えば図の大きさは変えずベクター化するなど).

査読者2

総合点 (1: 強く不採録~6: 強く採録)

4

確信度 (1: 専門外である~3: 自身の専門分野とマッチしている)

2

採否理由

新規性(先行研究との差分)
・器械体操の後方伸身宙返りにおいて段階的学習支援と言語フィードバックを統合した練習支援システムを提案
・従来の映像分析ツールやAIによる自動採点支援に対して,学習者のスキルレベルに応じた中間目標を可視化し,段階的な学習経路を提示する「類似度マップ」機能,大規模言語モデル(LLM)による個別・比較フィードバックを組み合わせている点
演技間の技術的ギャップを段階的に埋めるための支援や,FIG採点規則に基づく減点リスクのアニメーション可視化など,既存研究にはない独自のアプローチがある

2. 有用性・正確性
スマートフォンやタブレットなど汎用的な機材で撮影した動画から姿勢推定を行い,演技の客観的評価・改善点の明確化・学習意欲の向上を支援している
プレリミナリースタディでは,特に初級者・中級者において現場での実用性が高いことが示されている
・姿勢推定にはRTMPoseを用い,誤推定箇所の自動修正や関節角度の定量化,FIG採点規則に基づく減点リスク評価など,技術的にも妥当な処理がなされていると判断します.

3. 論文自体の記述の質
図表なども含め特に問題はありません

改善コメント

多くは展望の中に入れて議論するとよいと思われる点です.

ユーザスタディの拡大と客観的検証
現状は5名のプレリミナリースタディのみであり,より多様な年齢・スキルレベルの参加者による大規模なユーザスタディや定量的なパフォーマンス向上などを将来の展望に入れるとよい

上級者や他種目への適用可能性
本研究は段階的な学習という点でどちらかというと初中級者向けにう適しているのではと思います.上級者に対しては他の機能を含めた展望があるといいかと思います.
また他の技や他の姿勢やフォームが重視される種目への展望などがあるとよいかと思います.

リアルタイム性・現場導入の検証
実際の練習現場でのリアルタイム利用や,指導者との協調利用,フィードバックの即時性などについて展望があるとよいかと思いました.

姿勢推定の精度向上
カメラ1台による撮影データから利用できる点はメリットでもありますが,複数台のカメラを用いることで,姿勢推定の精度向上ができるようであれば論じてもよいのではと思いました.

査読者3

総合点 (1: 強く不採録~6: 強く採録)

3

確信度 (1: 専門外である~3: 自身の専門分野とマッチしている)

1

採否理由

後方伸身宙返りの段階的学習に着目した、動作解析・アニメーションフィードバックおよびLLM言語フィードバックを組み合わせた学習支援システム。体操学習にLLMを取り入れた取り組みは新規性があると、複雑身体運動の効率的な学習を支援する点で非常に有効な手法であると感じました。一方で、LLMを活用した研究やビデオによる動作解析・フィードバックを行った研究は広く行われており、著者らは段階的支援に焦点を当てていると理解しました。本研究の新規性が段階的支援にある場合、提案システムが施した工夫がどこにあたるのか不明瞭であると感じました。例えば、類似度マップを用いた中間目標の設定は自身で決定することが適切なのでしょうか?本来の技能習得では、コーチによる練習支援が一般的で、次の改善点の設定とそれに向けた練習対策をシステムに落とし込む必要があると感じました。その他に、単体評価では、次に意識すべき最重要ポイントをどのように決定しているのでしょうか?この決定プロセスも、コーチングにおける重要事項でありながら、どのような処理が含まれているのか不明瞭だと感じました。
評価全体として中・上級者の結果が含まれていることに疑問を感じます。システムの利用対象者が初級者であると序論で述べられており、結果の考察でも上級者の結果はネガティブであると述べられていますが、それは予想された結果であると感じます。これらの不整合が集約結果の解釈を困難にさせていると感じます。まず、序論でシステム対象者を明確にし、その対象者群のみの結果を示すことを推奨します。
提案手法の貢献がどこにあるのか、また、それに対してどのようにシステムに創意工夫が組み込まれているのか不明瞭であること、対象者とは異なる参加者の実験結果を含む議論では、本論文の正当な評価が困難であると判断し、不再録といたしました。

改善コメント

LLMの支援に関する詳細な評価が示されることで研究の成果が明確化されるでしょう。例えば、どのようなフィードバックをユーザは好意的に参考にしたのでしょうか?また、その逆にフィードバックが的を外れていたことは無かったのか、詳細な分析を示してください。
システムフィードバック後に、参加者は再度宙返りの測定を行わなかったのでしょうか?実際の試技に影響を与えたのか定量的に調査することを期待します。

査読者4

総合点 (1: 強く不採録~6: 強く採録)

5

確信度 (1: 専門外である~3: 自身の専門分野とマッチしている)

3

採否理由

器械体操の床種目の中でも「後方伸身宙返り」に着目をした練習支援システムの提案である。
このシステムを使うことで実際の採点規則に基づく減点箇所を言語でフィードバックでき、直観的に理解できるようになっている。

市販のスマートフォン1つで手軽に撮影が可能であり、類似度マップを用いて段階的な学習支援もあり、新規性は十分である。

ユーザスタディの結果、システムの有用性も評価できる。

上記のように新規性・有用性ともに評価でき、論文の質も十分であり採択に値すると判断した。

改善コメント

演技動画を入力してからシステムが解析するまでの時間はどのくらいでしょうか?
リアルタイムに見るものなのか、演技がすべて終わってからその日中に見れば良いものか、など使用シーンも若干不明です。
記載があるとよりわかりやすい論文になるかと思います。